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成り果ての終

あーあぁ、魔法が使えたらなぁ。でも使えたら使えたできっと問題が起こるでしょう。少なくとも私は快適より不便が大きくなるのではないかと思います。さて、ゲームするかっ!

夜。とある路地裏。一人の男が『人の形をした何か』から必死に逃げていた。

「ヒッ……た、助けてくれ…か、金が目的か!?なら一万リブ出そう!!それでかいけ」

助けを求めて金を出そうとした男の声は最後まで発せられる事はなかった。代わりにぐちゃっという生々しい鈍い音が響く。地面に紅い液体が広がった。

「……人の世代もここまでか。魔法を操る者も増えてきたらしいが、そんなもの、我の邪魔にすらならない。世界は堕ちる。我ら『成り果ての終』によってな…」

男を亡きものにしたその『何か』は影とも言える漆黒の羽織を翻し、路地裏の闇に溶けていくように消えた。


「レール!レールってばー!!朝だよー!」

朝。右手にお鍋のふた、左手におたまを持った、いかにも家庭的な格好をした少女が少年の耳元でガンガンとそれを打ち鳴らした。少年は特有の金属音に耳を押さえながらうっすらと目を開けた。音源者が少女ということに気づくと、レールと呼ばれた少年は

「何…今日は任務も何もない日だろ…」

と、不平を口にしてまたあったかい布団へと眠りにつこうとする。が。少女にその布団をガバッと片手でめくられてしまった。

「任務ならあるけど。さっさとご飯食べないと置いてくよ?いいのね?シキにレールは寝坊ですっていっちゃうよ?」

少女の言葉を聞いた途端にガッと跳ね起きるレール。

「は!?聞いてねーよ!?なんで起こしてくれねーんだよフィール!!」

「起こしたじゃん」

フィールは口を尖らすが、レールは見向きもせずに、あたふたと着替え始めた。

「いつまでいるんだよ!!着替えるから出てけって!」

「はーいっ」

頬を赤らめて騒ぐレールの部屋を後にしたフィールは、手に持っていた調理器具を戻すべく、階段を降りた。


しばらくして、着替え終えたレールが頭を掻きながら降りてきた。ベーコンの焦げた、鼻を刺激するいい臭いがする食卓に座っているフィールの向かいに座ると、いただきます。と自分もきれいに皿に盛られた朝御飯を食べ始めた。


レール達が住まう街には、1つのある団体がある。セイケントと呼ばれる組織だ。魔法が存在するこの時代、魔法を駆使し街を守るために創設された組織であり、街の中央にその本部となる建物を置いている。セイケントに入るには相応の魔法が使えないと入れないため、多くの若者達の憧れとしてその名を知らしめていた。レール、フィールもこのセイケントの一員であり、最年少の団員としても有名であった。そんな強者が集まるセイケントだが、今、大きな問題を抱えていた。自動人形オートマタと呼ばれる謎の生物だ。人間の姿であるものの、耳が生えていたり、角があったり、全身真っ黒であったり。感情を持つものもいれば、持たないものもいる。人形のような存在だったため、自動人形と呼ばれているが、重要なのは自動人形は人間を誰でも問わずに殺してしまうところだった。今まで犠牲になった人はまだ少しに留まるものの、セイケントとしては街を危険におかす存在として、警戒に当たっていた。そんなある日である。


「シキ~、さっき連絡がとどいたわよぉ」

数枚の書類をもって女性が現れたのは、セイケント、軍事室。

「連絡ぅー?何の連絡です?」

軍事室の主である、シキと呼ばれた少女は回転式の椅子からスタッと立ち上がると、空色の長い髪をなびかせながら女性の元へと歩いて行く。

「自動人形について。昨夜、また男性が殺されたそうよぉ」

「またですか、これでもう五人目なのです。いくら始末してもきりがないのです。」

「ただ、今回は証言つき。男性を殺害した自動人形は自分達の事を『成り果ての終』と呼んでいたそうよぉ」

成り果ての終……。それが、自動人形達の組織の名前らしい。シキはしばらく黙り込む。

「ティスカ、ロトとフィールとレールを呼んでくるのです。」

「了解よぉ。ロトに双子ちゃんね。」

承諾したティスカが部屋から出ていくと、シキはふっと窓に映える白い鳥を眺めながら自分の仕事へと戻っていった。

シキが眺めた窓の向こうは、今の街とは裏腹に、蒼く清み渡っていた。

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