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路地裏の探偵事務所

 初めまして、そうではない方はこんばんわ、お久しぶりです兄琉です。


 今回の小説は(エセ)推理小説。

 推理小説を書くのは初めてですがどうにかこうにか頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。


  ***注意***

 私の作品【三題小噺集~なんでもアリな物語達~】の【第一回 『酒』『携帯』『火』】(2,500字程度)を事前に読んだ方が楽しめると思います。

 一応読まなくても理解できる内容にはなっていますが、やはりキャラを知っていた方が読みやすいと思いますので……。


※6月30日に細かい文章修正を行いました。話の筋は変わっていないので読みなおさなくても話は繋がります。





「ねぇ、あの都市伝説知ってる? 携帯電話の……」


 日々の喧騒の中、行き交う噂話に耳を傾けてみよう。


「知ってる知ってる、願いが叶うんだよね」

「えっ、私は本当の事を教えてくれる場所だって聞いたけど、流石に嘘でしょ?」


 その中の一つに都市伝説として語られる、ある場所がある。


「それがね、実際に行ったって人も沢山いるみたいなんだ……」



 富裕層の住まう住宅街の噂話にも耳を傾けてみよう。


「私の大事な腕時計が無くなってしまったのよ、どうしましょ」

「だったら、あそこに行ってみればいいザマス。きっと、見つけてくれますわ!」


 憶測と真実が飛び交い、元の形を覆い隠す。


「どうすればいいの? 教えてくれません?」


 だが時に真実に辿り着く、一握りの者達もいる。


「この携帯電話にかけるザマス、名前は……」



 気が付けば誰も気がつかない様な街の片隅にあった。

 街に溶け込んで、背景の一部として薄ぼんやりと認識されていた。



 そして私は今……その前に立っている。





竜胆りんどうさん、今日は出かけないんですか?」


 商店街から一本、いや二本ほど道を外れた路地裏にあるビルの一室から、その声は聞こえてきた。


「ん? 今日何か予定あったか?」

「今日は娘さんの命日……ですよね」


 中にいるのは一組の男女か、私はひとまず人がいるという事が分かり、胸を撫でおろした。

 だが何やら重苦しい会話をしているようで、中々に入りづらい。


「……あぁ、そうだったか? まぁいいじゃないか。それよりも紅井あかい、 これはなんだ」


 竜胆と呼ばれた男は少しの逡巡の後、軽い口調だが若干の戸惑いを含んだ声を上げる。


「先日は失敗しましたから、頼んでおきました」


 後はこの扉を軽く二、三回叩き、要件を告げるだけ。たったそれだけの事に多くの勇気がいるのだけれど。


「おぉっ、気が利くじゃないか! では早速」

「何をやっているんですか、竜胆さんは駄目ですよ」


 紅井と呼ばれた女性の少し鋭くなった声に怖気付いて、扉を叩こうとした手が一瞬止まる。


「なんでだよ」

「私の財布から出た金ですから、先日頂いた技術料で」

「なっ! あれも元はと言えば俺らの金だろう。少しくら」「駄目です」


 気が付けば少し笑っていた。二人の関係が頭に浮かぶ。さっきまで怖気づいていた私が馬鹿みたいだ。

 少しの勇気を出して、私は扉を叩き、古くなったドアノブを回して部屋へと入っていった。



「初めまして、ここが『私立竜胆探偵事務所』ですか?」


 ここが、私を救ってくれる場所だと信じて……。





「紅井……」

「駄目です」


 竜胆の言葉は非常にあっさりと却下される。

 机の上にあるのは眩いばかりに輝く宝石の数々、それらが銀色の光沢を放つ台座に鎮座している。

 まさに美の結晶。美術館から盗みだしてきたかのようなそれらは、竜胆の心を魅了してやまなかった。


「も、もう我慢できねぇ! 早い者勝ちだぁあああ」

「なっ! 如何に竜胆さんいえども許しませんよ!」


 書類をまとめていた為、初動の遅れた紅井は竜胆に先制を許してしまう。一歩遅れて辿り着いた机の上からは、宝が一つ消失していた。

 紅井の背中から地の底より這い出してきたかの様などす黒い気が立ち上り、竜胆を睨みつける。


「竜胆さんに取られる位ならっ」

「な……紅井ッ」


 紅井は必死の形相で宝石達を自分の元へとかき集め、自分のモノにしていく。竜胆も一瞬後に紅井を追いかける。二人の争いは熾烈を極めていった。


「あ……竜胆さん、それキュウリ入っていましたよ」

「なっ! うぷっ……」

「嘘ですけど」

「ぐむっ……騙したなっ!」

「騙される方が悪いのです」

「あ、でも紅井の持っているやつも……」

「えっ! 何かついて……何もないじゃないですか! 嘘つきましたね」

「いや、紅井の持っているやつも、美味しそうだなって」

「……っ!」



「あ、あのっ!」

「「……んぐ?」」


 扉の前には、三度目の勇気を出して声をかけた少女。

 机の前には、特上寿司を限界まで頬張った探偵と、その助手の姿があった。




 少女が来てから十五分後。特上寿司を食べ終わった竜胆達は、少々気まずい空気の中向かい合っていた。


「あー、その……なんだ。見苦しいところを見せてしまったな」

「いえ、こちらこそ突然お邪魔してしまって……申し訳ありませんでした」


 先程まで戦場となっていた机は紅井の手によって綺麗に片づけられ、お茶が二つ置かれている。

 向かい合うのは竜胆と少女、紅井はデスクで何やら調べ物をしていた。


「早速だが、わざわざここに来たという事は仕事の依頼と受け取っていいのかな?」

「はい、大きな事件という訳ではありませんが、お願いを」

「来るものは拒まないさ。あぁ、そういえば自己紹介がまだだったな……俺は竜胆、一応この事務所の探偵だ。後ろにいるのは紅井、俺の助手だ」

「よろしくお願いします」


 紅井はチラリと少女を見るとそのまま書類に目を落とした。いつもあんな感じなんだ、と竜胆は苦笑しながら一度だけ視線を机の向こうに向ける。

 少女は、次は自分の番だと気付き姿勢を正した。


「あたしは皐月さつき、円条寺皐月……遊神学園の中等部に通っています」

円条寺えんじょうじ……円条寺って言ったらあの警備会社の?」

「一応、そうですね……今回の依頼とはあまり関係ありませんが」


 皐月は竜胆から少し顔を背け、机の下へと視線を落とした。

竜胆は少し顔をしかめ、自分の失敗を反省する。


「それで、依頼とは?」


 当初の目的へと会話を戻すと皐月も顔を上げ、ゆっくりではあるが話し始めた。




「嘘つきを、見つけ出して欲しいんです」


 それが、少女の依頼だった。


 今回は依頼人、皐月が事務所を訪ね、依頼をするところまででした。

 次回からは竜胆が実際に調査に乗り出し、円条寺家の面々と交流していく事になります。


 次回更新予定は……6月18日か19日の1時頃を予定しています。

 話自体はほぼできている為、それ以上遅れると言う事はほぼないかと。

 

 それでは次話でまたお会いしましょう。

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