第7話「ソロモンの神殿」②
そしてやってきました、週一度の本部内大部屋での参事会開催日。ご主人様も皆さんと同様に修道騎士の証たる白いマントを着用し参加しています。先日のピエール様の予告通りなら、この参事会で告発からの厳しい糾問に晒されるのですが、相変わらずご主人様は顔色一つ変えていません。むしろ、話を伝え聞いたギルバート様の方が、よっぽど心配そうな顔をしています。
参事会は慣例通り、まず全員での主の祈りで始まり、テンプル騎士団総長ロベール様の開会宣言と激励の説教へと続きます。そして、過ちを犯した修道士による自主的な告解もしくは第三者からの告発へと繋がるのですが……
「よき修道士よ、私がとある修道について語ることをお許しください」
来ました。ピエール様が前に進み出て膝まづきます。
「修道士ピエールよ。何なりと語られよ」
総長からの許しが出たところで、ピエール様は起立し語気も強く語り始めました。
「先の報告書にもある通り、修道士レードは異教徒の犠牲となった巡礼者の遺体を罰当たりにも業火によって灰燼に帰し、復活の日に必要なその身体を永遠に失わしめたのです!」
グールの襲撃を防ぐたの火葬だったのですが、それには一言も触れらません。
「このような行いは、会則序文に掲げられる、我々テンプル騎士団の理念に大きく反する背教の罪に他なりません!この罪深い修道士に、どうか厳罰をお与えください!」
「修道士ピエールの申したことは本当なのか、修道士レードよ」
此の期に及んでも、顔色一つ変えないご主人様。人の心配をよそに、総長の問いかけに起立して答えます。
「巡礼者の遺体を火葬するよう指示したのは事実です。もししていなければ今頃生き残った巡礼者も、匂いを嗅ぎつけたグールの餌食となっていたでしょう」
「そこまでグールを恐れるのも、信仰心が足りない証拠ではないか!そもそも"奇跡"も使えない貴様の信仰心の無さはこの騎士団に相応しく無い!」
ピエール様はもう、ご主人様を何とかして厳罰にしようと頭に血が上ってしまっているようです。
「この件について、当日修道士レードと同行していた修道士ギルバートから何か申し立てる事はあるか」
総長の問いかけに、起立するギルバート様。弁がたつとは言い難いご主人様のフォローを、ギルバート様がしてくださるのは幸いです。
「その日のグールの多さは尋常ではなく、神掛けてレードの言う通りでした。また巡礼者の一団も、娘を野盗から救い出したことに大変感謝していたことも申し加えておきます」
ギルバート様も普段はご主人様を変人呼ばわりしていますが、このような場でのフォローは何よりも有難いです。
「ふむぅ……双方の言い分は分かった。これより審議するので、皆退室せよ」
総長の指示で退室する修道士一同。果たしてご主人様はどのような罰に処されるのでしょうか。