27.エピローグ
直矢の存在を誰も知らなかった。
私達はあの日、拓海の家で目を覚ましたあと、必死に直矢を探した。
たしかに、私達は直矢を見たのだ、拓海の家で。
それなのに、誰も知らなかった。
動画投稿サイトにも、拓海と直矢の動画は、初めから無かったかのように、無かった。
私も拓海もいつしか、直矢のことを口にしなくなった。
その頃、
「赤ちゃん、できたの。」
と、嬉しそうに言う愛加里さんと会った。
夏休みも終わり、学校帰り、私達は初めて一緒に入ったあのファストフード店にいた。
そこに愛加里さんもいたのだ。
「もう2ヶ月なんだって。嬉しい。ママとパパに言ったら怒られそうだけど、いいの、好きな人の子供だから。」
愛加里さんは本当に、幸せそうだった。
私達は言わなくても、お互い、直矢の顔が蘇ったのがわかった。
私達がこの夏、経験したことは一体、何だったのだろう。
直矢はいない。
でも、また会える気もしてきた。
私達は愛加里さんの話を一通り聞いてから、店をあとにした。
「大学、どうするんだ。学生結婚か?」
「そうだよね……。」
「俺達、何を見ていたんだろう……。」
「ね……。」
秋の風がサワサワとしている。
私達はこれから、どうなるのだろう。
でも、きっと直矢にまた会える。
そんな思いを抱きながら、私達は手を繋いだ。
「直矢にいつか会ったら、いつか言おうな? あの国はどうなったんだよ、て。」
「そうだね。」
私達は空の向こうの、あのお城への招待状を受け取った気分だった。
愛加里さんのお陰で。
手を繋いだまま歩く私達の横に、直矢があらわれるのは、もう時間の問題だった。




