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第3幕4部後編  アメイジング・グレイス

謁見の間には、グリッツ全土から緊急に馳せ参じた騎士、将校、指揮官、大将校、右将軍、左将軍、大将軍、総勢約6500名が集められていた。

彼らは皆等しく個人のドラゴンを所有するドラゴンライダーたちである。


突撃歩兵、弓兵、槍兵、工兵、救護兵、支援兵、並びに、ドラゴンライダーと違い馬を用いる馬兵と呼ばれる一般兵達は、半端物として謁見の間に足を踏み入れることは許されておらず、グリッツの現役総兵士数の100分の1にも満たない者たちのみが、今この場に規律正しく列をなしていた。


ダラスの王国軍と違い、その場には、僅かではあるものの女性の姿も見られる。

そのいずれもが男勝りの豪傑として知られるものや、脈々とグリッツの重要な役職を務めてきた名家の出身の者たちであった。

男も女も含め、そこにいる全ての者は様々な家紋の刻まれた鎖帷子を基本とした鎧に身を包み、これもまた壮麗な細工の施された剣を帯刀するとともに盾を身につけている。

グリッツ帝国においてはダラス王国と比較するのが馬鹿らしくなるほどに女性の社会進出が認められており、身を寄せ合って何事か小声で囁き合う彼らの間には性差による偏見は見て取れなかった。

今でこそ男性の帝王が即位しているものの、その権限は地に落ちたも等しく、むしろ女帝の時代においてこそ帝王が最も輝いた経歴を持つグリッツの歴史が、そのような認識をグリッツの国民にもたらしていたといっても過言ではないだろう。


一つ一つの話し声はひそひそと小さなものではあったが、これほどの大人数を部屋の限界まで詰め込んだ空間は、そのざわめきが大きな波のようになって満たされていた。

誰かが身動ぎすると響く鎧の金属が擦れる音が、そこかしこで旋律を奏でるようにして鳴る。

そこにいる誰もが、数日前から流れていた不確かな噂の原因を一目見たいという想いに少なからずの興奮を覚えていた。


しかし、そのざわめきも玉座の真横に位置する扉が開かれた瞬間に一瞬で静まり返る。

それまでの雑音が全て消える。

誰もが息を飲んだ気配に、その部屋の中の息遣いまでもが失われたような静寂が空間を支配した。

扉の軋む音がいやに大きく響く。

やがて開ききった扉の先にいる人物を一同が目に瞬間、僅かに人々の中に頭を垂れる音が波のように広がった。

その人物はその場に会するドラゴンライダー達に静かに頷くと、ゆっくりと歩みを進める。

グリッツ帝国、現帝王、フラウド24世。

欺瞞王と揶揄されるその初老の男は玉座の前にたどり着くと、謁見の間を埋め尽くす騎士たちを見回してからゆっくりと腰を下ろす。

それを受けて王の側に従っていた近衛騎士達が僅かに距離をとり、ほぼ時を同じくして先ほどの扉からもうひとりの人物が姿を現した。

ストラティ大司祭。

グリッツ帝国の実質的な最高権力者だった。

ストラティ大司祭は後方に12人の司祭を従え、悠然と歩く。

その先頭にはフローラの直属の上司であるフルヴォン司祭の姿が認められた。

王に付き従って登場するでもなく、むしろ王を前座としてでも扱うかのようなその態度に、謁見の間に集まる騎士たちの反応も様々であった。

王に対する以上に深々と頭をたれる者、それとは逆に憮然とした表情で立ち尽くしながら鋭い眼光を向ける者。

ついこの間まではフローラも深々と頭をたれる者たちの側に属していたのだが、その時のフローラは謁見の間の後方でなんとも言い難い表情を浮かべながらその光景を見つめていた。

天使であるベルを利用しようとする最有力者。

司祭たちの協議では公開かそれとも非公開かで意見がほぼ二分されていたにもかかわらず、結局のところストラティ大司祭の鶴の一声で公開が決定されてしまったという。

フローラにとってその胸中を測り知ることなど出来はしないが、少なくともその行動方針に対して今のフローラは、全くと言っていいほど賛成ができなかった。


ストラティ大司祭をはじめとする13人の権力者達は王の御前に横一列に広がってその足を止める。

ただ、その顔が向くのはフローラ達騎士の一団に対してであって王の方向を向いてはいなかった。

王に対して礼をするでもなく、不躾にもその背中をむけて立ち続ける彼らの行いは礼を失するどころの話ではなかったが、しかし王はその事に対して何も思うところがないのかただ呆然と視線を虚空に漂わせていた。


