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非日常への第一歩

「那琴ってほんとに占いが好きだよね。私も何か占ってよ」


 昨日の天気予報の通り、この日は久しぶりの快晴だった。空は青く澄み渡り、空気は雨上がり特有の透明感をもち、遠くの景色も鮮明に見ることができる。

 そんな日の放課後に、駅へ向かう道を歩いている4人が話していた。

「何かって言われても……、具体的な悩みとかがないと占いようがない」

「悩みかー。あんまり思いつかないなー」

 愛菜は指を顎にあて、悩みを絞り出そうと懸命に考えている。

「谷沢の悩みなんか、今日はシュークリームとエクレア、どっちにしよっかなー、とかそんなもんだろ」

「なんだと!私だって女の子らしい悩みの一つや二つ、あるんだから!」

「女の子らしい悩みを持つ人は悩みを思い出そうとなんかしねえっての」

 俊秀と愛菜はいつも通りだ。まったく、仲がいいなあ、そう思いながら悠が二人の会話を黙って聞いていると、後ろからパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。

 それにつづいて、救急車のサイレンも聞こえてきた。

「なんだなんだ?今日はやけに騒がしいな」

 俊秀はそう言いながら緊急車両の行き先を見る。

 残りの三人も同じように去っていくパトカーに目をやった。パトカーはすこし先の角を曲がり、それからしばらくすると、サイレンの音が鳴り止んだ。

「あの角の先で止まったっぽいよ」

 愛菜が言った。

「そこで何か事件があったのかな」

 悠がつぶやいた。

 角の先からは赤色灯の光が漏れている。

「面白そうじゃん、ちょっと見に行ってみねえ?」

 俊秀が興味津々といった様子でそう言った。

「まあ、このあとになにか用事があるわけでもないし、私はいいよ」

「みんなが行くなら……、私も行く」

「僕もすこし気になるな」

 残りの三人の同意を得て、俊秀は嬉しそうに言った。

「よしっ!全会一致だな!じゃあ行ってみようぜ!」


 三人が角を曲がると、そこには数台のパトカーと救急車があった。

 立ち入り禁止、と書かれたテープが現場を囲むように張ってあり、その中はさらにブルーシートで囲ってあって、中の様子をうかがうことができない。

「これって結構やばい事件なんじゃない?」

 目を見開いて愛菜がそう言うと、警察と思しき人が忠告してくる。

「ほら、危険だから部外者は離れてね」

「ここにいても仕方ない。警察とかの邪魔になると悪いし、もう帰ろう」

 悠がみんなに言った。

「そうだな、帰ろうぜ」

「うん、そうだよね」

「わかる……」

 そう言って四人は現場から立ち去り、駅へ向かった。


「しっかし、物騒な世の中になったもんじゃのう」

 俊秀は眉間にしわを寄せながら腕を組み、世を憂いているふりをして言った。

「でも本当にそう思うよ。最近ニュースでもよくやってるよね、アメリカや中国といった大国が自国のことだけを考えるようになって、貿易摩擦が起こってるって」

「それ私も知ってる。テレビで言ってるやつだよね。このままだと戦争に発展するかもしれないって言ってる人もいたよ」

「え?そうなの?本当に物騒な世の中じゃん」

 そんな話をしているうちに、四人は駅に到着した。

「それじゃあ、私と那琴はこっち方面だから、また明日ねー」

「ばい」

「おう、また明日なー」

「うん、さよならだね」

 そう言って、四人はそれぞれのホームへ向かった。


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