017「変わらぬ想い」レオンside
目の前の愛しい彼女は不安そうな瞳でこちらをじっと見ている。動揺を隠すかのように自身のワンピースをぎゅっと握りしめた小さな手。彼女の不安や動揺を与えてしまったのは僕自身なのだが、それさえもいとおしく感じる。
僕が優しく彼女に声をかける。
小さな手にそっと触れる。
それだけで彼女は次々と顔の表情を変えた。
指先でそっと頬を撫でる。
「これ以上はいけない」
彼女は涙が出そうな程潤んだ瞳で僕に訴えかける。
風も音も何もない。とても静かな夜。
彼女の暖かな体温が指先から伝わる。
こんなささやかなこともあの時は出来なかった。
彼女に触れることさえ、許されなかったからーー……。
ーーそう。あれは、大分、遠い記憶。
いつも遠くから君を見ていた。
誰かが常に守ってあげなければないてしまいそうな程、か弱そくて人より体が小さくて。晴れ晴れとした暖かな日には、窓から見える桜を眺めては笑みを浮かべる。
長い雨の後、浮かない表情の君はふて腐れたように窓辺でずうっと眠っていた。暫くすると大きな手が君を包み込んで、そっと奪い去ってしまった。
長く君の姿が見えなくて、僕は不安になる。
それでも、君の住むおうちの庭の周りが賑やかになるにつれて、君はまた元気な顔を見せてくれた。
僕は君のことが好きだったーー……。
それは、側に守ってくれる大きな存在がいたとしても変わらない想いだったーー……。
そして、運命の日。
僕は彼女を守れなかった。
どこを見てもいつも側にいた彼の姿は見えなくて、その時の僕には彼女に触れることすら許されなくて。彼女の体温は段々と冷たくなっていき、最後は息を引き取った。
ずっと、ずっと見ていたのに。
大好きな子すらも守ってあげれない。
朽ちていく体さえも救ってあげれない。
自然に運命を任せるしかなかったーー……。
僕は悔いた。
でも、今は。今ならば彼女を守ってあげれるーー……。