「よくお集まりいただいた」


ストラティ大司祭の低く太い声が広間に響く。


「緊急のことにもかかわらず、教会の呼びかけに対して貴君らが一も二もなくこうして馳せ参じてくれるその信仰心の高さに、きっと我らの主もお喜びになっておられる」


お決まりの挨拶だとは分かっていても、馬鹿らしい。

数日前の自分では思いもつかなかったような考えがフローラの頭の中に浮かぶ。

何かのできごとによってこれほどに価値観が変わるのかと、自分のことながら少々の驚きを感じずにはいられなかった。


「グリッツが建国してからというもの、我々は長きに渡り聖ヴェルゲールの教えを広め、人々に安寧をもたらすために祈りを捧げ続けてきた。信仰を持って神のもとへと進もうとする我々の道のりは決して楽なものではなく、主の祝福すら届かなくなるほどの困難に見舞われ、道を見失いそうになることすらあった。しかし、今我々はこうして多くの祝福されし者たちと共に大地に足をつけ、人々の幸せのために日々尽くし、喜びを分かち合いながら生きることができている。それもひとえに、日頃からの貴君等の献身的な働きがあってこそだ。この場で教会を代表して貴君らに、改めて感謝申し上げる」


ストラティ大司祭がそういうと、12人の司祭たちが一様に頭を下げる。

騎士たちはそれを受けて、その全ての者たちが余すところなく膝を地について敬礼を行う。

ストラティ大司祭への様々な思いはあるものの、ここにいる全ての騎士たちは12人の司祭の内の誰かの傘下に入っている。

大小の差はあれど、グリッツに対して最も影響力のある者たちからの礼に立ち尽くすわけにもいかなかった。


「今日という祝福されし日に貴君らに集まって頂いたのはほかでもない、深い信仰心をもって祈りを続ける貴君等への、聖ヴェルゲールからの御意志を伝えるためだ」


謁見の間の騎士達がどよめく。

大司祭といえど、神の代弁者を語ることはグリッツでは慣例的に行われたことはない。

あくまでも聖ヴェルゲール信奉者の最高指導者としての立場を貫いてきた教会の発言としては、些か異例に思われるストラティ大司祭の言葉であった。

あくまでも人は人であり、神は神である。

だからこそ、祈りによってのみ救われ、力や権力、豊かさでは神に近づくことはできないとして教会は教えを説いてきたのだ。

曲解してしまえば、神の意志を伝えるということは、ストラティ大司祭が人と一線を画したという発言にとることもできた。


「昨今のダラスの態度には目の余るところがある。皆平等であるはずの人に性差による不幸を強要し、あろうことかそれを聖ヴェルゲールの意思でもあるかのように説いていることは貴君等もよく知るところだろう。我々は常々そんな間違った教えに対して異を唱え、反発をし、彼らが正しい認識をもつように説得を繰り返してきた。しかしどうだ。彼らは我々に賛同して正しい方向に進もうとするどころか、ますますその態度を硬化させ、今も守るべき民を苦しめ、神の教えを捻じ曲げ、その存在を侮辱することをやめようとしない」


広間にストラティ大司祭の言葉に同調する声があがる。

女性の騎士の一部や、その騎士とつながりの強い者達からのようだった。

それを聞いて、フローラは広間の気温が少し上がったような感覚を感じた。


「我々は再三にわたってダラスへの警告を続けてきた。貴国のとる政策は聖ヴェルゲールの御意志に背いている、と。ダラスの民の中にも我々の教えに共感するものがおり、毎年多くの民が我らの国へと逃れてくる有様だ。いかにダラスが謝った道を進んでいるかがわかるだろう」


