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ダイスワークス✡リポート  作者: 沖 鴉者
5/10

神様の賭博場

♧「おっはよーございます」


♢「おはようございます」


♤「はいおはよー」


♡「……おはようございます」


 お気楽なのが二つと緊張したのが一つ、どんよりしたのが一つと、実に心象の分かり易い朝の挨拶が行き交った。


 っていうか相変わらずゴジラなんですね、社長。


 彼等二人は車で来たのか、灰色のワゴンから手を振っている。


♤「早速だけど乗ってくれるかい?時間もあまりないし」


♢「分かりました」


 言われた通りに乗り込んで、十二里さんに向かい合う様にして体面座席に腰掛ける。


 腰掛ける際、トランク部分に積まれた巨大な段ボールが目に留まったが、何かの備品なのだろう。


 間もなくワゴンは動き出し、俺達は賽縁庵へと運ばれる。


♤「ところで十一君、この車何に見える?」


♢「え?ワゴン……ですけど」


♧「はぁ?」


♢「ふふふ、君は本当に凄いね。幻術も完全無効か。正解、これはリムジンなんかじゃない。賽縁庵所有の幻術視覚加工のワゴンだ。ほら、城下君はそんなに不貞腐れないの」


♧「せっかくセレブ気分に浸ってたのに……」


♢「俺を睨むなよ……ちょっと訊きたいんですけど、賽縁庵では一体何が起こってるんですか?昨日の説明だけではいまいち把握出来てないんです」


♡「……ごめんなさい。それは重々承知なんです。色々と腑に落ちない点も多いかと思いますが、見て頂くのが一番手っ取り早いと思いまして……」


 どう説明するかを考えあぐねる様に、十二里さんは俯く。


 それ以上、彼女はその件で口を開く事はなかった。


 退屈そうに車窓を眺めていた三葉が、ポツリと呟く。


♧「不便ね、考えが共有できないって」




 賽縁庵は海のよく見える断崖の上にあった。


 昨晩の内にグー●ルマップで大体の位置は確認していたが、視点を地上に下ろすと、やはり絶景だった。


 雲の目立つ空の下にあって、そこにだけ差し込む日差し。


 それは純白の城の様な施設を、どこまでも漂白して行く。


 美しいと、普通は感じるのだろう。


 だが、この時の俺達には魔王の城にしか見えなかった。


 それは、正に純白だった。


 一切の濁りを許さず透き通るまで浄化され、不自然なまでに人の手の加わった、造り込まれた白。


 余りの不透明さに、手垢が透けて見える様だ。


♤「……行こう」


 真っ黒なゴジラ人形の言葉で、俺達は歩き出す。


 魔王が出るか魔神が出るか、知っているのはサイコロの持ち主だけだ。

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