第53話「グーラー」②
人食い事件とも言える今回の事件。まずは市街地に出て被害者の身元や犯人について聞き込み調査するご主人様ですが、中々犯人の手掛かりは見つかりません。
「調査によると、被害者は結婚直後の男性。そんな幸せの絶頂、不幸の入り口とも言える男が、ある日食い殺されたかのような、見るも無残な姿で見つかる」
「そして、新婦は行方不明……ですね、ご主人様」
「そうだ。犯人は怪物なのか人食いに目覚めた変態なのか、なんにしてもその行方不明となった新婦……今となっては未亡人……を探すのが先決だが、全く見つからない。全く女ってのは一筋縄ではいかんな」
街中の噴水広場で腰掛け、ボヤくご主人様。するとそこに、人影が近寄って来ました。
「女が何ですって?」
「いやぁ、美人で聡明なシャルロットのような女はなかなかいないと、そんな話をしてたところだ」
「ふんっ、随分都合の良い事ね」
人影の正体、それは聖ヨハネ騎士団に入会したシャルロット様でしたが、黒地に白の十字が付いたサーコートを着るシャルロット様はいつ見ても美しくもカッコいいものです。
「それはそうとシャルロット、こんな所で何をしてるんだ。サボりも見つかると処罰の対象だろう」
「あなたと一緒にしないで欲しいわね。市街地の巡回警備をしているところよ。あなたこそ何をしてるのよ」
「俺は"人食い事件"の調査と解決を言い付けられちまってな、その調査をしているところだよ」
「それって例の新郎が食い殺されたって事件!?テンプル騎士団ではあなたが担当してるの!?」
「あっあぁ、そうだが……」
急に目を輝かせるシャルロット様に、タジタジのご主人様。それにしても相変わらず勢いが凄いですシャルロット様。
「その事件、聖ヨハネ騎士団の中でも話題になっててね。調査の担当者に私も立候補したんだけど認められなくて……良い機会だから、私がその調査手伝ってあげるわ!」
「いやっ、しかしテンプル騎士団がよりによって聖ヨハネ騎士団に、それも女修道騎士に手を借りたのがバレたら……」
「はぁ!?何よそれ!あなたまで私を女だと思って甘く見るわけ!?誰のお陰でキマイラも退治出来たと思ってるの!?」
そう言うシャルロット様の背後にメラメラと火が湧き上がるのが見えるようです。と言うか本当に火が昇っています!
「いや、そうじゃなくてな!……分かった分かった手を借りる事にするよ……」
「そうこなくっちゃ!そうとなれば早速事件現場へ行きましょう!」
元気よく飛び出すシャルロット様の後ろでガックシとうなだれるご主人様。
「やれやれ……"火の奇跡"の使い手と言うが、あいつは火そのものだな……」
「レード!急ぐ!!」
「へ〜い……」
力無く答えるご主人様。何というか、凸凹コンビの完成のようです。
エデッサ伯国は最初に建国された十字軍国家であり、その陥落は大きな衝撃となって西洋にも伝わり、第2回十字軍の引き金となりました。




