第68話「ジン」⑤
シャルロット様が放った大火球は見事、襲撃犯に直撃。凄まじい爆発と共に土煙が上がり、衝撃波がここまで来るほどです。
「やったわ!」
そう言い、シャルロット様が一瞬気を抜いた、まさにその瞬間でした。爆発の向こうから紫の雷が飛来したのは。
バチチィ!
「戦いの最中に気を抜くなシャルロット!」
「わっ、分かってるわよ!」
咄嗟に飛び出したご主人様が盾で雷を受けた為、事無きを得ましたが、白く塗られた盾は真っ黒に焦げ、その威力の高さを物語っています。
「火を出せるのか。この世界でチート持ちは僕だけだと思ってたけど」
爆発で舞い上がった土煙が収まり、再び姿を現した襲撃犯ですが、なんと傷一つ無くそこに立っていました。
「そんな……確かに当たったのに」
「手から雷出すような奴だ、奇跡かはたまた別の何かの使い手のようだな」
ゆっくり剣を抜き、襲撃犯と相対するご主人様。シャルロット様も剣に炎を纏わせます。遠距離戦がダメなら接近戦と言う考えのようです。
「1人でここまでやるとは大した度胸だな。俺はテンプル騎士団修道騎士のレードだ。貴様は何者で、目的はなんだ」
ご主人様の問い掛けに、薄っすらと笑う襲撃犯。
「僕はルイ。奴隷商という"悪"を裁き、そして十字軍なんていう神の名の下に侵略と略奪を行い、この地を植民地とする連中を一掃するために来た」
「見慣れない風貌だがその物言い、サラセン人か?」
「サラセン人?僕はどこの勢力にも属してないさ。言うなれば迫害される現地民、弱者の味方さ!」
あまりにも突拍子な発言に、理解出来ないという顔をするシャルロット様。そして、難しい顔をするご主人様。
「一体あいつは何を言ってるの?」
「さあな。だが考えのズレている奴と俺達とは相容れないのは確かなようだ」
そう言い、剣を構えるご主人様。その握る手にも力が入ります。
「シャルロットさん、かな。あなたみたいな可愛い人が、神だの救いだのと騙されているのを見ていられない。僕と一緒に来ないか。この世界の真実を見せてあげるよ」
「はぁ!?冗談は……よし……て……」
気が強く、生きる火そのままのシャルロット様に本当に何を冗談を……と思いきや、ルイと名乗る襲撃犯の瞳が紫に妖しく光ったら、その瞳に吸い寄せれるようにシャルロット様はフラフラと力無く歩いて行ってしまったのです。
「おい、シャルロット……シャルロット!気は確か!戻って来い!」
ご主人様の叫びも虚しく、ルイの手に抱かれたシャルロット様は、周囲に乱れ飛んだ雷と舞い上がった砂埃に紛れ、共に姿を消してしまったのです。
中世と現代では価値観や物事の見方が大きく違うため、現代の常識が中世では非常識であったり、そのまた逆も当然あると考えられます。




