6.
拓海はもう来ていた。
なんだかいつもと様子が違う。
非常ーに大人しい雰囲気なのだ。
それはそうと、さっきも気付いていたけど、拓海の私服姿……。
格好良い!!
ブルーのデニムにグレーのシンプルなTシャツ、白いスニーカーなのだけど、
色づかいもファッション誌に出てくるような感じで、サングラスなんか胸元に引っ掛けたら、もうキュン死してしまいそうだった。
……すでにキュン死してますけど……。
それはそうと、いつもの
「ねぇ夏帆、ねぇ夏帆」
と、ちょっと俺様だけど、宿題を教わりに来る時のような甘えた感じがしない。
……まさか、好きな子ができて、その相談!?……
「ど、どうしたの……?」
口ごもってしまった。
「いや……。」
「……宿題は?」
「宿題!? ……ああ、それはいいからいいから。」
急にトートバッグの重みを感じた。
「ちょっと……、向こう、行こう?」
と、指さされたのは、この先にあるバスロータリー前の噴水広場だった。
市制100周年を記念して作られた大きなモニュメントや、木もところどころ植えられていて、日陰も多い。
私達は無言で歩き始めた。
広場へ着くと私達は、モニュメント下のベンチに腰かけた。
モニュメントからミストシャワーが出ている。
噴水では小さい子達がキャッキャッと遊んでいる。
周りはスマホに熱中してる若者、水遊びをする子供達を楽しそうに眺める老人、その合間をスーツ姿の男女が忙しそうに歩いている。
拓海は静かに丁寧に言った。
「好きです……。付き合ってほしい……です……。」
「えっ!?」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
拓海のではなく、私の素っ頓狂な声で周りからの視線を少し浴びてしまった。
「……ダメだよな、やっぱ……ごめん。」
違うから!
私は肩から落としそうになったトートバッグをギュッと掴んだ。
「……違う……。」
さっきとは打って変わって、蚊の鳴くような、か細い声になってしまった。
ドキドキが止まらない。
まさか拓海に告白されるなんて……!
泣きたくなってしまって、顔も下に下がってしまった。
「いいよ、ごめんな。」
拓海は静かに立ち上がろうとしていた。
「違うの! 拓海!」
私は必死で声を出した。
拓海は怪訝そうに私を見た。
「私も……私も……。」
うまく言葉が出ない。
「私も拓海のこと……好き……です。」
それだけ言うと、熱中症で倒れるのではないかと思うくらい、体が火照ってるのを感じた。
「マジ!?」
拓海の嬉しそうな声を聞くと、私も嬉しい。
こうして、私達は付き合うことになった。
「暑いから、どっか入ろう?」
いつものちょっと俺様だけど、甘えた口調の拓海に戻っていた。
私達は近くのファストフード店に入った。
ファストフード店へ入ると、先にいたらしい拓海のお姉さんの愛加里さんと、拓海はバッタリ、私は初めて会った。
そう、拓海の告白と、愛加里さんを交えて3人で会う、このシチュエーションがなかったら、
私と拓海、そして直矢のその後の物語は違った展開になっていたかもしれなかった。
そのことに気づくのはずっとあとのこととして、私達はちょっと気恥ずかしい気持ちで愛加里さんの明るい声を耳にした。




