第57話「グーラー」⑥
その後、死体の検分結果をシャルロット様にも話したご主人様は、連れ立ってエルサレムの王宮"ダビデの塔"へと向かったのでした。
「ちょっと待ってよレード。何で急に王宮に行くのよ」
「都市のど真ん中で見つかったグールに食われたような死体、消えた美女。この"人食い事件"の犯人は恐らくグーラーだ。それも騎士が大好物という、相当な偏食のな」
「グーラー?あのグールの雌の?でも姿はグールと大して変わらないはずじゃ」
「正体はな。だが力と知恵を付けた一部のグーラーはその姿を自由に変える事ができる。それが美女であってもな」
「なるほどね……そうすれば男の方から寄って来るから、外で死体を探すよりも手間が掛からないってわけね。うつつを抜かした男なんて、仕留めるのもきっとわけ無いだろうし」
そんなシャルロット様を見て、ため息をつくご主人様。
「あぁ、本当に女ってのは恐ろしいな」
「それはどういう意味かしら?」
「いや別に。それよりも王宮に急ぐぞ」
誤魔化すように足早に王宮へ向かうご主人様。シャルロット様はと言うと、明らかにムスッとした顔で付いてきてます。
「それでっ!一体なんで王宮に行くのか、まだ聞いて無いんだけど!」
「グーラーが犯人だとしたら、第3、第4の事件が起こるはずだ。なんせ奴らは足ることを知らないんだからな。そして直接奴を探しても見つからない以上、王宮の騎士に最近美女に熱を上げている騎士がいないか聞き込んで、そいつにはりつくしかあるまい」
「なるほど、現場を抑えようって訳ね。確かに姿を変えられたら探しようが無いものね」
「そう言う事だ。だが気をつけろよ。シャルロットが王宮の騎士に惚れられたら意味が無いからな」
「あら、私の心配してくれるの?でも心配要らないわ。手を出して来るのがいたら火傷させてあげるんだから。物理的にね」
「……ほどほどにな」
そして王宮へと到着した2人は、周辺を手分けして聞き込みを行い、ついに最近出会ったと言う現地キリスト教徒の美女に大層入れ込んでいると仲間内でも評判の若い騎士、ジャン卿に目星を付けたのです。
街を行くジャン卿の後ろをこっそり尾行するご主人様とシャルロット様。お二人ともテンプル騎士団に聖ヨハネ騎士団のサーコートにマントと言う、大変目立つ格好をしていますが、幸いなことに人混み多くなんとかバレずに済みました。
果たしてこのジャン卿のお相手と言うのは件のグーラーなのでしょうか。そしてもしそうであった場合、倒す事は出来るのでしょうか。
エルサレム王国の王宮は当初はソロモンの神殿、すなわちアル・アクサー寺院を使用していましたが、その後ダビデの塔へと移り、アル・アクサー寺院はテンプル騎士団に与えられ、本館として使用されることとなりました。