広間の熱が徐々に増していく。

目の前に具体的な敵の存在を認め、自分たちこそが正義であると信じる騎士たちの思いは一様であった。


「そして、今、ついに聖ヴェルゲールはその意志を我々に示してくださった」


ストラティ大司祭の言葉に力が入る。


「我々の元に、天使を遣わしてくださったのだ」


閉じられていた扉が再び静かに開き始める。

ざわつき始めていた騎士達の間に静寂が波を打つようにして広がった。


「御使い、ベル・デル様である」


扉が開く。

騎士達が、息を飲む。

闇に覆われた夜であるはずなのに、そこからは光が漏れ出すような錯覚に陥る。

姿を現したのは、純白のシルクのローブを身にまとい、ヴェールで顔の半分を覆い隠したベルだった。

騎士たちの間から感嘆の声がもれる。

ベルは静かに一歩を踏み出す。

そこにいる全ての者は皆一様にその所作に目を奪われた。

白く輝く長い頭髪は、重力を無視するかのように歩くたびに美しく揺れる。

時折僅かに除くその瞳のまつ毛さえ白く、この世のものとは思えない美貌を覗うことができた。

うつむき加減なこともあって、その背丈は10代も半ばの少女のように映る。

その表情はどこか儚げで、人智を越えた神々しさを湛えていた。

そして、その背中にはローブの白さえ霞ませるほどの純白の翼が輝きを放つようにして揺れていた。


ベルは数人の騎士に伴われてストラティ大司祭の横にまでくると、そこで立ち止まって騎士たちの方へと向き直る。

その瞬間、広間に集まった騎士たちは一斉に深く頭をたれた。

何人もの騎士が、涙を流していた。


「改めて貴君等にご紹介しよう。我らの信仰に対する聖ヴェルゲールの御意志、天の御使い、ベル・デル様だ」


そう、ストラティ大司祭に紹介されたベルは俯きがちだった顔を一層下へと向ける。

フローラのいる位置からは、既にその表情が覗い知れなくなるほどだった。


「・・・」


フローラはベルの胸中に思いを馳せる。

今、何を思っているのだろうか。

周りに不審がられないように頭を垂れるフリをしながらベルの姿を視線のうちに収める。

ベルは、ベルクフリートの中でも人目に晒されることに対して何も語らなかった。

意志を伝えることで起きるかもしれない混乱を恐れているのか、それとも唯々諾々と流され、判断する冷静さを欠いているのか、諦めてしまっているのか。

ここ数日で、ベルの内面が自分の思い描いていたような天使像とは大きくかけ離れていることに気がついていたフローラではあったが、だからこそ、普通の人と接する時と同じようにベルの思いを簡単には想像することができなかった。


「ベル・デル様はダラスではなく、このグリッツに降臨なさった。貴君等なら、聖ヴェルゲールがどのような御意志でもってベル・デル様をお遣いなされたかすぐにわかるだろう」


謁見の間の騎士達が顔をあげ、ベルに視線を集中させる。

ベルは相変わらず静かに俯くばかりであった。


「我々グリッツの教えこそが聖ヴェルゲールの御意志に沿うものであり、ダラスのそれが異端以外の何物でもないということを、聖ヴェルゲールはおっしゃっている」


予想外に直接的なその言葉に、フローラの心拍数が一気に跳ね上がるのを感じた。


「聖ヴェルゲールは我々にダラスの過ちを正すよう申し付けられたのだ」


覚悟はしていたが、もう取り返しのつかないところまできてしまった実感がフローラの胸中を満たした。


「我々は、グリッツ国教会は、ダラスの聖教会に対して戦いを挑まなければならない」


自分が、この事態を招いたのだ。

ベルのせいでも、キャロルのせいでもない。


「間違った教えを排斥し、それに苦しむ人々を救い出さなければならない」


考えなしにベルを我が物にしようとした、自分が悪いのだ。


「グリッツの聖騎士たちよ、力を貸して欲しい」


再び、広間の熱が上がる。


「立ち上がる時がきたのだ。ベル・デル様のもとへ集い、その心を、一層団結させなければならない」


騎士達が立ち上がり、次々に抜刀する。


「我々は」


もうすぐ、人が、たくさん死ぬ。


「今宵」


子供も、老人も関係なく。


「ダラスに、宣戦を布告する」


人が死ぬ。


「聖戦だ」




広間が割れんばかりの雄叫びがあがる。

あまりの音量に、空気までもがビリビリと振動した。










その時










ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!








と、何かが派手な音を立てて爆発する音が、その広間の歓声を塗りつぶした。

広間から離れた場所で起きたらしいその爆発の凄まじさはここからでは詳しくはわからなかったが、爆発とほぼ同時に吹き飛んだ窓ガラスがその下にいた騎士たちに次々と突き刺さって悲鳴を上げさせる様をみれば、その規模の大きさは測り知ることができた。


爆発の振動と咄嗟に動いた騎士同士の衝突により、多くの者が転倒する。

騎士達が抜刀したタイミングを見計らったかのようにして爆発が起き、そこで転倒者が続出したこともあって少なくない騎士が負傷したようだった。


広間の中が、一瞬にして怒号と悲鳴に包まれた。


そこかしこで折り重なった騎士達がなんとか身を起こそうともがき、不用意に動かされた剣が体のどこかに突き刺さったらしい者が次々と叫び声をあげた。

何事だ!!!!

と誰かが叫ぶ。

龍舎の方だ!!!!

と、また別の誰かが叫ぶ。

壁際にいたことで将棋倒しからまぬがれていたフローラは、あまりの爆音に跳ね上がっていた心臓の音をその耳に聞きながらも、咄嗟にベルのいた方向へと目を向けた。


ベルも、驚いたためか、窓からの爆風にでも晒されたか、誰かに押し倒されたのか、床に転倒して手をついている姿がフローラの目に飛び込んでくる。

その周りの司祭たちにしても同様で、中には頭から血を流して叫び声を上げている者もいた。

フルヴォン司祭は、と慌てて目を移せば、耳を押さえ、苦しげに膝まづく姿が見える。

なんとか無事のようであった。


敵襲か!!?

