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第1幕3部  聖騎士の騎龍「ヨーン」

フローラのドラゴンは、年老いた熟練の騎龍だった。

その体色はくすんだ茶色で、ウロコもそこかはとなく荒れが目立ち、彼女の老いを他人に印象づけることに一役買っている。

どこにでもいるような、そんなドラゴンであった。


ドラゴンは、その圧倒的な力とあい反して寿命は長くない。

平均して20年ほどの時しか、彼らがこの世に生きることはできないのだ。

野生のドラゴンは気性が荒く、おいそれと人間が近づくことはできない。

本来群れを成さずに生活する彼らは警戒心が高く、住処を人里離れた深い山や谷に置くことから、その捕獲にすら命の危険を伴った。

春が近づくと、彼らは宙で舞う。

天高く舞い上がり、急激な方向転換を繰り返し、まるでその様は空気と戯れているかのように見える、

羽をしならせ、時折、聞いている者の心を切なくさせるような、長い長い鳴き声を響かせる。

雄がつがいを探して歌うのだ。

ドラゴンはその一生のうち、たった一匹の相手としか子を成さない。

例えば人間が、生涯の相手を決めてしまった雄のドラゴンに別の雌をあてがっても、彼らは決して相容れなかった。

それどころか、お互いに威嚇しあい、殺し合いをはじめることも珍しくないのだ。

その、生物としては致命的な繁殖本能の低さは、逆に人間には気高い生物として目に映る。

運良く、生涯の相手を探し当てることができたドラゴン達も、助け合いながら暮らすことはない。

子を成すと、二匹は何事もなかったかのように別れていく。

母は一人で子を育てる。

獲物を獲り、あやし、共に空を飛んで遊び相手をし、夜になると母が子を抱きしめるようにその身の中に抱えて眠る。

我が子に危険が近づけば、例えその首を切り落とされてでも、相手に向かって行こうとするとまことしやかに噂されるほどの、その献身的な子育ては、人にとっても温かい感情をわき起こさせるには十分なものだった。

