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やめないで、フクちゃん!

作者: 灯宮義流

 金曜日のクラス会。

 週休二日制を取っているこの学校。つまり、明日からニ連休だ。

 だからこそ、みんな早く帰って明日のために身体を休ませたいと考えている。

 頭の薄い短パン小僧が教壇に立った。学級委員長のフクちゃんだ。

 フクちゃんは、頭は平凡、顔は猿みたいな奴で、特に他の人から見ても、毛が薄いことで四年生中に有名だった。

 本人は大器晩成型というけれど、この年でこの薄さ。デコが汗で光っている。誰が見てももう手遅れだろうとしか思えない有様であった。

「今回は、皆さんに大事な話があります」

 出た。フクちゃんはやる気が無さそうに見えて、意外と話すことは長い。

 この切り出しは、絶対に長話になるパターンだ。誰もがそう思った。

「今日を持ちまして、僕は学級委員長の立場を退くことにしました」

 退くって何? クラスメイトの中でも秀才と呼ばれるハシちゃんに皆が聞くと、それは辞めることだという返答が返ってきた。

 教室内がざわめく。

「なんでやめちゃうんだよ、フクちゃん」

「そうだよ。お前がやめたら、誰か他の奴があんな面倒くさい学級委員会に行く羽目になるんだぞ」

「大体お前さ、女子のリコーダー盗難事件だって解決してないのにさ、無責任じゃね?」

「ああ、やめんなやめんな!」

 フクちゃんに向かって、野次が飛んだ。でも、本人はしれっとしている。

 何を言われても聞く耳持たずという顔。腹が立つほどに無関心な顔。

 勿論それは、クラスメイトの神経を逆撫でした。

 さらに野次が飛んでいく中で、ついにフクちゃんは面倒になって、それに答えた。

「こう見えても僕は、お稽古事に通って、ママの手伝いをして、塾にだって通ってる。あなたとは違うんです」

 そんな言い方されたら、他の黙っていた連中も怒る。

 担任が収拾をつけようとするが、一向に収まらない。それどころか、唯一の大人なのに泣き始めている。これでは一生学級会は終わりが見えないだろう。

 だけど、そんな中で、一人カッカッカとオッサンみたいな笑い方をする奴がいた。漫画を片手に話を聞いていたアソッちゃんだ。

「そんなにみんなガタガタ言うなら、俺がやるよ」

 いつもニコニコとしながら漫画を読んでいるけど、実はクラスの曲者、アソッちゃん。

 みんな、彼なら任せてもいいだろうと賛成の声をあげた。

 するとさらに挙手があがった。野球係のユリちゃんに、プラモ部のイシ坊。他にもゾロゾロと手があがる。

 アソっちゃんは曲者だけに、浮世離れしたところがあって、逆に好かない奴もいるのだ。

 早く帰りたいということを忘れて、みんな誰が次の委員長になるのか、ワーワーギャーギャー騒いでいる。

 そんな中、フクちゃんは一人荷物をまとめると、そそくさと帰っていってしまった。

 隣のクラスのザワくんは、「これで次の運動会で優勝旗は貰いだな」などと、ニヤニヤしながら、その荒れ果てたクラスを眺めていた。


 早くお稽古に行かなきゃと、校庭を走るフクちゃん。

 すごく急いでフクちゃんだったけれど、急に後ろからプシューという音がして、振り返ろうとした。

 でも、それより先に後頭部へ重たいものが直撃してしまって、フクちゃんは頭から血を流して倒れた。

 隣にある幼稚園の砂場で遊んでいたキムくんのペットボトルロケット「テッポッドン」が、直撃したのだ。

 キムくんは、キャッキャッと笑って喜んでいた。

 今日は、キムくんの大好きな幼稚園の誕生日なのだ。

みなさんもミサイルには気をつけましょうね!

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― 新着の感想 ―
[一言] 読後、真っ先にごはんライスさんを彷彿させられました。重い前半と全く関連性の無いオチ。面白い不条理ってやつですかね、個人的に大好きです。
[一言] 旬な話題。これ一年後に読んだら意味わからんかも。 安倍さんの時もそうだけど、辞める本当の理由がわからんよね。何だかなぁという感じ。 逆に、きたのうみ理事長がすぐに辞めなかった理由もわからんね…
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