第16話「テコアの戦い」④
総長、軍司令長官、現地指揮官に続いてようやくご主人様を含めその他の修道士達も野営地に入る事が許されました。とは言っても野営地に入ってからもする事はまだまだあるのですが。
「修道士達よ!馬糧と薪炭の徴発隊を出せ!」
次なる命令が軍司令長官から出されました。正直もうクタクタですが、食う物食わせる物が無ければ、戦いにならないのでここはもうひと頑張りするしかありません。
「コーディス頼むぞ。すぐに暗くなるからあまり遠くまで行くなよ」
愛馬である白馬から外した鞍を布に包みながらご主人様が言いました。まったくご主人様は私をいつまでも子供扱いします。
夢中になって薪を拾いつつ街の周りを歩いていると、気がついたら野営地から随分遠くまで来てしまいました。
「これはいけない、ご主人様に怒られてしまいます」
そう思い引き返そうとすると、何かが燻っているような焦げ臭い匂いを感じました。
「まだ消えてない火があるのかな」
戦は終わったのですから、早めに消さないと大火事にもなりかねません。そう思い、焦げ臭い匂いを辿って歩いていると、匂いは段々と強くなり、まるで生き物が焼けるような匂いに変わっていきました。鼻をつまみつつ、建物の影から顔を出すと、"ソレ"がいたのです。まさしく"赤い騎士"としか形容できないソレが。
「噂は本当だったなんて……」
炎に包まれた死体の山を眺めていたソレが私に気がつき振り向いたその時、目が合ってしまいました。恐ろしくなり駆け出した私は慌てて野営地のご主人様の下に戻りましたが、体はもう火に当てられたように汗グッショリです。
「ご主人様!大変です!」
「コーディス、薪も集めずどこへ行ってた。お陰で俺が集める事になっちまった。ピエールには"盾持ちのいない騎士"などと言われてしまったぞ」
そう言えば慌てて戻って来たため、集めた薪は全て落としてしまいました。
「申し訳ございませんご主人様……ですが!大変な物を見てしまったのです!」
早くにあの事を、"赤い騎士"の事を知らせないといけません!
「修道士よ!食料配給へと集まれ!」
なんてタイミングの悪い事でしょう。食料配給の際は、粛々と並ばないといけません。早速鍋を持って配給の列に並んでいるご主人様を見て、私はやきもきするしかありませんでした。
私物の所有を禁じられているテンプル騎士団の修道士達は、野営中の食料も全て配給品に頼っていたそうです。