やがて、二年ほどの時が過ぎて子が成長すると、母は長く、細く、鳴き声を上げる。

それを合図にするかのように、子は巣から去っていく。

彼らは、また一人になる。

しかし、子育てを終えるその頃、再び遠くから、長く、長く、鳴き声が響くのだ。

生涯を誓った相手が、その声を僅かでも遠くに響かせ、どうか声が届くようにと祈るように、限界まで天に昇って歌っている。

その声に雌のドラゴンは、遠く離れた相手のもとへ、決して音など届くはずがないはずの相手のもとへ、迷うことなく、一時も地上に降り立たずに飛んでいく。

雄は、鳴き続ける。

無事に子育てを終えてくれた相手を、短い時間しか生きられない自分の生涯で、数回しか会うことができない相手を、呼び続ける。

そうして再び巡りあった彼らは、二匹で宙を舞う。

重なるように、時に交差し、時に離れ、無事に出会えた喜びに、打ち震えるようにして。

そうして、彼らはまた子を成す。

ドラゴンとは、そういう生き物であった。



騎龍として用いられるドラゴンは、人の手によって育てられる。

フローラのドラゴンも山や谷などではなく、人の手によって建てられた小屋の中で生まれた。

小さい頃からフローラの姿を見せ、会わせ、共に食事させ、本来一匹で生きていくはずの本能を狂わせる。

人よりも遥かに成長の早いドラゴンは、やがて、共に生きる人間の子供を、抱いて眠るようになる。

子だと、思うようになるのだと、人はいう。

一度自分の相手を決めたドラゴンは、例え一時離れたとしても決してその相手を忘れることはない。

生涯の伴侶だと、思うようになるのだと、人はいう。


だからドラゴンは、命を賭してでも主を守る。


例え相手が、同じドラゴンであったとしても。


それが、自分の産みの親であっても、彼らが戸惑うことは、一瞬たりともない。






フローラは自身の内面に湧き上がる激しい怒りの感情に突き動かされていた。

キャロルの偽装のあとに後ろ髪を引かれる思いではあったが、神頼みのつもりで向かった痕跡の感じられない低木の茂みにあたりをつけて、全力でドラゴンをかってきた。

時折森の隙間から覗く何かが通ったような不自然な痕跡に目を奪われながらも、川べりに残されていた偽装に騙されかけた経験がフローラの追撃を可能にしていた。

必死になって聖騎士団をまこうとしたキャロルもまた、冷静ではなかったのだろう。

偽装を施すだけの経験と技術を持っていたキャロルは、そればかりに必死になっていたのかもしれない。

偽装の空白を縫うようにして飛んできたフローラは、今、キャロルと、それに背負われて何故か佇み逃げようとしない二人の姿を目に止めていた。

「ヨーン!」

フローラの年老いたドラゴンが、主の意思を汲み取って急激にその高度を下げる。

ヨーンの風圧に押され、木々の葉が激しい音を立てて揺れる。

地面に接触すると思われた瞬間に一気に翼をはためかせ、強烈な風を巻き起こして周辺の枯葉を全て吹き飛ばしながら、殆ど音も立てずにその足を地面へと着地させる。

「キャロルッ!!!!!!!!!!」

フローラが叫ぶ。

主の敵を認識し、ヨーンも低く唸り声を上げる。

やっと追い詰めたキャロルは、しかし、フローラの方を見ようともせずに、背中に抱える天使の事を見つめていた。

「キャロルッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

もう一度、フローラが叫ぶ。

今度は、腰に下げた剣を引き抜き、ドラゴンの背中から地面に飛び降りながら。

「やぁ、フローラ」

本来であれば圧倒的なドラゴンと、既に相手への警戒心を極限まで高めて、もう奇策など幸を奏さないであろうフローラの姿を前にして、普通であれば人は冷静など保つことはできなかっただろう。

今その存在に気づいたとでも言うかのように、フローラへと顔を向けたキャロルは、恐怖など微塵も顔に浮かべていなかった。

その不気味な雰囲気を身にまとうたかが放浪者の雰囲気に、フローラは一瞬たじろぐ。

しかし

「キャロル!!!!!!!剣を抜け!!!!!!!」

フローラは戸惑いを振り切る。

自分たちが信じて祈り続けた天使の姿が、今目の前にある。

それを追った騎士団の仲間を傷つけた相手が、今目の前にいる。

例えここでキャロルが天使の事を諦めたとしても、和解などできるはずもない。

「剣なんて、ないよ」

キャロルは苦笑する。

「さっき投げてしまった槍で、全部だ」

ギリッ、とフローラは歯噛みする。

なぜ、この女はこんなにも落ち着いているのだ。

上から見下ろされているかのような錯覚と、それに伴う屈辱がフローラの内側に沸き起こる。

フローラは、怒りに身を震わせながらも、キャロルに背中を見せ、ドラゴンの背中にくくりつけてある麻袋へと手を伸ばし、その中に入っていた予備の剣を取り出して無造作にキャロルの足元へと投げつけた。

「取れ!」

キャロルがようやく、僅かに驚いたような表情を顔に浮かべた。

「丸腰の相手を斬るような趣味は無い!!早くしろっ!!!!」

自分の使命や、仲間の屈辱を晴らすためだけならば、フローラのとった行動は愚の骨頂であった。

折角自ら戦闘力をかなぐり捨て、それでも逃げ出そうとした相手をようやく追い詰め、相手の反応がどういったものであろうと、フローラは勝ったのだ。

相手の偽装にもだまされず、的確にその後を追い、目の前に正対した時点で、フローラは完全にキャロルを圧倒していた。

有無を言わさずに、相手を切り捨てても誰も彼女を批判などしなかったであろう。

しかしフローラは高貴だった。

騎士として生まれ、騎士として育ってきた彼女は、正騎士団の中においても類まれなるほどに、正々堂々と生きることを信条としていた。

だからこそ、ドラゴンの性質を利用し、姑息な罠を仕掛け、偽装に紛れて脱兎のごとく逃げ出した相手に激しい嫌悪感を感じもした。

フローラは、馬鹿みたいに正直だった。


「良いのか?」

キャロルが未だにその表情を驚きに染めながら、フローラに尋ねる。

「くどい!!!!」

フローラの全身から放たれる殺気に、ようやくキャロルが顔に真剣な表情を浮かべる。

「わかった、恩に着る」

恩などと、よくぞ言えたものだ。

キャロルは一旦後方へと下がり、背中に背負った天使を巨木の根元へと静かに下ろす。

泣いているのか・・・?

