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怪物と十字軍と心臓の無い騎士  作者: カラサワ
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第75話「ジン」⑫

 轟く雷鳴、走る稲妻。ご主人様の言葉に激昂したルイが怒りに任せ、デタラメに走らせた幾筋もの雷が周囲を見境なく破壊します。その内の何本かはご主人様のすぐ近くの家屋に当たり、吹き飛ばされた瓦礫が土煙を上げ、その量はご主人様がすっかり見えなくなってしまう程でした。


「何が悪魔だ……」


 フゥフゥと息を切らすルイ。自らの底の浅さを指摘されるのは誰しも答えるものです。


「そうだ……悪魔でも構わない!何もしない神よりも、行動する悪魔の方がマシじゃないか」


 ガラガラと崩れ落ち続ける家屋とその瓦礫で舞い続ける土煙を睨みつけるルイの身体に、電撃が集まるのがはっきりと感じられます。


「貴様ら神を騙る十字軍を潰すためなら、僕は例え悪魔とでも手を結ぶ!」


 まるで開き直ったかのように、自分に言い聞かせるかのように、自らを正当化する言葉を吐き続けるルイ。集まる雷がこれまでの紫から徐々に黒くなっていくのが見えます。その色の変化は、まるでルイの精神に呼応しているかのようです。


「我が眷属たる厳つ霊よ!契約に従いてその力を示せぇええ!」


 ルイの身体から離れた黒い雷が空に駆け上がったかと思ったら、巨大なドラゴンのような形に姿を変え、天から急降下するように黒い稲妻が落ちました。その凄まじい威力に周囲の家屋は全て吹き飛び、木々は真っ二つに裂けてしまったほどです。


「レードぉおお!」


 雷が落ちた場所へ駆け出すシャルロット様。今まで動けないどころか喋る事すら自由に出来なかったようでしたが、さすがに目の前に広がる光景に精神支配が弱まったようです。


 あぁ……それにしてもあれほどの雷撃を受けて、幾ら不死身のご主人様と言えども無事には済まないのではないでしょうか。


「コーディス」


 精神支配が解け、自分ではなくご主人様に思わず駆け寄ったシャルロット様にイラつくルイなんて、今なら倒せそうなものを……


「おい、コーディス」


「なんですか!今大変な所で……ってご主人様!無事だったのですか!」


 声のする方に振り返ると、なんとそこにはご主人様が立っているではありませんか!それも大きな外傷も無く、ピンピンしています!


「まあな。土煙に紛れて場所を移動したんだが、ルイが雷を"自在に"操れるお陰で助かった。なんせ、奴が指定した箇所だけに雷が落ちたんだからな」


 さすがはご主人様。後はあのルイを奇襲攻撃でやっつけるだけですね!

 中国や日本ではドラゴン(龍)は、神の使いもしくは神そのものであり、神聖な存在とされていますが、西洋におけるドラゴン(竜)は強さの象徴であり悪の象徴でした。

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