王子は乙女に恋をする………?
初めての普通の恋愛を書きます。おかしな部分が多々あると思いますが、スルーしていただけますと助かります。
全ては、とあるお茶会が始まりでした。
先に自己紹介をさせて下さいませ。私の名前はルミティアーナ。由緒ある侯爵家の末娘です。御年5歳になります。私の家族は両親と7つ歳が離れた長兄と、5つ歳が離れた次兄がいます。歳が離れて、更に念願の女の子という事で、家族、ひいては使用人の皆様まで私を甘やかす始末。
最初は良かったのです。さ・い・しょ・は!!
しかし、甘やかす事がエスカレートすれば、それは只の我が儘の発端にしか成りません。
故に、私は4歳でキレました。いい加減にしやがれ! こちとらてめぇーらのオモチャじゃねぇ!
あ、言葉はお上品に言ってますよ? そこは誤解の無いようにお願いしますね☆
さて、そんなこんなで家族に危機感を感じた私は、両親に頼んで先生を付けてもらう事にしました。厳しい先生でしたが、マナーや読み書き、算術に歴史、ダンスにバイオリン。必要な事の諸々を必至で覚えました。
恐らく、今現在、皆様は疑問に思うでしょう。
本当に貴方、5歳児ですか、と。
実を言えば、私は前世持ち、つまり転生者と呼ばれる人間です。
あ、そこの方! いきなり白い目で見ないで下さいませ!? 私、正常ですから! 頭おかしくなってませんからぁぁぁ―――――!!!
…………少々お待ちください。
ゴッホン、えー、とにかくです! 私は正常なのです。
さて、本題に戻って。
この世界、私の前世の記憶が正しいならば、とある王道純愛ラブストーリーとして知られた、ラノベの物語の世界です。恥ずかしながら、前世の私もドハマリした一人です。ストーリーは、シンデレラストーリーで、第二王子と下町で育った隣国の姫君との王道ラブストーリー………だったはずです。いやー、この作品、人気がありすぎて、二次作品とか出てたので、ちょっと自信ありません。人が死ぬ事は、本編ではありませんでしたが、二次作品は私も読んでいないので、ストーリーが分からないんですよね。
まあ、とにかく、私が転生したのはこの世界で間違いないのです。
さて、私の役は何か、答えは簡単です。モブです、モ・ブ!! つまり私は、本編にすら出て来ていない、本当の脇役なんです。
だから、冒頭のお茶会に招待された時は、母共々、首をかしげました。
え…………? 何で王妃様主催なのに女子同伴? つまりアレですか? 第二王子の婚約者決めの会? うわー、いやだわー。引き立て役とか…………。
だって実は、第二王子には既に候補者が数人いるのは、周知の事実。それなのにわざわざお茶会とか、大人の策略を感じます。あ、私は入ってませんので!
「お母様………、私いきたくないですわ」
「駄目です」
勿論、母には却下され、当日は母共々、地味な色のドレスを着て、お城に向かいました。何故地味なのか、答えは簡単です。無言の拒否を表すからです。明るいドレスを着ている人々は、恐らく婚約者になりたいとか、そういう人達が着るでしょうから。こちらは引き立て役、地味でいいのですよ。
「皆様、よく来てくれました、本日は楽しんでいってね!」
なんてお茶目な王妃様の言葉で始まったお茶会は、勿論、第二王子と歳の近い子供達が来ていました。王子の傍には、ご学友たるご子息達もいます。…………その中に、我が兄もおりますね。あ、見つかった!
「やあ、ルミー、君も来たんだね! やっぱり可愛い妹は、何を着ても似合うねぇ!」
はい、兄バカ炸裂です…………。我が兄は見目はいいため、沢山のご令嬢達に既に狙われています。あはは、私は妹ですから、睨まないで下さいね?
「クリス、其方のご令嬢は?」
兄の後ろから現れたのは、まさかの第二王子殿下!? やばいです! 慌てて淑女の礼をします。侯爵家のご令嬢が不敬罪とかシャレになりません!
