第A話 いざ力の国へ
先輩と一緒に僕は扉の前に立っていた、ここは会長室、僕たちの会長がいる部屋だ。
『会長、ヘラクレスです、入室してもよろしいでしょうか?』
先輩が扉をノックしてから扉の先にいるであろう人に声をかけとすぐにも返答が返ってきた。
『うむ、入りたまえ』
その言葉を聞いた後に、僕と先輩は一度顔を見合わせて扉を開け部屋へ入った。
「『失礼します!!』」
僕と先輩は部屋に入るなり勢いよくあいさつした。
『ふっ、元気がいいようで何よりだよ』
彼が僕と先輩の上司にあたるジャックス会長だ、すでに5年前から傭兵派遣会社を立ち上げ、運営しているらしい、僕はつい最近入ったばかりだが、僕の隣にいるヘラクレス先輩は結社当時から会長を支え続けているらしい。
『それで、何か御用でしょうか? 会長』
『まあまあ、確かに用があって読んだわけだが……』
急かす先輩を抑え、会長は僕のほうを向き呼びかけた。
『私が君をこの会社に入ってからすでに二週間たったが、調子のほうはどうだい?』
僕は二週間前にこのあたりの森の奥で倒れていたのをヘラクレス先輩に発見され、保護された。
しかし、僕には記憶がなく、どうして森に倒れていたのか、自分が何者なのかさえわからなかった。
そんな僕に道を示してくれたのが、ほかでもないジャックスさんだった。
「はい! まったく問題ありません、もうだいぶ慣れた来たところです」
僕は元気よく返事をした。
『そうか、それはよかった』
ジャックスさんはそう言うと少し間を置き。
『それでは本題に移ろう、私の、目的についてだ』
ジャックスさんは記憶がない僕に自分のある目的に協力をして欲しいと提案をしてきてくれたのだ。
それはこの世界に存在する謎の力”ブレイン”の回収だった。
”ブレイン”とはこの世界の住人がまれに発言する異能力の名称で能力の内容は火を出したり、物を浮かせたりと様々らしい。
そして、その能力を持っているものを倒すことでその能力を吸収、つまり奪うことができる。
僕はその提案を引き受けることにした、それはもともと何をするべきか迷っていたのと、もしかしたら”ブレイン”と関わっていく内に自分の記憶についても何か思い出せるかもしれないという考えからだった。
『目的というと、ブレインの回収ですね』
『ああ、その通りだ』
先輩とジャックスさんが先導して話を進める。
『それで、今回回収予定のブレインの情報は?』
先輩は今までも多くのブレインを回収してきたベテランだった。
きっとこのやり取りも既に慣れたものなのだろう。
『うむ、今回回収してもらうブレインは普通のブレインとは違う』
『普通のブレインと違うとは、どういうことでしょうか?』
『今回回収してもらうのは……”ブランドブレイン”だ』
『!? ”グランドブレイン”』
先輩は明らかに動揺していた、そんな先輩を横目に僕は質問する。
「あの、”グランドブレイン”って何ですか?」
『”グランドブレイン”というのは、私が真に求めている産物だよ』
『この世界に僅か26しか存在しないブレインの上位能力、そのどれもがたった一つで国一つを壊滅させるほどの力を持っている』
「それの回収を、今回僕たちに任せる、ということですね」
『ああ、そういうことだ』
『待ってください!!』
先輩が声を張り上げた。
『会長、今回あなたが我々に回収させようとしているグランドブレインはとても危険な代物です』
『私一人ならまだしも、今回が初任務となるJOKERを同行させるというのは、いささか危険だと思われますが』
先輩は今回の任務に僕を同行させることを良しとしていないようだ、きっと僕のことを思ってくれているのだろう。
『うむ、確かにJOKER君を初任務でグランドブレイン回収という重大かつ危険な任務に送り出すのは、
君としても納得がいかない、と言うのはわかっている』
『ならば!』
『だが』
ジャックスさんは先輩を制止し話を続ける。
『現状、私の会社にブレインを扱えるのは、君とJOKER君だけなのだ』
『使えるものは何でも使う、それが私のポリシーだというのは知っているよね?』
『そ、それはそうなのですが』
『それに、ヘラクレス、君はもう5年も私についてきてくれている、私は君の実力を大いに信頼している』
『!! そう、ですね、はい! 私にお任せください、必ずJOKERを支えながら、グランドブレインを回収して御覧に入れましょう』
「……」
先輩はちょろかった。
……僕と先輩はグランドブレインがあるという力の国を目指していた。
「先輩、今回僕たちが回収するグランドブレインって何ですか?」
『あぁ、会長に渡されたこの資料によると......”RuinHazard”と呼ばれるものらしい』
「ルイン、ハザード?」
『ああ、触れるものすべてを滅ぼす、そんな危険な代物らしい』
「ほえー」
”触れるものすべてを滅ぼす”その言葉だけでかなりの威圧感を放っていた。
『まあ、そんな身構えなくてもいいさ』
「どうしてですか?」
『実は今から行く力の国は、俺の故郷なんだ』
「へぇー、そうだったんですか」
先輩の故郷、それがどんな場所か想像するだけで、僕はだんだん楽しくなってきた。
「どんな場所なんですか?」
僕はついに気になり、先輩に質問した。
『うむ、良い場所だぜ』
先輩は自慢げに語りだす。
『一人一人が、己の誇りをもって行動し、必要があれば助け合う、そんな素晴らしい国だ』
『街の建物の一つ一つがきらびやかに輝いている』
『力の国とは呼ばれてはいるが、それも伝統ある歴史が故だ』
『確かにその昔こそは、三国が乱立する戦いの絶えない国だったが、あるお方がそれらをすべて統治し、長きに渡る戦いに終止符が打たれ、平和が訪れた』
「へぇ、その王様って、誰なんですか?」
『ゼウス王、俺の父さんだ』
「……えっ!?」
僕はとても驚き、思わず声を上げてしまった、まさか自分と共に行動を共にしている人が一国の王子だとは想像もつかなかったからだ。
「つ、つまりその国さえ到着できれば」
『ああ、父さんに掛け合って、グランドブレインについて何か聞き出せるかもしれない』
「よぉーし、そうと決まれば」
僕は先輩の前に走って進み。
「早く向かいましょう、力の国へ!!」
僕は意気揚々と言い放った。
……長い旅を経て僕たちは力の国へ到着した、、、けれど
「なんですか……これ」
『……』
先輩は黙ったままだった、それもそのはず。
僕たちが見たのは、きらびやかな街でも、伝統ある歴史でもなく。
ーー燃え盛る炎に包まれた、地獄だったーー