と叫び声があがる。

それを聞いたフローラは、咄嗟に


「ドラゴン達が襲われている!!!!剣を持って向かえ!!!!侵入者を捕えろ!!!!」


と叫んでいた。


深く考えていた訳ではない。

ただ咄嗟に、ベルの周りから人を減らそうとしての行動だった。


フローラの言葉に周りの騎士達が飛び上がるようにして外へとつながる大扉に殺到する。

中にはそこでまた転倒し、将棋倒しに折り重なる者たちまで出た。

場は混乱を極めていた。


もしも、龍舎で爆発が起きていたら。


多くの騎士達が恐怖した。

グリッツ城の敷地内にある龍舎で普段から飼育されているドラゴンはそれほどの数に上るわけではない。

騎士たちの殆どは城へ常勤しているわけではなく、グリッツ帝国内の要塞や城に分散して配置されているのだ。

当然、彼らの騎龍は騎士たちと同様に分散されて飼育されており、主と共に暮らしている。

ただ、今夜に限っては訳が違った。

フローラが生まれて初めてと言えるほどの規模で、騎士達が一箇所に集結しているのだ。

当然のように膨大な数のドラゴンがグリッツ城へと馳せ参じ、龍舎の収容数を遥かに超えるドラゴンが仮設の囲いに綱でつながれているような有様だった。

そこで何かの爆発などが起きれば、大惨事は免れない。

運良く、爆発の規模がドラゴンの命を奪うほどのものでなかったとしても、混乱したドラゴンが同士討ちを始める可能性がある。

興奮したドラゴンたちが仲間の騎士を傷つける可能性だって少なくはない。


落ち着け、と叫ぶ上級騎士達の声が悲鳴や怒号でかき消される。

先陣を切って大扉を抜けた騎士達の間から、一際大きな悲鳴が響いた。


龍舎の方向から、目を見張るほどの黒煙が立ち上り、ドラゴン達の吠える声が謁見の間の外にまで聞こえてきていた。

明らかに何かに引火している。

最悪の事態だった。

龍舎が、何者かによって爆発されたのだ。


ダラスの手の者か?

情報が、漏れていたのか?

当たり前だ、ここまで大規模な集結であれば、情報が伝わらない訳が無い。

とにかく龍舎へ向かえ。

一匹でも多くのドラゴンを救え。

我らの友を救え。


様々な叫び声がそこかしこで上がる。

真っ青な顔をして、次々と騎士達が謁見の間から流れ出る。









そこへ








遥か上空から








籠が降ってきた。








一体何人の騎士が気づくことができたのか、籠には長いロープがくくりつけられており、落下にともなって翻るその先端は、まるでドラゴンのブレスにでも焼き切られたかのように真っ黒に焼け焦げていた。








ドンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!









一瞬にして、その場は地獄と化した。








空から降ってきた籠には、一体何が詰まっていたのか。とにかく、その籠は、半数近くが扉から流れ出はじめた騎士達のほぼ真ん中めがけて真っ直ぐに落下し、地面に着地すると同時に一気にあたりを真っ白な光で包み、人が到底反応することのできない僅かな瞬間の後に橙色の炎を周囲に撒き散らした。

炎だけで50人近い騎士が即死させられ、正確な数はわからないものの100名以上の騎士達が深刻な傷をおった。

ご丁寧にもかごの中には短い釘が満載されていたようで、爆風に撒き散らされた釘が所構わず降り注ぐ。

矢よりも速い速度で襲いかかる釘を意識的に防げる者などその場にいる訳もなく、爆発音と凄まじい爆風に一瞬硬直していた騎士達の多くに、何が起きたのか認識する暇すら与えずに次々とそれが突き刺さった。

謁見中という事が災いし、全ての騎士達が兜を着用していなかった。

顔に、目に、喉元に、鎧の僅かな隙間をぬって四肢の関節に、鎖帷子を貫いてまで、釘が襲いかかった。



今までと比較にならないほどの凄惨な悲鳴が響き渡る。


吹き飛ばされた腕や頭が、あたり一面に散らばっていた。


その場にいるほぼ全ての者が大きく混乱させられていた。


一体、何が起きたのだ。


つい先程まで、喜びと熱気に包まれていたはずの謁見の間は、阿鼻叫喚で埋め尽くされていた。


しかし多くの者が混乱するその場において、フローラは冷静だった。


冷静といっても、激しい動悸に襲われ、先ほどよりも間近で起きた爆音に耳鳴りがし、今度こそ爆風で転倒させられ、その肩口には、爆発がおきた方向とはほぼ反対側の部屋の位置にいたフローラにまで襲いかかった釘が刺さっていた。


