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『三人』の終

翌日。自動人形特攻隊に、任命されたロト、レール、フィールの三人は、先日同様、セイケント軍事室__シキの部屋へ呼び出されていた。

「今日は、あなた達にある任務をお願いするです。」

机に並べられた資料の中から一枚を取りだし、フィールに手渡す。

「えっと、北西…レベル1の自動人形の討伐依頼?」

「そうです。レベル1と言えど自動人形です。連日、街を騒がせている殺人鬼の自動人形よりは、かなり攻撃力が低いので、襲われても死にはしないはずです、初戦にはピッタリですよ。」

フィールの手にある資料によれば、場所は北西の農家だという。北西付近には森が多いらしく、おそらくその森から現れてくるとのこと。数は20前後。今のところの被害は、畑を荒らす程度らしい。

「別にいいけど、レベル1とかって何の事だ?強さか?」

資料を覗きながら、疑問を投げ掛けるレール。

「そうです。最大でレベル5。数が増す毎に強さもあがるですよ。」

「ほぉー。じゃあ、今回の任務は簡単そうだな。」

「まぁ、油断は禁物っすよ。」

「何はともあれ、とりあえず行ってくるです。期待してるですよ。」

「「「了解っ」」」


三人が部屋を後にし、しんと静まり返った部屋。誰も居ないはずの空間に、シキはぽつりと呟いた。

「__紅葉、居るのは知ってるのです。」

呟きに反応するように小さなつむじ風が起こり、中から人影が姿を表した。

「あり?ばれてた?流石シキちゃん。」

風の中から現れた長身の男性は、悪戯っ子のように、怪しく微笑えんだ。

「ばれるもなにも普通にわかるです。それで?彼女からは?」

「僕の手伝いをキャンセルさせたと思ったら、今度はあの子と接触してこいなん…」


ぎろっ


「て、僕も人気者だなぁ!アハハハハ!」

全身に冷や汗を浮かべる紅葉。懐から、メモ帳を一冊。

「と、ちゃんと貰ってきたよ。_殺人鬼、レベル5の自動人形について、ね。」


所変わり、ロトの部屋。

「なんだろうな、見せたいものって。」

「さぁねぇー」

昨日見せられなかったものを、今見せたいからと、レールとフィールは、セイケントに寝泊まりしてるロトの部屋に来ていた。セイケントには、ロトのように、寝泊まりするメンバーも多いため、一人一人に部屋を設けている。

「すみませんっす!どうぞ、入ってくださいっす。」

中から扉を開けて迎え入れるロト。二人は、お邪魔します、と一声。

「そんな律儀じゃなくていいっすよ。ほら、これっす。」

部屋の棚から、布を被せた籠を持ってきたロト。

「この籠か?見せたいものって」

「その布取ってみるっす。」

不審がるレールは、恐る恐る布をずらす。すると、

ぎゃああああああああああああああああああああああああああっっ

「はわわあぁっ!?」

籠と布の隙間から、光る何かが、飛び出した。それに、レールはとんでもない悲鳴を。フィールは短い悲鳴をあげた。

さらに。

「非常に不快です。不愉快です。特にそこのお前。」

頭上から降ってくる少女と思われるソプラノボイスに、レールはまた悲鳴をあげそうになる。

「ロト、い、今のは」

「虫じゃねーよな?特に蜘蛛。」

「あははっ。二人ともそんなにびびる必要ないっすよ。ほら、上見るっす。」

二人の反応に笑いを隠せないロトは、天井を指差す。

「上?…………何かいるぅ!」

「可愛い!」

ロトに促されるままに、上を向いた二人は、天井に漂う小さな少女にそれぞれの感想を口にした。

「不快です。常識的に、蜘蛛が宙を漂い言葉を紡ぐ事など不可能です。」

小さな少女は、ロトの肩に着地すると、その深緑色のポニーテールを揺らし、その背中に備わった二枚の翅をたたみながら言った。

「初めまして。名をらいむ。お二人の事はロトより伺っています。」

ご丁寧に、頭を垂れたらいむに、二人も頭をさげる。

「らいむは、今回の任務の場所の近くの森で見つけたんすよ。妖精って見たことないっすし、何より傷だらけだったんで連れてきたんす。」

「へぇ~」

「ロトには感謝しています。あのままの私であれば、生きている可能性は0,4パーセント以下だったと思われます。」

嬉しそうに小さく口元を緩めたらいむは、そう口にした。すると、ドアから女性の声が割り込んできた。

「あらぁ、可愛いわね、妖精って言うのかしらぁ?」

「ティスカ!?」

突如部屋に現れたティスカは、らいむにさほど驚く事なく、率直な感想を口にした。

「ティスカ、どうしたの?こんなとこに来るなんて珍しいね。」

フィールの問いに、ティスカは呆れたように言った。

「どうもこうもないわぁ。北西行きの馬車が来たから呼びに来てあげたのよぉ。」

「おぉ!ついに任務が始まったか!よっしゃ。4人で任務開始だ!」

言うや否や、物凄いスピードで外に向かうレールを笑いながら、フィール、ロトも部屋を後にする。その光景にティスカもまたもや呆れながらくすりと笑い、カウンターへと彼らに背を向けた。


******南東、市場の路地裏*

レール達が、馬車に乗り込んだ頃、一人路地裏を歩く金髪の少女がいた。その少女は、全身が紅く染まっているのにも構わず、懐から手帳を一冊とりだした。

「今回も外れですわ。全く、レベル5にもなれば、少しは頭も回るものですわね。行く先々で自動人形の迎撃に合いましたわ。」

チェックリストから、次の目的地を確認すると、少女は、唯一血を浴びなかった金髪を翻し、路地裏へと消えていった。

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