今更気づいたフローラであったが、先程から一言も発さない天使は、顔に手を当てたまま、俯くばかりであった。

それを見て、再びフローラは怒りを燃え上がらせる。

この女、天使に、何をした。

許せない。

例え神が許しても、コイツのことを許せない。

殺してやる。

正々堂々と。

正面から。

一瞬の走馬灯も巡らせない程に。

完膚無きまでに。

圧倒的に。

殺してやる。

叩き潰してやる。


許せない。


殺してやる。



キャロルが、静かな動作で剣を手に取る。

「借りるぞ」

鞘から、剣を引き抜く。

美しい刀身だった。

月が出ていれば、綺麗に輝いただろう。

冷たいはずの刀身は、キャロルの鼓動を受け、僅かに振動していた。


「ヨーン、何があっても手を出すな」

フローラが、振り返りもせずにドラゴンへそう告げると、ドラゴンは不安そうに喉を鳴らした。






場の空気が一変する。






音が消える。

二人の目線が交差する。

一瞬でも目を離せば、相手の行動の予測が遅れる。

自分の命が、刈り取られる。

剣を正眼に構えるフローラとは対照的に、キャロルは右手一本で剣を突き出すようにして構えをとる。

フローラが見たことのない、独特の構えだった。

どのような動きでもってフローラを殺しにかかるのか、咄嗟には判断がつかない。

しかし、フローラは迷わなかった。

相手がどう動くかではない、どう、自分のペースに持っていくか、自分の動きを押し付けるか、仮に相手の実力が自分を上回っていたとしても、殺し合いには絶対などない。

ましてや、一度きりなのだ、相手だって、こちらの動きなどわかるはずがない。

先に動く。

フローラが判断を下し、その足に全力を込める。

動き出す。

踏みしめられた地面が、僅かに音をあげようとした、その瞬間。





キャロルは既に、剣の切っ先をフローラの首、わずか数センチのところまで繰り出していた。




―――――――――ッ!!!!!!!!!!?




迷いなど、微塵もなかった。

ただただ、相手の息の根を止めるためだけに繰り出された、本当に、目にも止まらぬ速さの突きだった。

予備動作が見えなかった。

ひたすらに、嘘のような脚力でもってして、上半身の動きをほとんど出さずに体ごと突きを出してきたのだ。


―――――――――は・・・や・・・いっ!!



しかし、フローラも並大抵の動きではなかった。

すんでのところで体を僅かにひねり、体の中心を右へずらす。

それと同時に、フローラは剣を自分の体の左側へと全力で持ち上げた。


一瞬でキャロルの剣が首の皮を切り裂きながら、フローラの首があった空間を駆け抜ける。


しかし、キャロルはあらかじめ避けられることを予測でもしていたかのように、体の重心を変化させながら突きを繰り出していたのだった。


そのキャロルの体の動きに合わせて、刀身が力の方向を変化させる。


今度は、首を切り飛ばすための動きだった。


ギィイィイイイイイン!!!