運悪く、扉からほぼ直線上の位置にいたのだ。

壁や柱に遮られることなく、ここまで釘が届いてしまったようだった。

しかし、フローラの経験が生きた。

経験が、判断する余裕をフローラにもたらしていた。


あの時

あの森の中で

キャロルが用いた罠に酷似している。


爆発物と

それによる爆風を利用した二段構えの殺し

今回のものはその時とは比べ物にならないような大規模なものだったが、キャロルの匂いをその爆発の中に感じたフローラは自分でも不思議なほどに混乱をきたさなかった。


あの女が来た。

想像を遥かに超える規模でもって。

天使を攫いに来た。

仲間を殺されたというのに、フローラは不思議な高揚感を感じずにはいられなかった。

やはり、来たのだ。

騎士達の命など顧みず、ドラゴンの命さえ、自分の思い通りに騎士の動きを誘導する餌として使いながら。


ベル・デル様をお守りしろ!!!!!


と誰かが叫んだ。

その声にはじかれるようにして、肩に刺さった釘にも構わずにフローラはベルの元へと突進する。

抜刀はせず、数名の無事だった騎士とともに盾を掲げて、身を起こしかけていたベルを守るようにして防御体勢をとる。



その瞬間



今度は今までフローラがいた背後の壁が吹き飛んだ。



ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



水路が張り巡らされていた中庭に隣接する唯一の場所だった。



ベルを守る防御陣が完成するのを見計らったようにして起きた三度目の爆発が、その周辺で倒れたりうずくまったり、呆然と立ち尽くしていた騎士たちをバラバラに分解しながら吹き飛ばす。

恐ろしい速度で打ち出された壁の破片が部屋の中のいたるところに降り注ぎ、何人もの騎士の頭蓋を砕く。

部屋の中は凄まじい量の粉塵に一瞬で満たされた。

ベルに背を向け、自分とベルを覆い隠すようにして防御陣を組んでいた騎士達の盾が派手な音をたててへこまされた。

ガンっ!!!

と、フローラの盾も重い衝撃を受け、腕や肩の関節に凄まじい衝撃が走る。

あまりの痛みに瞬間的に盾を下げかけたフローラではあったが、うめき声を上げながら歯を食いしばってそれを耐える。

その時、フローラは自分の背中に何か暖かいものが触れる感覚を感じた。

鎧を通してなど伝わってくるはずもない、人肌のような暖かさに驚いて振り返ると、そこには顔を苦しそうに歪め、再び転倒させられながらも必死に自分の背に手を伸ばすベルの姿があった。

もう一つの手は、フローラの隣にいる騎士の背へと伸ばされている。

フローラは息を飲んだ。

ベルが手を伸ばす騎士の頭に、壁の破片が突き刺さっている。

即死だっただろう。

大仰な量の血がその傷口から流れ出し、ビクンビクンと体を痙攣させていた。

しかし、その傷口は淡く光り輝き、不自然なほどの速度でもって血が止まっていく。

その異変とほぼ同時に、フローラは自分の体にも異変を感じていた。

カンッ。

叫び声や壁が崩れる音が響き渡る広間の中で、その小さな音が異様にはっきりとフローラの耳に届く。

慌てて目を向ければ、先程まで自分の肩に突き刺さっていたであろう釘が地面に落ちていた。

再び、目を見開いたままベルを振り返る。

その頭髪や翼は淡く光り輝き、その光がベルの手を伝ってフローラの傷口をも発光させていた。


奇跡。


生まれて初めてそれを目の前にして、フローラは言葉を失った。

異様な速度で傷がふさがる感覚が広がり、体に力がみなぎるのを感じる。

目を向ければ、ベルが手を伸ばすもうひとりの騎士の傷口もほぼふさがりかけているようであった。


しかし、痙攣のとまったその騎士の体はゆっくりとベルの方向へと倒れ始める。

呆然とそれを見つめることしかできなかったフローラに対して、ベルは耳をつんざくような悲鳴を上げながら、騎士の背中に体当たりするようにしてそれを受け止めた。

みれば、ベルの周りを円を描くようにして守るほかの騎士たちも唖然としながらその光景を見つめていた。

完全に死んでいるであろう騎士をその両手で受け止めたベルの口から、フローラ達が理解できない言語が飛び出す。

悲鳴のように紡がれる言葉とともに、既に事切れたはずの騎士の体が再び発光し、バンッ!と地面から跳ね上がった。

ベルが必死にそれを抑えようとしながら、理解不能な言語で叫び続ける。

その表情は恐怖とも、悲しみともとれる様なもので真っ青になっており、両目からは盛大に涙を流していた。

そして、一際大きくベルが何事か叫び声をあげると、いよいよ目をくらますほどの光が一瞬で部屋の中を満たし、フローラは瞬間的に視力を奪われた。

フローラは見ることが叶わなかったが、その瞬間、死んだはずの兵士は一瞬、潰されずに残っていた片方の目をグルン、と動かした。

その目には明らかに命あるものの意思が感じられ、何かに焦点を合わせたように見えた。



しかし



僅かな後に視力を取り戻したフローラの目に飛び込んできたのは、とめどない涙をながし続けて呆然としながら両手を虚空に差し出したままのベルと、中身の無い鎧、そしてその両手の間からサラサラと流れ落ちる真っ白な灰のみであった。

