第3話
やっと織音と奏が会います。
嫌がらせを受けていたことを知って、魔王様はどうするのでしょうか?
さかさか。
手際良く箒を動かしながら、砂を片付ける。
ちり取りに集めたそれを袋に落として、お終い。
因みにちり取りを持ってくれていたのは、アスタロトさんです。
イケメンさんにちり取り……。
何かごめんなさい。
支え持っていた袋を、そっと括った。折角集めた砂だもん、零したら掃除したのが無駄になっちゃう。
綺麗になった廊下を見て、よし、と満足。
途端、深ーい溜め息が聞こえてきた。
「…………織音様。このことは、報告させて頂きますよ」
「えっ」
びっくりして体ごと振り返る。
ちょ、待っ……こんなことで!?
「いやいや、待ってくださいよ。毒を盛られたわけでもないんですし」
「時間の問題だと思いますよ」
「いやだってホラ、私はこの通りピンピンしてますし」
「今は、ですよ」
わあー。
イケメンさんのジト目、絵になるわぁ~。
なぁんて思って、いたら。
「……──何の話?」
…………地を這う声って、こういうのを言うんデスカネ…………。
対峙?していたアスタロトさんが、一礼している。
彼がこういう態度を取る相手っていうのは。
えぇと。
つまり。
即ち。
「…………──奏……」
ぎぎぎ。
って音がしそうなぐらいの動きで、恐る恐る振り向く。
其処にいらっしゃったのはやっぱりと言おうか、魔王様でございました。
わ、わぁー。
ご機嫌、悪そー!
こっちに来てからの姿って、まだあんまり見慣れないけど、びしばし伝わってくるよー。
痛い痛い!
鋭い眼差しがイケメンさんだけど、ざくざく刺さって痛い痛い!
「…………──姉さん?」
「ひゃいっ!?」
あっ。
変な声出た!
でも奏くんはスルーしてくれたみたい!
「……それ、何をしてるの?」
「えっ、と……これは、その……、そ、掃除カナ?」
「何故姉さんが?」
おふぅ。
痛いトコ突いてくるね~!
大事にしたくないので、此処は秘儀!笑って誤魔化す!
「…………──アス」
「はっ」
あっ!
奏、アスタロトさんに振ったー!
私じゃ埒があかないと思ったんだね!?
折角の笑顔が水の泡じゃん!
「織音様のお部屋の前に、砂がばら撒かれていました。嫌がらせかと思われます」
ちょ、しかも即行バラしてるー!
「…………お前は何をしていた?」
「はっ、申し訳ございません。私の監督不行き届きです」
「えっ、ちょっと待って……!」
頭を下げるアスタロトさんにビックリする。
だってアスタロトさん、別に悪くないよね? て言うか、関係無いよね?
急に割って入った私に、奏が視線を戻した。
ちょ……何か目が凄く冷たいんですけど?
「ちょっと待って、奏。アスタロトさんが悪いわけじゃ──」
「何で姉さんが庇うの」
えっ。
ぶった切られちゃった。
て言うか……。
奏、何かピリピリしてる……?
「かな──」
「何で姉さんがアスを庇うの? もしかして好きなの?」
「はっ!? な、何言って──」
「……──そんなの、許さないよ?」
瞬間。
ぞわりと、背筋を何かが走り抜けた。
ピリピリしてた空気が……まるで、凍り付いたみたい。
(な、なん……奏、一体何を言って……?)
意味が分からなかった。
だって、私はただ、アスタロトさんは悪くないって言いたかっただけなのに──……。
「──マオーサマ、ストップストップ」
場違いな程、明るい声がした。
あぁ、こういう楽しそうな声、よく教室で聞いてたなぁ……。これぞ女子高生!みたいな、キャピキャピした感じ。
奏の後ろから、すいっと現れたその人は、凄く可愛らしい人だった。
あ、あの髪型、素敵……!
ごくごく自然に奏の隣に立って、するっと奏と腕を組む。
あまりにも自然な動きだったから、思わず見とれちゃって、その後でビックリした。
「んもー、何やってんの? 今はそれどころじゃないデショっ?」
「……サキュア……」
言われて初めて気が付いたみたいに、奏がその子を見下ろす。
ぷりぷり怒って見せてる彼女と、じっと見つめ合う奏。
凄いなぁ、美男美女は絵になるなぁ──。
……──ずき。
(……──あれ?)
急に、胸の奥が痛くなった。
え……?
何で……?
何、これ……?
こんなの、初めてだ……。
何で、こんなふうに痛むんだろう……?
(こんなこと……今までに無かった、のに……?)
初めての感覚に、私はただひたすらに、どうして?と戸惑った。
一体これは何──?
織音の心境に変化が?
次話はもう少し進展させたいと思います。
お読み頂き、ありがとうございました(^^)
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