第71話「ジン」⑧
シャルロット様をルイと名乗る襲撃犯から取り戻すと決意したご主人様。早速総長が滞在している部屋に直談判に行くのですが、決意してからの行動の早さは流石ご主人様です。
「修道士レード、入ります」
「うむ、レードか。この間の護衛任務での働き、見事であったぞ」
「それについてなのですが総長、襲撃犯に攫われた聖ヨハネ騎士団の修道騎士の行方が未だ分かっていないそうです。ここは我らテンプル騎士団も総力を挙げて捜索するべきです」
「何故だ?聖ヨハネ騎士団と我らテンプル騎士団は言うなればライバル同士。何故相手を利する事を人員に時間そして手間を割いてまでしなくてはならない」
聖ヨハネ騎士団とテンプル騎士団は、共に聖地防衛のために結成された騎士修道会。縄張り争いと言いますか、共に協力し合う関係とは言えない間柄な以上、総長の反応は至極真っ当と言えます。
「襲撃犯は奇跡かそれに類似する力の使い手ですが、未だ杳として行方が分からない状況です。行方不明者を探す事は、きっとこの凶悪な襲撃犯の居場所を見つけ出す事に繋がるからです」
「ふむ……行方不明者はともかく、あの襲撃犯をこのままにしておく訳にもいかんか……」
考え込むように顎髭に手を当てる総長。しばしの沈黙の後、ようやく総長から次の言葉が出ました。
「よかろう。護衛任務だけでなく、元凶を叩いてこそ聖地の防衛になると言うもの。襲撃犯の捜索を修道士に指示しよう」
やりました!十字軍国家、いや世界でも1、2を争う組織力と情報網を持つテンプル騎士団が探せば、あんな目立つ能力を持ち、行動をする者を見つけるのに時間はかからないでしょう。
「だが、捜索対象はあくまでも襲撃犯であり、行方不明者には重点は置かない。そこを弁えて動くように。以上だ」
「もちろんです。ご理解ありがとうございます総長」
行方不明者、つまりシャルロット様は捜索対象ではないと言っても、あの時の様子から、恐らくシャルロット様は襲撃犯、ルイと一緒にいると思われますので、結果には影響を与えないはずです。こうも説得が上手くいったのも、不死身、不老不死であるご主人様と総長の長年の付き合いの賜物でしょう。
早速次の日から始まった、ルイの捜索。修道士総出で街道の捜索や聞き込み調査に当たっているのです、隠れ家の発見も時間の問題でしょう。もちろん一番熱心に捜索をしているのはご主人様だったのは、言うまでもありません。
当時のテンプル騎士団は聖地だけでなくフランスやイギリス、イベリア半島など多くの地域に管区、支部を持ち、それらの間で絶えず物資や人材をやり取りする国際的な組織でした。