「は、はじめまして、ルミティアーナと申します」
「はじめまして、第二王子のエミリオです」
あれ、何でしょう? 何だかロックオンされた気がします。き、気のせいですよね?
「よろしければ、庭を見ませんか?」
「え…………」
王子の突然の誘いに困惑し、兄に視線を向けると、何故か顔を引きつらせた兄の姿。
「殿下………妹に変な事はしませんよね………?」
「一緒に庭を見に行くだけだが?」
何故でしょう。お二人の間に火花が散っているような………?
「さあ、参りましょう、ルミティアーナ嬢」
「え、はぁ」
こうして、私は殿下に半場引きずられるように、庭を巡りました。お庭は本当に美しかったです☆ 流石、王宮ですよねー。って違う、違う! そう、このお茶会が全ての原因だったんです!
それから一年の後、私こと侯爵家の末娘ルミティアーナと、第二王子エミリオ殿下が、まさかの婚約をする事に。勿論、婚約者になるまで、王家と我が侯爵家が揉めに揉めたのは、言うまでもありません。が、いつの間にか、王妃様に気に入られていた私…………。はい、断れませんでした。変わりに色々と条件を付けたと父がご機嫌で帰ってきましたけど。お父様、何をしてきたのか、凄く不安なんですけど!?
それ以来、私の日常は見事に変わりました。数日置きに王城へ向かい、日夜、前以上の勉強を行い、ダンスに至ってはプロレベルを要求され。語学等は、教授並に詳しくなりました。
しかし、おかしいです。本来なら王妃様のお気に入りの公爵令嬢と、殿下が婚約するはずなのに、エミリオ様は、熱心に私を口説きますし。勿論、候補に上がっていた公爵令嬢にも睨まれました。彼女、綺麗ですけど、頭はよく無かったよう………。しかし、これではストーリーが滅茶苦茶になってしまいます。
そんな日常が続いていた15歳のある日、顔色の悪い王妃様に言われました。殿下が最近、街に降りていると。何故か気に入られた私は、王妃様にとても可愛がって貰っています。その王妃様が、顔色を悪くする程の事があったのでしょう。ちょうど帰って来た殿下に、王妃様の事を伝えますが、何故か殿下は上の空。
んー? おかしいです。その日以来、王城に行っても殿下とは会えない日々が続きました。なので、私はとうとう来たかと、王城に行くのをやめました。元々、分かっていた事です。王子が私ではなく、彼女、つまりヒロインを取る事は。なので私は、王子殿下にいつ婚約破棄をされても良いように、社交会から暫く遠退いていました。早く言えば引きこもりです。家族が心配しますが、仕方ありません。王家の方々も、急にパーティーに来なくなった私を心配してくれましたが、そこに殿下の姿はありませんでした。
「王妃様、もし殿下に私以外に好きな方が現れたら、この婚約を破棄する約定は、必ず守って下さいね?」
何度目かの訪問の際、私は王妃様に申し上げました。王妃様に泣かれてしまいましたが、既に覚悟は決まっています。まだ私は15歳、社交界でも十分若いのですから、素敵な殿方を選べるでしょう。
そんな覚悟をした次の日。何故か朝一番に、我が家に第二王子殿下がいらっしゃいました。何故ですか!?
「ルミティアーナ! 婚約破棄なんて、いきなりどうしたんだい!? 最近は城にも社交界にも来ないし、一体全体何があったんだ!?」
……………え?
「あの、殿下? 新たに好きな方が出来たのでは?」
控えめに聞くと、何故か殿下が固まってしまいました。あれれ?
