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episode 11

目が覚めたら、もう明るいを通り越して。

どう見ても午後のようだった。

時計を見ると午後2時。

自分の目を一瞬疑ったが、まぎれもなく午後2時。

隣にはまぎれもなく圭司が寝てて。ここは

私の部屋じゃない。全部夢じゃない。


とりあえず、土曜休の週で良かった・・・・

こんな時間まで寝てるなんて。


起き上がって立ちあがろうとすると

ぐっと後ろから腕を掴まれた。

「どこ行くのー?」

布団の中から引っ張られた。

眠たげな微笑に、力が抜ける。そして

急になんだか恥ずかしくなった。

昨夜から何度か目覚めて、また抱き合って、また寝て。

繰り返したけれど、記憶がうろ覚えだ。

明るくなって顔を見ると恥ずかしくなった。

若さに任せてって年でもないのに・・・

どう答えてどう言おう・・。衝動的に口をついた。

「もう、帰ろうかなと・・。」

ちょっと、口ごもってしまったけれどそう言った。

それが妥当よね・・・・帰らなきゃ。

いい年して、お酒の勢いってやつで・・・

いや、勢いだけではなかったような気もするけれど。


「まだ帰るなよ。」

ぐっと引かれて、あっという間にベットに戻される。

見つめられると抵抗も出来ない。

「でも・・・・」

「なんか用事あるの?」

「いや、別に。」

独身女性として悲しいくらい休日の用事はない、けれど。

だって、どういう顔していいかわからないだけ。

「恥ずかしいなんて思うなよ。」

そう言ってまた抱きしめられた。

「別に思ってないわよ!」

この人、どうして私の心を読むのかしら・・・

それとも私がそんなにわかりやすいの?


だけどこうしていて、ずっとこうしていたいって

そう思ってるのは事実。

でも、そんなのいいのかな?

本当にこんなに流されて大丈夫なのかな?

そんな不安感は消えないままだ。

窓の外から、雨の音が聞こえる。

「天気悪いみたいね・・・」

そうぽつりとつぶやいた。

「梅雨だもん、雨が降らなきゃおかしいもんな。」

掃除や洗濯を理由に帰るとは言えそうにない・・・

でもたとえ理由があっても

この時間を、自分で切り上げることは出来ないかもしれない。

この温もりを、もっと感じていたかった。

圭司の温もりを感じていたかった。


また次に我に返ったら

とんでもない。なんと午後8時だった。

信じられない、こんなにあっという間に時間がたつの?

耳元でそっと囁かれた。

「奈央、腹減った・・・

 俺んち何もないからそこのファミレス行こう。」

そりゃ、そうよね。

昨夜の居酒屋で食べたっきりだし。

私の部屋の冷蔵庫・・・・は

「私の家、も週末に買い物に行く気だったから

 部屋に何にもない。」

「じゃ、行こう。ファミレス。」

圭司はさっさと起き上がって、服を着始めた。

豪快にTシャツをかぶるその

裸の後ろ姿にぐっと胸のときめきを感じてしまう。

無駄な肉がまだ全然ないな。

まだジムに通ってるのかな・・・

でも忙しいと思うんだけれど。

それに比べて私、太ったというか、たるんだ気がする・・・。


あ、昨日Tシャツ短パンで来たじゃない!

「わ、私着替えるから家に帰って・・」

とりあえず着てきた服を慌てて布団の中で着ていると

布団に圭司が飛び込んできた。

「じゃ、そっちに来るから。10分で!」

慌てて私が布団から飛び出た。


玄関をそっと開けて、誰も通路にいないのを確認して廊下に出た。

階段を駆け下りて、自分の部屋に入った。真っ暗な部屋の電気を付けて。

慌ててレギンスを履いて、デニムのスカートを履く。

普段着に着替えて、部屋を見回した。

一晩帰ってないだけなのに、随分長く帰ってないような

そんな錯覚を起こしそう。

なんだか静かすぎる部屋。

冷蔵庫の中からウーロン茶を出して一気に飲んだ。

冷たいお茶が喉を一気に流れる、

その感覚で、一気にいろんな事が頭をよぎる。

現実だ、夢じゃない。

思わず深くため息をついた。

さあ、私はこれからどうしたらいいのだろう。

ずっと圭司の影を消そうとしてきた

今回の件はどう処理していいかわからない。

処理とか思っちゃう時点で、なんだか混乱してる・・・

・・・・・・

とりあえず、ポトスに水あげないと・・・

別なこと考えて、この思考を閉じた。


ファミレスでドリアを注文したものの

なんだか喉を上手く通らない。

「どうした、腹でも痛いのかー?」

そうのんきに聞く圭司がなんだか憎たらしい。

なんだかスッキリした顔して余計にむかつく。

しばらく私の顔を見ていた圭司は、まっすぐな瞳で言った。

「奈央、複雑にとらえるな。

 事実は事実でありのまま受け止めろ。

 わざと難しくするなよ。」

「え?」

事実は事実としてありのまま・・・・

ありのままですよ。ただ、こうして。


ああ、そうだった

後悔しないって思ったっけ。

私は圭司が好きで一緒にいたかった。

それだけだ。


「うん。」

なんだか目からうろこって気分。


今を大事にしたい、ただそれだけ。

目の前に圭司がいて

一緒に過ごしている。

それを大事にしたい。

そう思うとちょっとだけスッキリした。

圭司に微笑み返すと、圭司も微笑んだ。

胸がときめいた。最後に微笑みあったのいつだっけ?


ファミレスを出て、ディスカウントストアで買い物した

食料も買って、つまみも買って。日用品と洗剤にゴミ袋も買って。

そして手をつないで帰った。

何故だか圭司の部屋に戻った。

そして買ってきた入浴剤を入れて

二人でお風呂に入った。

そして、抱き合って眠った。

そうだ、こうしたかったんだ。

今はただ、こうしていたいんだ。

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