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怪物と十字軍と心臓の無い騎士  作者: カラサワ
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第55話「グーラー」④

 迎えに来た従士に案内され、第2の犯行現場である館へと来たご主人様とシャルロット様。館の周りには野次馬と、それを制するエルサレム王国の衛兵でちょっとした騒ぎとなっていました。門前の衛兵には、2人の服装を見ただけでテンプル騎士団に聖ヨハネ騎士団だと分かったのか止められませんでしたが……


「テンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団が揃って行動とは珍しいですな」


「もちろんよ。なんせコンビなんだから」


「ではなく、たまたま情報を得たのが同時だっただけだ」


 テンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団は聖地防衛という同じ理念を掲げた同規模の組織なのですが、お互いライバル関係にあるため、その2人が行動を共にしているのは、やはり周囲からは珍しく見えるようです。館の奥の事件現場に向かう道中、ご主人様がシャルロット様にこっそり話しかけます。


「シャルロット、人前ではあまり仲良い素振りはするな。特にテンプル騎士団は女性との交際が禁止されててな……」


「あーはいはい。それよりほらっ、早く行くわよ!」


 全く聞いていないシャルロット様に、溜息をつくご主人様。仕方ないので寝室まで2人して来ましたが、部屋の扉を開けたところで目に入ってきた光景の凄惨さに、声を失うのでした。


 またしても荒らされた形跡の無い部屋には数人の衛兵と、犠牲者の関係者と思しき抱き合うように泣いている 2人の幼い男女、そしてベッドの上には、辛うじて人であった事は分かりますが、手足はバラバラ、所々骨が見え、血塗れと言うか、もはや肉塊のようになっている遺体があるのでした。


「室内でこんな死体を見る事になるとはな」


「えぇ……」


 顔をしかめるご主人様に、思わず口元を抑えるシャルロット様。戦場や怪物の襲撃後に病院と、死体など見慣れたはずのお2人ですが、それでも今回のような惨たらしい死体を見るのは久しぶりです。


「レードは死体を見てくれる?私はそこの泣いてる2人から話を聞くから」


「別にいいが、病院勤めが見た方が詳しく分かるんじゃないか?」


「あなたみたいなぶっきらぼうが怯えてる子供に話し掛けても、ますます怖がらせるだけよ」


「さいですか。それではよろしく頼む」


 2人の子供の前に座り込み、優しく声をかけるシャルロット様を尻目に、死体の前まで来たご主人様。


「さてと、それでは誰がお前をこんな風にしたのか、教えてもらうとするか」


 死人に口無しと世間では言いますが、見る目がある人には死体は雄弁に物語りもします。果たして今回の方は、そのどちらなのでしょうか。


 テンプル騎士団会則の最後の条文は、顔を見たり接吻をしたりするなど女性との接触を禁じるものでした。

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