派手な音をたてて、自分の首の横に刃と滑り込ませたフローラの剣とキャロルの剣が悲鳴を上げる。


フローラの動きに、キャロルは目を見開いた。


まさか、止められるとは思いもしなかった。


一瞬、本当に一瞬挙動を止めたキャロルに対し、フローラはその動きを止めなかった。


上に突き上げるように持っていた剣を、切っ先を自分の頭上へと傾け、持ち手を相手の方向へとスライドさせながらキャロルの剣を自分の刀身で滑らせる。


首を切り落とそうとしていたキャロルの力をそのまま受け流して、キャロルの重心を崩しにかかった。


体を沈め、相手の懐に入る。


そのまま、剣の柄の部分を相手の顎に向けて突き出そうと手に力を込める。







―――――――――届く








と思ったフローラの顎に、既にキャロルの左拳が突き刺さっていた。


フローラは何が起こったのかも理解できないままに、大きく仰け反った。


視界が一瞬で黒く反転しかけ、明滅した。


口の中に血の味が広がった。


あぁ、死んだな。


そう、言葉にすらならない感情が、一瞬でフローラの胸中に浮かんだ。


吹き上げられ、仰け反った上半身を必死に戻そうと力を込める。


緩んだ手の力を、再び込めなおす。


歯を食いしばる。


目だけでも、キャロルの動きに合わせようと、フローラはキャロルに視線を定めた。


キャロルは振り上げた拳の勢いを利用して崩れかけた体勢のバランスを取り戻し、そのまま、今度はその左手も剣の柄に添え、グルンッとフローラに背中を見せる。


体の回転についていけない剣が、まるでキャロルに巻き付くかのように見えた。


フワッと、キャロルの一本にまとめた髪が浮かび上がる。


一瞬にすら届かない、僅かな時間であるはずなのに。


まるで舞うように回転するキャロルのその姿は、フローラの目に鮮明に映った。


キャロルの視線と、フローラの視線が交錯する。


鋭くフローラを見据えるキャロルの目は、憎しみも、怒りも、躊躇も、何もなく。


ただひたすらに、透明だった。


時間が加速する。


浮かんだ髪が、フローラの首を切り落とすのには十分な力でもって握り直された剣が、キャロルに巻き付いたまま回転を始める。


時計回りに、キャロルの周りを、フローラの死が飛んでくる。


刀身がきらめく。


光を受けて。


一点だけが煌く。


赤く。


月など


出ていないはずなのに。


赤く煌く。


剣が迫る。


フローラは


目をつぶらなかった。


だって


剣が突き刺さるのは


自分の首などではないから


フローラは目を見張る


視界の隅から


茶色の


大きな





私の


ヨーンが


跳躍してくるのが


みえる


その瞳には


一点の迷いもない


やめて


お願い


その瞳には


一点の曇りもない


やめて


ヨーン


お願い


真っ赤に燃え上がり


真っ直ぐに


フローラを見つめている。


やめて



やめて


やめて


やめ―――――――――



刀身が煌く


一点だけ


赤く


ヨーンの


赤く


ヨーンが


ヨーンを





殺さないで







―――――――――やめて







剣がフローラの首に届く、その瞬間





飛び込んできた一匹の



年老いた龍の



頭蓋骨に


めり込んで







「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」










絶叫が響いた。



キャロルは剣から手を離していた。

首の骨を避け、大した抵抗もなく空間を切り抜けるはずだった。


予想外の衝撃に、完全に油断していた。


そのドラゴンは


頭蓋の半ばまで剣をめり込ませながらも


フローラを抱くようにして守っていた。


「・・・」


フローラの体は、飛び込んできた瞬間絶命したドラゴンの下敷きになり


フローラは、完全に焦点を失った目を、呆然と自分のドラゴンへ向けていた。



「よくも」


フローラが、声を搾り出す。


「よくも」


声は震え。


「よくも」


瞬きすらしない目からは、涙が川のように流れ出していた。


「ヨーンを、ヨーン、あぁ、ヨーン、なんで、よくも、あぁ、嘘でしょ、お願い、動いて、お願い、やめてよ、ヨーン、冗談でしょ、嘘だよ、ヨーン、ダメだよ、息をして、お願い、お願いよ、ヨーン、あぁ、やめて、お願い、お願い、息をして、動いて、駄目だよ、死んじゃダメだよ、死なないで、お願い、生きて、駄目だよ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ、死ぬなんて駄目だ、ヨーン、許さない、駄目だ、死ぬなんて許さない、ヨーン、嘘でしょ、ねぇ、息をして、息をしてよ、駄目だよ、まだ死んじゃダメだよ、お願い、動いて、助けられない、どいて、ヨーン、助けられない、止血を、血を、止めなきゃ、死んじゃうよ、ヨーン、ダメだよ、駄目だ、ヨーン、動いて、助けなきゃ、ヨーンを、お願い、お願い、お願いします」


―――――――――神様


―――――――――天使様


「助けて」


「ヨーンを」


「お願いします」


「お願いします」


「私が代わりに死んでもいいから」


「お願いします」


「ヨーンを」


「ヨーンを」


「お願いします」


「天使様」


「ヨーンを」


「助けてやってください」


「ヨーンは」


「私の」


「全てなんです」


「ずっと一緒に」


「生きてきたんです」


「無理です」


「ヨーンが死んだら」


「ヨーンが死ぬなんて」


「私」


「まだ」


「心の準備なんて」


「してきたつもりだったのに」


「無理だよ」


「こんな」


「無理なんです」


「私を」


「守って逝くなんて」


「無理なんです」


「ヨーン」


「息を」



「してよ」



「~~っ、息をっ!!!!!!してよっ!!!!!!!!!!!!!!!」











ベルは、悲鳴を上げる。


目の前で、絶叫し、絶望し、自分にすがろうとするものの存在を認め、悲鳴を上げる。


やめてくれと。


頼むから。


許してくれと。


救うことなど、できるはずがない。


あなたが、その龍の死を受け止められないのと同じように。


私も、あなたの願いを受け止められない。


もう、その龍は死んでいるから。


なかったことになんて。


私にはできない。


誰も、救えない。


まただ。


また、見てるだけだった。


何回繰り返せば。


気が済むのだ。


何回、罪を感じれば許されるのだ。


私は


救えなどしない


「ベル」


私は


「大丈夫だったか」


その人は


私の事を、当たり前にそこらにいる人のように


「行こう、まだ、安全じゃない」


心配して


悲しそうな顔をして


「他の騎士が来る」


ドラゴンとフローラさんから目を離せないでいるのに


「こんなのが、あと3人もいるんだ、戦ったら、もう無事じゃすまない」


そう呟いた。


でも



その人が


辛そうに、泣き叫んで私を呼ぶフローラさんから目線を切って


後ろを向いた瞬間だった









ドラゴンが、動いた









一瞬のことだった


なぜ動けたのかなんて、わからない


わかろうともしない


私は、いつも、ただ見ているだけの存在だから。


私の視界の隅で、茶色の大きなドラゴンが一瞬揺れたように見えた。


次の瞬間には、頭蓋を陥没させながら


そのドラゴンは無茶苦茶な姿勢で跳躍して


その人の背中めがけて体当たりをしていた


その人は、物音に気付いて、瞬間的に避けようとしていたけど


大きなドラゴンは


それすらも巻き込んで、一緒になって吹き飛んでいく


そのまま


大きな音を立てて木に、押しつぶすようにしてその人ごと衝突し









何も、動くものがいなくなった


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