14.
小人はニコニコした顔をしている。
背丈は30cm程で、グリーンのつなぎにグリーンのベレー帽を被っていた。顔は人間の子供のような顔立ちだ。
「あっぶね、踏み潰すとこだったよ。」
直矢が言った。
「……。」
私は絶句していた。
「なあ、君はどこから来たの?」
拓海は小さな子供に聞くように聞いた。
小人はニヤリと笑うと、左手をパーの形で前に出した。
いきなり凄い風が吹き、飛ばされそうになる。
直矢の手からシールとカードが、バラバラと音を立てて飛んで行った。
「あっ!」
拓海は突風の中、走って、ジャンプしながら、シールとカードを集めた。
「あっ、おい! マントのカードがある! こいつを使えばもしかしたら……。」
「……。」
「……。」
でも誰も使い方がわからない。
そもそも、レアカードやレアシールには、レアなキャラクターが描かれてた筈で、マントのようなアイテムなど聞いたこともなかった。
「でもこのままじゃ、俺達、飛ばされる!」
拓海は必死にカードの裏を見たり、振ったりしている。
何も起こらない。
「わかんねーよっ!」
拓海がバシッとカードを地面に投げつけると、ボワンとした蒸気のようなものが出て、中からグリーンの艶々したマントが出てきた。
「よっしゃ! マント出た!」
拓海は叫んだけど、
「1枚しか、ねーじゃん……。」
と、一気に落ち込んだ声を出した。
「他のカードは!?」
直矢がカードを取り上げて見た。
「ダメだ! マントは今の1枚しか無い!」
もう私達は3人バラバラで、吹き飛ばされそうだった。
「1枚でも、広げて使ってみよう!」
私はマントを拓海から渡してもらった。
サイズは大人のLサイズくらいのような気がする。
「俺と直矢が端に行くから、お前は真ん中な!?」
拓海が叫ぶ。
今まで吹いていた突風が、逆風し始めた。
小人は、チッという顔になり、すぐにどこかに飛ばされた。
風もすっかりやんでいる。
「他には、どんなシールやカードがあるの?」
私はマントを畳みながら聞いた。
拓海は手にしていたシールとカードを、トランプのババ抜きのような仕草で見せてくれた。
全部で4枚だ。今のマントのもの、アーモンドの絵、剣の絵、そして「?」マークのものだった。
「あと1枚あったんだけど、さっきの突風で、どっか行った。」
拓海は残念そうに言った。
「とりあえず、城へ向かうんだろ? 俺、直矢。よろしくな?」
と、直矢が言った。
私と拓海は顔を見合わせて、仕方ないといった感じで、それぞれ自己紹介した。
「俺は拓海。桐谷高校の1年。」
拓海はジッと直矢を見る。
「高1? 俺と同じじゃん。桐谷高校てのは知らないけど。」
ガックリうなだれる拓海だった。
「私は夏帆。私も桐高の1年。」
「わかった。」
「俺、お前に、直矢に真っ先に話したいこと、あるんだぜ?」
拓海は少し苦しげだった。
悲しそうに私を見る。
拓海のこんな顔、見たことなく、私も胸が詰まった。
「なんだ? 言いたいことあるなら、きちんと言えよ?」
「ほら、それ……。」
拓海は口をつぐんだ。
「何もないなら、変なこと言うなよ? 俺もパニックなんだからさあ。」
直矢はぶっきら棒に言い放つ。
「直矢、本当に頭打ってるのかもしれないし、直矢の様子見ながら、お城へ向かおう?」
私はそっと拓海に耳打ちした。
「……そうだな。俺達、病院行ったほうがいいよな。」
拓海は自虐的に言った。
「どうしたらいいのかわからないけど、このカードとシールがあれば、無事にお城に着けると思うよ?」
そんな保証ないけれど、ポジティブなセリフを口にしたかった。
「ん……夏帆が言うなら、本当にそうなると思う。」
細めのキラリとした、魅惑的なその視線……拓海にその視線で見つめられると、こんな時にキュン死しそうなんで、やめ……てほしくない!
私はドキドキしながら、拓海の横に並んだ。
私達は3人で、お城へ向かって歩き出した。
私と拓海が並んでる後ろから、直矢がついて来た。
その時、私と拓海は気づいていなかった。
後ろにいる直矢は、見たこともない冷たい、キラリとした、嘲笑うかのような視線を私達に送っていた。
私も拓海も、そんなことに全く気づかず、お城へも拍子抜けするくらい無事に辿り着いた。