ベルの両手は、今まで騎士を支えていたままの形になって動くことをしない。

何が起きたのか、フローラの理解を超えていた。

ほかの騎士たちも完全にその動きをとめ、目を見張ってベルの事を見つめている。

ガラン、と、消え去った騎士が手にしていた盾が音を立てる。

再び、ベルが絶叫した。


その瞬間、フローラは無理やりベルの腕を掴んで立ち上がった。

何事かと驚く騎士たちに向かって叫ぶ。


「ベル様を、主塔へ!!!!」


城の中で、最も堅牢な塔へ、天使を。


その声に弾かれるようにして、フローラの周りを囲んでいた騎士達が一斉に立ち上がる。

それを見たフローラは、ベルと同様に騎士たちに囲まれる司祭たちや王を尻目に、主塔のある方向へと続く扉に向かって疾走を始めた。

五人の騎士がフローラと、それに引きずられるようにして走るベルに追随する。

未だ粉塵の立ち込める謁見の間は視界が悪く、気をつけなければ床に倒れふす騎士につまずいて転倒してしまいそうだった。

派手な音を立てながらフローラがドアを蹴り開ける。

そこでまた、フローラは目を見張って一瞬立ち尽くす。

城内のそこかしこで、火の手が上がっていた。


爆発物以外にも、何かが仕掛けられていたのだ。

もしもこれがキャロルによる仕業なのだとしたら、驚嘆に値する。

協力者がいるのかどうかなど定かではないが、あの女はほぼ一人でグリッツの主力を相手取って、今は完全に流れをもっていってしまっている。

人間業とは到底思えなかった。

今グリッツ城にいる全ての人間が、このわけのわからない状況がひとりの女によってもたらされているなど想像すらしないだろう。



一般兵達が鎮火のために走り回り、叫び声がそこら中から上がっている。

我に返ったフローラはそれには目もくれず、主塔に向かって疾走を再開しようとした。


しかし、ガクン、という衝撃を手に感じ、何事かと振り返ったフローラの目に飛び込んできたのは、意識を失ったらしいベルがゆっくりと地面に接触しようとしている光景だった。

