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「僕と恋をしてくれませんか?」
彼の言葉はあまりに唐突で、魅力的だった。
それは私にしては珍しい判断だった。いつもはどんなにだるくても仕事を早退することは絶対にない。そう、その日はいつもとは違っていたのだ。そうでなければ、いつもの定番の帰り道をわざわざ遠回りして帰ったりなどしない。
「こんな所に公園とかあったんだ…。」
初めてみるそこは、狭くはあったが公園の様相を呈していた。ブランコがあり、砂場、滑り台もある。遊んでいる子どもこそいなかったが、とても懐かしい気分に浸っていた。
その時である、公園をぐるりと囲むそれに気づいたのは。どうしてはじめに気づかなかったんだろう。
「綺麗な椿…。」
名前が同じだからか、少なからず好意を持っていたその花は酷く美しくまた不気味に映った。純白の椿の花、白い椿なんて初めて見た・・・。
「綺麗ですよね、椿の花。」
不意に、背後から声がして思わず声にならない声を挙げてしまった。
誰もいないと思っていたからなおさらだ。
「!!」
振り向くと、まさに“儚い”という形容の似合うような漆黒の髪の男性がいた。
「すみません、驚かせてしまいましたね。」
申し訳なさそうにするその男性は、色白で細身にもかかわらず、背が高かった。
「いえ…。」
薄く微笑む口元は弧を描き、彼の視線は私に向けられていた。
「それはそうと、あなたのお名前をお聞きしてもよろしいですか?」
脈絡もなくその人はこちらに向かって変わらず微笑んだ。ああ、やっぱりこの人綺麗だ。
そんな陳腐な言葉でしか表現できない自身にうんざりしたが、そんな言葉しか出てこなかった。でも、どうして名前なんか聞くんだろう。
「えっと、それはどういう意図で?」
「僕と、恋をしてくれませんか。」
「・・・・・は、え・・・は?」
これが私と彼の出会い。
私はいつも願っていた。誰にも言ったことのない、たった一つの願いを。
それを彼は叶えてくれるんじゃないかって、そんなことを思っていた。
根拠のない予感、だけど確実に何か変わる気がした。
初投稿させていただきました。
何分稚拙な文章ですが、読んでくださる方がいらっしゃいましたら幸いです。