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episode 31

圭司が連れて行ってくれたのはジュエリーショップだった。

白を基調にした店内は、清潔感があり、照明も明るめ。

定員さんは落ち着いた雰囲気の人が2人いた。


「え?この店って・・・」

店名が見覚えある。

今、左手薬指にある指輪の紙袋に入ってたロゴ。

「この指輪の店だよね?

「結婚指輪、要るだろう?

俺ここしか知らないからな。」

そう言って、店内に入った。

いちばん近くにいた店員に一言話しかけ、しばらく待つと、

ちょっと年上の女性の店員が出てきた。

「佐久田さん、いらっしゃい。

 あ、今日は彼女も一緒なのね。どうしたの?

 サイズ合わなかった?」

そう言いながら店員さんは。

「はじめして、ここの店長の倉西です。」

私にそうお辞儀をしたので、思わずつられて

「高岸です。よろしくお願いいたします。」そう返事すると、まるで営業の挨拶みたい。


「あのさ、結婚することになったんで、

 結婚指輪を見せて欲しいんだけれど。」

圭司がそう切り出すと、倉西さんは微笑みを浮かべ、

「それはおめでとうございます。

 では、早速ですが、こちらのコーナーからご覧になりませんか?」

そう言って、案内してくれた。

そこはウエディングコーナーと書かれていて

結婚指輪をメインに並べているようだった。


「倉西さん、婚約指輪も欲しいんだけど。」そう圭司が言う。

「え?これでいいじゃない。貰ったばっかりなのに。」

右手の薬指にこの間の指輪。

こんな立派な指輪貰ったのに。

「あのさ、それはプレゼント。

 婚約の記念はちゃんと別に揃えようや、ねぇ倉西さん。」

そう倉西さんに言うと、倉西さんも

「そうですよ、買ってくれるときに買ってもらった方がいいわよ!」

そう力説した。

「そうだぞ、これっきりかもしれないだろ!」

圭司も合わせてそう言う。

思わず笑いが込み上げて

「じゃ、遠慮なく。

でも、これっきりは嫌かもね。」

そう返事をすると、圭司は。

「なるべくこれっきりはないよう、

頑張るけどね。

そうなったらごめんな。」

これが嬉しくないはずがないじゃない?。

こんな気持ちでずっといられたらいね。


***********


指輪を選んで店を出ると、もう午後1時になっていた。近くのカフェでご飯を食べようと二人で入った。

「ねぇ、圭司聞いて欲しいの。」

向かい合って座った圭司が頼んだのは、

アイスコーヒー、私はアイスラテ。私の分までストローを差してくれた。

「私、子供が産まれたら、出来るだけそばにいたいの。」

そう私から切り出した。

「俺は嬉しいよ。

 家に帰ったら奈央と子供が待っててくれるとか

 想像しただけで楽しくなるけれど

 なにか他に言いたいことがあるんだろう?」

うん、やっぱり読むよね、心を。

なんでこんなにかなわないんだろう。彼には。

「私、忙しい両親の仕事の出張や泊まり込みの間、叔母様に預けられて

 それはそれで楽しいこともあったけれど

 やっぱり淋しいって思ってた。

 なんで自分の家で寝れないんだろうって

 お気に入りの枕も、ぬいぐるみも近くになくて

 そんな思いは自分の子供にはさせたくないの。

 だから今のような仕事はもう出来ないと思う。

ずっと家にいるのかとか、

そういうのはまた考えるだろうけど。」

そう言うと、圭司は優しい目で答えてくれた。

「俺も、そんな思いをさせたくないな。

 よし、また一つ解決した。次の悩みはなんだ?」

そう笑うので、つられて笑った。

そこへ、注文していたホットサンドが運ばれてきた。

食べながらあれこれ話していると、

なんだか悩んでるのが馬鹿みたいに思えた。

***************************


夕方、部屋を片付けて、数日分の着替えとかをバッグに詰めていた。

圭司は、ちょっと実家に話をするからと

電話をしているようだった。

ああ、いよいよ、難題に入ってきた。

なんだか落ち着かないので片づけに集中してみた。

電話の声が端々聞こえるけれど、

聞かないように、音楽なんか聞きながら。

この部屋4年半住んだんだよね。

あんまり物を増やさないよう注意してたんだけれど。

ゴミ袋足りないような気がしてきた。私、本当に奥さん務まるのかしら?片付かない気がする。

こんなことまで不安になる。


翌日午後、社長の家に向かった。今日の夜、圭司のご両親が来る予定らしく

両親に話をするより前に

その前に社長に話をしたいと圭司の提案だったので

まず、二人で行こうと決めた。

でも、昨日電話した時は

私一人でただ遊びに行くからと言っただけなんだよね。


車の中で圭司が言った。

「昨日、専務と孝也には話しといたから。

 口止めはしてあるから。大丈夫。」

車を社長の家に止めて車から降りる。

5年くらい前に建て替えてきれいになった家は

昔、預けられた頃の記憶と全く違う。


ドアチャイムを鳴らす前にドアが開いた。

「奈央!圭司君も一緒に来たの?」

なんだかすごい喜んでる・・・。なんだか言い出しにくい。

「叔母さん久しぶり。社長もいるのかな?」

「お父さん、いるわよ。まあ、上がって上がって。」

叔母様のテンションは上がる一方だ。


「今日の夜、圭司君のご両親が来る予定なんだけれど、

 ちょうど良かった、みんなでご飯食べましょ!

今日の夜はお寿司取るのよ。」

叔母様は嬉しそうに言いながら、居間の方に

通してくれた。

「今日は絹子さんが、休暇取ってて、

今、お茶入れるわね。」

「叔母さま、私が入れるから。」

そう言うと

「いいの、奈央はそこにいて。」

そう言ってキッチンに消えた。

社長はリビングで、くつろいでテレビなんか見てた

「圭司と奈央、一緒に来たのか?

 なんだ、休みまで一緒にいるほど仲良かったか?」

ソファに寝ていた叔父さまは、

起き上がって座った。

そんなこと言われて困ってしまう。

圭司をちらっと見ると、肩をぽんと叩いてきた。

任せろ、そんな感じかな?


ゴングは鳴った、後は野となれ山となれ。

そんな気分。

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