フローラは慌ててベルを抱きとめる。

「ベル様!!!!?ベル様!!!!!」

両手でしっかりと押さえながら必死にベルの名を呼んだが、全く反応がなかった。

周りの騎士たちに動揺が広がるのを感じた。

「私の背に!!」

フローラがそう叫んでかがみ込もうとすると、ひとりの騎士が慌てて駆け寄ってベルを支え、フローラの背へとベルの体を慎重に下ろした。

「後ろから支えろ!!」

その騎士にそう言い放ち、勢いよく立ち上がると、フローラはもう一度走り始める。

すぐ背後に騎士が追いすがり、意識を失ってずり落ちそうになるベルの背中を必死に支えようとする気配が伝わってきていた。


城内は、まるで地獄のようだった。

火の明かりによって橙色に照らされ、バキバキと嫌な音を立てながら何かが崩れる音が聞こえてくる。

フローラ達の向かう主塔への続く道が火に邪魔されずに無事であることが信じられないほどの惨状が、疾走するフローラ達の周りを埋め尽くしていた。


走りながらも、フローラは周囲へと視線を目まぐるしく飛ばす。

炎は直線的に、並行するようにして燃え上がっている。

一体どのような手段で撒かれたのか分からないが、明らかに何か可燃性の液体を、導火線の役割を兼ねさせながら引火させたように思えた。


主塔を目指して走る自分の目の前ばかりが開けている。


明らかに、主塔へと誘導しようとする何者かの意志を感じた。


何のために、誰を、どのようにして。


分かりきったことだった。


やがて、いくつもの建物の脇を駆け抜けたフローラの目に主塔が飛び込んでくる。

城内のほかの建物と違って、不気味なほどに静けさを湛えたその塔を目にした騎士たちから安堵の声がもれる。

フローラの予想通り、その主塔ははしごすらしっかりとかけられたままになっており、一見して何も異常が起こっていないように思えた。


「三人外にのこれ!!二人ついてこい!!」


フローラの怒鳴るような指示に、咄嗟に三人の騎士が塔の周囲を囲むようにして散開する。

反応も見ずにはしごに手をかけたフローラに、慌てて二人の騎士が追いついて、その内のひとりが後ろからベルを支えようとする。

背中からだらりと自分の胸の前に垂れ下がったベルの片腕を片手でしっかりと握り、もう片方の手のみを使ってフローラが器用にはしごを登り始める。

はしごを登りきったフローラが頭を扉に打ち付けると、余りにも都合よく僅かに開いていた扉は苦もなく玄関部分をあらわにする。

火がともされていない室内は暗く、全くと言っていいほど視認がきかなかった。


「ベル様から入るぞ!!!二人も続け!!!」


冷静であれば、不自然に聞こえるような内容を叫びながら、はしごを駆け上がったフローラが室内へと飛び込む。

しかし、冷静な判断力などとうに失い、意志をもって動くフローラにほぼ無条件に従って行動していた二人の騎士は、その不自然さに気がつくこともなく、フローラのあとに続いて、ひとりずつ、その玄関口に飛び込んでいった。


音はしなかった。


何が起きたか、判断するような時間はなかった。


痛みすら、なかったはずだ。


二人目が飛び込むのと同時に、二人の騎士の首が胴体から飛んだ。


ゴトンッ、と音を立てて首が床に落ち、それを追うようにして二つの胴体が地面に転がり込む。

派手な音を立てたが、主塔の外にまで響くようなものではないはずだ。

扉から中に駆け込み、咄嗟に反対側の壁まで飛びついてベルを器用に床に下ろし、抜刀していたフローラは、その音を聞きながらぜえぜえと肩で息をして静止していた。


死んだ騎士達と、入れ替わるようにして、二人の人影がそこに立っていた。


片方は髪を一つにまとめており短槍を手にしているのが見える。

もう片方は異様な長さの太刀と思われる獲物をもって、その切っ先をフローラの方へと向けていた。


短槍を手にしていた方が動いてドアを音を立てずにしめる。

部屋の中が、ほぼ完全に暗闇に閉ざされた。


「また会ったね」


ドアを後ろ手に、キャロルが言葉を発する。

それを聞きながら、フローラはフンと鼻を鳴らした。


「二人か?大したもんだ。お前、悪魔かなにかなのか?」


僅かにキャロルの笑う気配が伝わってくる。


「これだけ殺してりゃ、そうかもしれないね」


そこで大太刀を手にした人物が口を開いた。


「おい、こいつはどうすんだ?」


その切っ先は相変わらず、油断なくフローラの方を向いている。


「殺しちゃだめだ、どうやら、協力してくれているらしい」


そうキャロルが言うと、どうやら男らしいその人物が「はぁ?」と声を上げた。

キャロルが男から再びフローラの方へと顔を向ける気配が伝わってくる。


「私だって、気づいてたのかい?」


フローラは暗闇の中で器用に剣をさやへと納めながら、見えるはずもないだろうが盛大に顔をしかめて見せた。

不愉快だった。

ベルと二人で塔の中に逃げ込むのは不自然だろうと考え、もしもキャロルが一人であった場合を危惧して、二人に限定して騎士を中へと誘導した。

一人はキャロルに始末させ、もうひとりは自分が切り殺すつもりだった。

どうやら取り越し苦労だったらしい。

キャロルだと気づいたのは、爆発したかごから飛び出た釘が次々と周りの騎士たちに突き刺さる時だ。

ひとりが龍舎を爆発させ、もうひとりが謁見の間の壁を吹き飛ばしたのだろう。

混乱する城内を炎と物陰に隠れながら主塔へと先回りして合流し、フローラ達を待ち構えていたに違いない。

成功する確率が低いばかりか、ヘタをすればベルを巻き込んでしまうことすらある。

それに加え、ベルを主塔へ逃がそうとする誘導がうまくいく可能性だって低いのだ。

とんだ博打だった。

恐らくはしごを登りきる前に叫んでいなかったらフローラ自身も首を跳ね飛ばされていただろうが、それをおいてもベルまで巻き込む事を承知で策を実行したこの女のことを、殴りつけてやりたかった。


