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episode 29

あえて気持ちを言葉にするならば

覆水盆に返らず・・・・かな。


でもさ、たしか圭司とまた始まった時に、後悔しないって思ってたよね。

後悔なんかしちゃいけないんだ。

大人として行動した結果ですから。


2人で、手をつないだままドラッグストアに向かって歩いた。

無言で歩いていたけれど、ふと思ったことが口をついて出た。

「良かった。プロポーズの返事した後で。」

それを聞いた圭司は、面食らったような顔で

「なに?どうして?」

そう聞いてきた。

「妊娠したから結婚するって言うんじゃなくて

 好きだから結婚するほうが良くない?」

すると、圭司はふっと笑って

「どっちにしろ好きだから結婚するんだよ。」

そう呟くように言った。

なんだか照れ臭くなって、後の言葉は浮かんで来なかった。

でも、でも

そんな悠長にしていていいのかしら???

これからどうなるんだろう。


まずは、本当に妊娠してるのか確認しないと、そこからだ。

「なんだか落ち着かないなぁ・・・。」

そう言うと、圭司はふと足を止めた。

「大丈夫、心配はいらない。」

そう言って肩に手をまわしてきた。

暑い夜だけど、このまま肩を抱いていて欲しくて、

回してきた手を握って、そのままゆっくり歩き出した。


ドラッグストアの妊娠検査薬売り場に一人で立った。

圭司には、外で待っていてもらった。

さすがにここに一緒に立つのはちょっと恥ずかしい。

あまり良く見ず、目に付いたものを持って

レジへ急いだ。

別に、恥ずかしがる必要はないんだけれど・・

誰かに見られていないか気になって仕方がない。


***********************

部屋に戻ると、ひとりトイレにこもった

目の前でなんて出来ないし。

圭司は妙に冷静で、コンビニで買った夕飯を食べている。


ひとりドキドキしているようで。

震える手で検査キットを取りだした。

こんな簡単に検査出来ちゃうのが不思議。


「すごい・・・」

思わずそう独り言を呟いた。

心臓が飛び出そうだ。

思わず、間違いじゃないかと

2個セットだったから、ついもう一個も

使ってしまったけれど、そっちも

あっという間に反応が出た。やっぱり陽性・・・・

なんて伝えよう。これ見せるのも恥ずかしい。

やっぱりそうだった、じゃなんか変だし。

・・・・・・・・・・・・・・

しばらく考えてたら、ドアをたたく音がした。

「どうした、気分でも悪いのか?」

圭司の声にはっと我に返って、立ちあがって鍵を開けた。

「どうした、随分時間がたってるから・・・」

そう言った圭司に、無言で検査結果を見せた。

説明書と見比べた圭司は、嬉しそうな顔で、抱きしめて来た。

「やった!奈央。すごいぞ!!」

ちょっと待って!そんなに喜んでるなんて。

「え?いいのこれで??」

「当たり前じゃないか!!何言ってるんだよ!」

いいの?本当に妊娠しちゃっていいの?

私は心臓がどうにかなりそうなのに。

「仕事とか、いろいろ考えないといけないし、どうしようか・・・」

私はそれしか口に出せない。


「とりあえず座って。奈央。」

2人で、居間に戻って並んで座った。

「どうしよう、会社とか仕事とか。」

おろおろするばかりの私に、圭司はなだめるように言う。

「大丈夫、上司の俺が言うんだから間違いない。」

いや、のんきすぎるって。

心の中でそう思うけれど、

圭司の嬉しそうな顔を見ると何も出てこない。

「とりあえず、飯食えるか?

 まだ何も食ってないだろう。」

「なんだか食べられそうにないよ。

 それよりシャワー浴びて着替えてくる。」

時間も午後11時になった。

とりあえずシャワー浴びよう。

「具合が悪い時は呼べよ。いいか?」

そう言いながら脱衣所まで付いてきた。

「大丈夫だから向こうで待ってて。」

「いや、一緒に入ろうかな?」

そうにやりと笑う。

「さっき入ってから家に来たじゃない!」

圭司を押し出して、脱衣所のドアを無理矢理閉めた。


ぬるめのシャワーを浴びながら

考えるのはこれからの事ばかり。


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