「何処からそんな情報が? 後にも先にも、僕が好きになったのは君しかいないよ!!?」
「でも、王妃様が、殿下が近頃、街に頻繁に降りていると………」
そういうと、殿下は眉を潜めました。やはり、何かあったのでしょう。
「はあ………、あのね? ルミティアーナ、僕は部下から、城下に隣国の姫君の双子の妹君がいるという情報が来たから、仕方なく顔を知ってる僕が確認しに行ってたんだよ、その問題も無事に解決したと思ったら、君が婚約破棄なんて言いだすし、僕も流石にビックリしたよ…………」
「え!? でも、殿下はっ! 私が城に行っても、いつもいなくて、そしたら王妃さまがいらっしゃったから、もしかして婚約解消なのかと…………それに」
何やら驚愕の顔をされる殿下。あれ、おかしいですね? ビックリするのは私のはずですのに。
「そ、それに?」
「殿下は近頃、私と話していても上の空で…………他に好きな方が出来たのかと…………」
「え゛ぇ!? 僕が好きなのはルミティアーナだけだよ!! ………上の空だったのは、この捜査で寝不足気味だったのと…………君に見とれていたからなんだ」
「はい?」
顔を真っ赤にさせて、こちらがむず痒くなるような初々しい告白をなさった殿下。つられて私も顔が赤くなります。
「ねぇ、ルミティアーナ、もう僕達、結婚してもいい年だよね?―――――ルミティアーナ、僕と結婚してくれ、絶対に幸せにするから」
突然の告白に、私は頭が真っ白になってしまいました。だって王子様が、目の前で跪いて求婚してくれたのです。
………………大好きな殿下が、目の前で。
「わ…た……く…しは……」
続きを言おうと、幸せ過ぎて震える唇を動かそうとした、まさにその時。
「ちょーっと待ったぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!」
ここ私の部屋です。その華奢な扉が、壊れるかもしれないほどの勢いで、開いたのです。とある人物によって。
「エミリオさまぁ〜♪ やっと見つけましたわ〜♪♪」
「お嬢様、申し訳ありません!」
我が家の執事さんが平謝りする横で、その人物は、ただエミリオ様だけを見ていました。はい、間違いありません。艶やかな桃色の長い髪、金色の瞳。赤いドレスを着た彼女は、この世界の主人公、リリアーナ様。ドレスを着ているということは、既に姫としての立場をお持ちなのでしょう。
「リリアーナ殿? 何故ここに!? 貴方は国に帰ったはずだ!」
「はい、そうですわ♪ でもエミリオ様が忘れられなくて………全てを終わらせて、お迎えに来たのですわ♪」
……………あら? こんなストーリー、ありましたかしら?
「悪いけど、僕が結婚するのはルミティアーナだよ…………それに君は、“隣国の末姫”で“色々とやらかして”いるよね? 何で問題ある人物と、結婚しなきゃいけないわけ?」
あれ? そんな設定もありませんでしたよ!?
「嫌ですわ、エミリオ様♪ わたくし全てを終わらせてきたと申しましたでしょう? 王様にも許可を頂きませんと! 結婚式は盛大になりますわ♪♪」
目をハートにされたリリアーナ様は美しいですけれど、何でしょう? ちょっと怖く感じます。
「あのね? リリアーナ姫、君の婚約する相手は僕じゃなくて、弟の方なんだけど?」
そういえば、エミリオ様には弟君がいましたね。顔立ちがそっくりで、まるでお話に出てくるような、王子様が。
「え?」
主人公さん、ビックリしてます。あ、固まってるうちに、彼女の召使さんが礼をしてつれていってしまいました。
結局、何だったのでしょう?
「はぁ、邪魔が入っちゃった…………改めて、ルミティアーナ、僕と結婚して下さい」
「……………はい」
そっとキスされた唇が、私に幸せを告げていました。きっと結婚式は盛大なものになるんだろうなぁ、と遠い眼になったのは、ご愛嬌で。
因みに、ヒロインさんと第三王子様が、バタバタと辺りを巻き込んだ騒動を起こしつつ、ラブラブで結婚式を挙げたのは、また別のお話。
END
読了、お疲れさまでした。
甘酸っぱい恋になったんでしょうか?
イマイチ自分の作品だと、そこら辺が分からない。
因みにこの二人、きちんとラブラブな結婚をしますよ♪ 途中で書いてて挫折しましたが………。甘過ぎて書けない! こんな経験初めてなので、いい経験になりました(笑)
よろしければ、感想等まってます。なお、作者はメンタル弱いので、出来ましたら甘口でお願いしますm(__)m