「どうだって良い。それより、無駄な話しなんかしている場合なのか?」


男が大太刀を下げる。


「大丈夫だよ、もうすぐ、シオンが来る」


「・・・シオン?」


フローラが聞き返してもそれに応えることはせず、キャロルは暗闇の中で目が見えているかのようにフローラの方向へと近づいてくる。

一瞬緊張で体をこわばらせたフローラだったが、しかしキャロルはその横をすり抜け、床に下ろされていたベルの横へ膝をついた。


「迎えにきたよ」


ベルの頭を、撫でているようだった。


「・・・」


その時、主塔の周りに散開していたはずの騎士達の叫び声がフローラの耳に届いた。

それとほぼ同時に、主塔の上の方から凄まじい衝撃がつたわってフローラの足元を揺らし、何かが主塔の屋根の部分に衝突するような派手な音が響き渡った。


「なに!?」


驚きの声を上げるフローラに、キャロルが答える。


「シオンだ、来てくれた」


そう言いながらベルを背中に担ぎ上げ、キャロルは上へと続くはしごを登り始めた。


「ちょっと待ちなさい!どういうことなの!?」


「来りゃわかるよ」


キャロルの代わりに男が答え、その男もキャロルのあとを追ってはしごを登り始める。

それを見てフローラは慌てて塔の入口に内側からかんぬきをかけ、慌てて自分もはしごを登った。

はしごを登りきると既に4階へと続く螺旋階段をキャロル達が登っていく足元が見える。

いくら小柄とはいえ、人ひとりを背負っているとは思えないような速度だった。

フローラも螺旋階段を駆け上がる。


4階部分を抜け、見張り台にもなっている天井部分へと足を踏み入れるフローラは、その光景をみて目を見張った。


見たこともないような、真っ青なドラゴンが天井部分を突き破って床に着地し、その身をかがめていた。


「どう、して・・・?」


フローラはつぶやくようにして声を搾り出す。

そのドラゴンに、ベルを抱えたままよじ登ろうとしていたキャロルが動きを止めた。


「お前の、ドラゴンなの・・・?」


キャロルが肩ごしにフローラを振り返る。


男は押し黙ったまま、その蒼龍の後方の鞍へとまたがった。


ドラゴンが、二人もの人間を同時に乗せることが可能なのか?


主以外にそれをさせようとしない、ドラゴンに。


しかし、フローラが愕然としたのはそんなことに対してではなかった。


話には聞いていた。


キャロルが、ドラゴンに騎乗していたと。


でも、実際に目にした時に、思いもかけず頭に浮かんでしまったのだ。


キャロルが、ヨーンを殺した瞬間の光景が。






「お前は、ヨーンを、殺したのに、ドラゴンを、手に、入れたの?」






何が、したいのだろう。


早く天使を逃がさなければならないのに、わけのわからない感情が自分の中に浮かび上がるのをフローラは感じていた。

体色も、顔つきも、大きさも、全く違う蒼龍を目の前にして、何故か、ヨーンの事が思い出されてしまった。





今すぐに


キャロルを殺したいと思った。





フローラが近づいても全くといっていいほど反応を見せなかった蒼竜が唸り声をあげる。

ドラゴンに異変を感じられてしまうほどに、今の自分の体からは殺気が立ち上っているのかと、フローラはどこか遠くから自分を見つめているような錯覚に捕らわれた。

気づいたときには、抜刀し、キャロルの首筋へその切っ先を突きつけていた。

ドラゴンは唸るものの、動こうとはしない。男も同様に、静かにフローラとキャロルを見つめるばかりであった。




「違うよ」


キャロルが口を開く。


「・・・」


「私のドラゴンじゃ、ない」


「・・・」


「でも、フローラ」


「・・・」


「あんたが私を殺したいのはよくわかったから」


「・・・」


「許してくれとは言わないから」


「・・・」


「今だけは、ベルのために見逃してくれないか」


「・・・」


「必ず、あんたのところへ戻るから」


「・・・」


「お願いだ」


「・・・」


「フローラ」



フローラは







右手で剣を振りかぶって








一気に













自分の左手を切り落とした。








キャロルが目を見張る。


男も同様に驚いたようだったが、一方のフローラは殆ど表情を動かさなかった。


そのままフローラは、再び剣を振るってキャロルが腰にくくりつけていた短槍の刀身を跳ね飛ばした。

ギンッ!!

と音がなって、フローラの剣が刃こぼれを起こす。


「いけ」


フローラが言う。


「フローラ、あんた」


「良いから行け、これぐらいしなきゃ、私が疑われるだろ」


「フローラ」


フローラの手首からは、心臓の拍動に合わせて血が吹き出す。

表情こそ固いままだったが、見る見るうちにフローラの顔色が青ざめていく様子がキャロルには手に取るように見えた。


「恩に着る・・・二度目だ」


そう言ってキャロルはフローラに頭をさげ、しかしすぐに蒼龍の方へと向き直ってその背に飛び乗った。


蒼竜が羽ばたく。


凄まじい風圧が巻き起こり、兜をつけていなかったフローラの金色の髪が風に吹かれてめちゃめちゃに波打った。

それでもフローラが表情を動かすことはなかった。

その目は既に焦点を失いかけ、キャロルたちを見送ることもなく、どこかぼんやりと虚空を見つめていた。


「フローラ」


頭上から、キャロルの声がする。


「必ず、また会おう」


その声を最後に


直立した姿勢のまま、フローラは床にゆっくりと倒れ込んでいった。






必ず、また会おう。


正々堂々と。


剣を交えよう。


神のためでも


天使のためでも


ドラゴンのためにでもなく







己の


信念のために。













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