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二匹眼▼「茶番劇の始まりは静かにかニャでられるか?」

二匹眼▼「茶番劇の始まりは静かにかニャでられるか?」



 この世界のどこかに、「魔眼」という代物がある。

 あるらしい。

 いや、あるとしよう。

 あると仮定する。

 むしろ… ある。

 ってか、あってもらわなきゃ困る。主にあたしが。



「それで?」

「ん? にゃにかな、妹ちゃん」

「…」

「ぅいぅい妹ちゃん。言いたい事があるならはっきり言いなさい。そう… このあたしのようにね(キリッ にゃーに、今更、水臭い事言うよーな仲じゃなし」


 妹ちゃんは、先程まで一心不乱に読みふけっていた文庫本をわざわざ音を立てて閉じた後、眼を瞑って天を仰ぐ。

 はい出た。出ました妹ちゃんの666の悪癖ヶ一つ。見かけによらず、相変らずオーバーリアクションなんだよにゃー、妹ちゃんって。


「本、読み終わった」

「ふーんへーほー。面白かった? むしろ、途中でネタばれを口にしなかったあたしの器の大きさに感謝してもいいくらいだよ」

「おねいちゃん…… 行かないの? あれから何時間か経ったけど」

「い、行くよぉ。行きますよぉ。いやー、でもにゃー、ほら、今さぁ、天気がさぁ、アレだしさぁ」

 そう言って、あたし達のお部屋の窓から外をチラリと覗き見る。

「そうだね。雲ひとつ無い、快晴。お出かけ日和」

 シィーーット!!! 

 っとに、空気の読めない天気もあったもんだぜぃ。

「にゃは、にゃはははは。いやだなぁ、妹ちゃん。あたしだって、別に行きたくないわけじゃないんだよ? むしろ行く気まんまんなんだよ?」

「…」


 い、いてぇ。

 妹ちゃんのジト眼が、あたしのガラスの心臓につきささりまくりんぐだよ…。

 眼は口ほどにものを言うなんて言うけど、妹ちゃんの場合はその範疇を軽く凌駕しちまってるね。むしろ言葉で言うより性質が悪いレベル。こんなの、ふつーに魔眼じゃん。

 魔眼? … いや、待てよ? これは、妹ちゃんなりのあたしへのメッセージなのか? シャイなあんちくしょうが、あたしに放った暗号なのか? もしかして、超絶不器用な妹ちゃんなりに、あたしを応援してくれてたりってことかにゃ?


「じぃーん」

「何? おねいちゃん」

「感動した! 妹ちゃんのツンデレっぷりに感動した!」

「… 何でも良いから、早く行って欲しい」


           ◆


 外出準備を始めてから更に数時間。

 ここにきて、あたしはとんでもない事実に気が付いた。気が付いてしまった。むしろ、気が付かずにはいられなかった。


「外に出る服が無い」

「そう。だったら買えば?」

「服を買いに行く為の服が無い」

「…」


 そんな、定番のテンプレ的会話の応酬を真に受けた妹ちゃんが、何も言わずそっとあたしに一着の地味なジャージを手渡してくれる。

 ぺろっ。

 こっこれは、青酸カ…じゃなくてジャージ。

 くんかくんか。

 こっこれは、妹ちゃん使用済みの… じゃなくて新品未使用のジャージ。

 まさか妹ちゃん、こうなることを見越して? なんつー未来視っぷり。マジ魔眼じゃね?


「あげる」 

 オウ。つまり、後戻りは出来ニャいってこと。あばばばば。

「時に妹ちゃん。ちみは、魔女をしっているかい? 魔訪を知っているかい?」

「まだ行かないの?」

「魔眼に関する話だよぅ。5分でいいから聞いてくれよぅ」

「仕方ない。それで?」

「うむ。そういう素直なところ、嫌いじゃないぜ」

「そういうのいいから」

 今日の妹ちゃんは、ちょっち虫の居所が悪いのかな★

「あたしの仕入れた情報によるとだね、魔眼は魔女が持ってるらしいんだ。ってか魔女の眼が魔眼なのかにゃ」

「厨二病乙。おねいちゃん、そもそも現実どこいった?」

「いーいーかーらーきーけーよー。魔女って言うのは、悪魔みたいな女。あれ、女みたいな悪魔だったかな? ま、いいや。その略称らしいですぜ。その上、魔法ならぬ《魔訪》が使えるとか」

「それで?」

「うん。だから、そいつから殺してでも奪い取る(ドヤッ」

「… そう。頑張って」

「え? やだ、がんばらにゃい」


 だって


 ぶっちゃけ、外、出たくねー。とか、思ってたり。

 うん、そう。この期に及んで。


 にゃんて。ダメ? …… けちぃ。



END



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