化け物と猫
あちこちで爆音が聞こえる。
変な化け物が街を襲い大騒ぎになっている。
その化け物は、目が体のあちこちについており、とにかくでかい。
そいつが暴れ、大きなしっぽが建物を破壊し、石やコンクリートが飛び交う。
俺、リウスは全力疾走で飛び交う岩石や弾丸をよけながら街を出ようと走っていた。
「おい!何で逃げる!戦えよ戦え!一発殴るだけだろ⁉お前ホントにハンターなのかよ⁉」
俺の肩に乗ってる猫型の相棒、シモンが叫んだ。
コイツは猫型の生き物でなぜか人間の言葉を話せる。見た目はどこにでもいそうな普通の黒猫だが、尻尾は3本生えており真っ赤な血よりも赤い大きな瞳が特徴的だ。
「お前は黙ってろ!作戦があんだよ、作戦が!コイツはとにかくでかい尻尾を振り回して暴れるやつだからいったん距離とってあいた隙とって倒すんだよ!」
「じゃあさっさと倒せ」
「いわれなくても!」
俺は化け物から距離を取り、動きを観察し、わずかにあいた隙をみてそいつの体の下に潜り込んだ。
そして、右手に持った短剣で化け物の体を貫いた。
大量の血が流れ、化け物は苦しそうにして倒れ動かなくなった。
「はい、お仕事終了。飯食いに行くぞ。」
「俺の飯は今一番お前が食べたくない気分のものにしろ」
「はあ⁉」
シモンが意味の分からないことを言い出した。でもコイツが変なことを言うのはいまにはじまったことじゃない。
シモン…コイツのことはよくわからない。コイツとの出会いは俺が中学生とかその辺まで遡る。
確か、住んでいた村に変な化け物が、襲ってきた時だった。
変な化け物に襲われて、村は壊され、村の人たちもみんな殺されてしまった。俺の家族も殺されて、俺自身も重傷を負った。なのに化け物は暴れることをやめず、暴れまくってて、俺は、物陰に小さくなりながら怯え、隠れていた。
しかし、その化け物は、鼻がよくきく犬型だったためか、すぐに見つかってしまった。
俺は、死を覚悟して、目をつむった。
しかし、体に痛みが来ることはなく、代わりに生ぬるい液体が降りかかった。目をあけるとなぜかその化け物は死んでいた。
周りには誰もいなかった。
……いや、いた。化け物の死体の陰に小さな3本の尻尾をはやした猫がひっそりと潜んでいて、毛づくろいをしていた。
「え…もしかしてきみが助けてくれたの?」
俺は、恐る恐る聞いた。しゃべらないはずの猫なのに、
「助けたんじゃあねぇよ。俺は犬が嫌いだし、うるさかったから、一発ひっかいただけだ。」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!猫がしゃべたあぁぁぁぁぁぁぁ!」
なぜかそいつは、人間の言葉を話していて、偉そうな態度をしていた。
「言っておくが、俺はただのねこじゃあねえ」
知ってるよ!しゃべってるし!
「猫の進化の頂点にたった猫だ!」
意味が分からない。思わず俺は笑ってしまった。
「笑うんじゃねえ!見てろ」
そういうとこの猫の周りに怪しげな霧が浮かび上がり、猫を包んだ。そして、見る見るうちに霧は大きくなり、だんだんと霧が消えた。
そこには、猫耳はやした人型の美女が立っていた。
白く透き通るような肌に、赤い頬とぱっちりと大きな赤い瞳。その美しい顔を縁どるように流れる長い黒髪。すらっとした身長。思わず見とれてしまう美しさだった。
しかし、表情は、不愛想で、
「どうだ?すごいだろ?」
という、自慢げな様子で目を覚ました。
「何で人間の姿みたいになって…もしかして猫又?名前なんて言うの?」
「唐突だな。名前なんてねえよ。あと猫又なんかよりすげぇ奴だ!」
「名前なくて不便じゃないの?」
「名前を使うことがないから不便じゃねえ。俺はもう帰る!」
「そうか。またね。あと、助けてくれてありがとう。」
「それより、お前血の量やばいぞ?」
ドサッ
忘れていたが俺はかなりの重傷を負っていた。
体がズキズキ痛み、暑くて仕方なかった。
血がドバドバ出てきた。そしてなぜか今度は寒くなってきて、さらにだんだん痛みもなくなって意識がもうろうとしてきた。
俺は、死を悟った。
ここで、俺は死ぬのか。まだとくに何もしてないのに…
村を出て、都会に行って、おいしいもん食って…
家族はもう死んだ。
あぁ…もうすぐ家族のもとに行くんだ
「おい、お前、俺に名前を付けろ。」
「え…」
「俺たちみたいなやつは名前を付けてもらったヤツに従う。飼い主と俺らはお互い条件を出して協力する。俺はお前に、傷を治すことと、能力、チカラを与える。お前も俺の得になる条件を出せ。生きたいんだろ?」
後で知ったことだが、この世界における特別な能力を持つ生き物、UMAは、名づけることで、契約を刻むことができるらしい。
「なん…で…?」
「お前のことは気に入った。条件をだして、名前を付けろ。」
生きたい。俺はここで死にたくない…。
「お前はシモンだ。何でも言うこと聞いてやる。」
覚悟は決めた。俺はこれからコイツ…シモンとパートナーとして生きる。
「よし。じゃあ一日3食飯出して、俺の世話しろ。」
そんなこんなで俺とシモンはパートナーとなり、一緒に暮らしている。
一緒暮らし始めて思ったのが、コイツマジで変な奴だな…ってことだ。
今みたいに俺の手間かかることさせようとしたり、俺が何か言うとすぐに反論してくる。コイツとペア組んでよかったのかと思ったりする。でも、コイツがいなかったら、俺はすでに死んでいるから、一応感謝はしてる。
ブーッブーッ
電話だ
「はい。あーはい。じゃあ今すぐ行きます。
おい、シモン、隣町に、敵UMA出たから、討伐しに行くぞ」
「えーなんだよ。飯は?」
「飯は後でだ。行くぞ。」
何かぶつぶつ文句を言っているシモンを肩に乗せて、俺は歩き出した。
この世界には、UMAと呼ばれる特殊な力を持った生き物が現れる。人間に友好的な奴もいれば、敵対する奴もいる。シモンのように、しゃべるやつは少ないが、味方してくれる奴もいる。
俺たちハンターは敵UMAを倒すことが仕事だ。
そのために、UMAを研究し、わずかであるが、特殊な能力を使うやつもいる。
「おい、リウス、敵だぞ」
さっそく敵を見つけた。
「狩るぞ。」




