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04.常連のミュウさん 〜シナモンカフェオレ


「ねえ、メーナさん。どうしてお店の名前を『シナモンカフェ』にしたの?」


超ミニスカートから、猫のような長い尻尾を覗かせたミュウさんに尋ねられた。


ミュウさんは(おそらく、いやきっと)ネコの異世界人だ。頭に付いているネコの耳も、ネコミミカチューチャではないと思う。

本物だと主張するかのように、時折りピルピルと耳が動いている。


しかし芽衣奈はミュウさんが異世界人でも気にしない。

ミュウさんも、このお店が開店してすぐの頃から通ってくれている大事な常連さんなのだ。

人であろうと異世界人であろうと、気にするところではない。


(おそらく)ミュウさんは、学生さんだ。

ミュウさんは平日だけのお客様で、「今日はなんかダルくてさ〜」と言いながら重そうなカバンを脇に置いて、携帯を眺めて過ごす常連さんだった。


気まぐれに芽衣奈に話しかける日もあって、今日はそんな気分だったようだ。

ふと思いついたように、「どうしてお店の名前を『シナモンカフェ』にしたの?」と尋ねられた。





芽衣奈がお店の名前を『シナモンカフェ』にした理由、それは。


「私、スパイスが大好きなの。それほど詳しいわけじゃないんだけどね。色んなスパイスがあるけど、中でもシナモンの香りが一番好きなのよ。

シナモンは香りが強いから嫌いな人も多いけど、印象深い香りでしょう?一度ハマっちゃったら、ずっと好きになっちゃうくらいに。

私のカフェは独特なメニューが多いけど、お客さんがお店を好きになってくれたらいいなぁって思って、お店の名前にしたのよ。

ミュウさんはシナモン好き?私はコーヒーにシナモンパウダーを入れちゃうくらい好きなのよ。

シナモンスティックの方がオシャレだし、コーヒーをスティックで混ぜるだけでも香りがつくけど、パウダーの方がお財布に優しいからお勧めよ」


「え?何それ。私もシナモンは嫌いじゃないけど、コーヒーにもシナモン入れちゃうわけ?それってもうコーヒーじゃなくない?」


シナモンコーヒーという発想がおかしかったようだ。

ミュウさんが笑い出して止まらない。

(おそらく)学生のミュウさんは、『箸が転がってもおかしいお年頃』というやつなんだろう。

そんな年頃を越えた芽衣奈も釣られて笑ってしまう。



確かにコーヒーにシナモンは一般的ではないだろう。

シナモンパウダーがコーヒーに溶けてくれるわけでもないし、コーヒーの香りに勝ってしまう。香りが独特すぎるのだ。

だけどそれでも芽衣奈はシナモンコーヒーを推したい。




「コーヒーにシナモンパウダーを直接入れなくても、ホットコーヒーにホイップしたクリームを乗せて、そこにシナモンを振ると美味しいわよ。

コーヒーじゃなくて、『カフェオレにホイップクリームにシナモン』もお勧めね」


「あ。カフェオレにクリームにシナモンは美味しそう。今日の注文、それにしようかな。ホイップたっぷりで」


「かしこまりました。ホイップクリームタップリのシナモンホットカフェオレ、ご用意しますね」


ミュウさんのオーダーに頷いて、早速芽衣奈は準備に入った。


お店の名前が入ったドリンクだ。

ぜひとも美味しさを伝えたいと、芽衣奈は気合いを入れた。





普段芽衣奈は、コーヒーの注文は業務用エスプレッソマシーンで淹れている。

マシーンは、ボタンをポチッと指で押すだけで美味しいコーヒーを入れてくれる。

カフェオレやカフェラテの泡立ったミルクも、ボタンひとつで済んでしまうのだ。

飲み物を用意する間にスイーツを用意出来るマシーンは、「使わない」なんて選択肢はない。


だけど今回オーダーされたコーヒーは、芽衣奈が愛するシナモンコーヒーだ。

ボタン一つで機械的に作られるより、「いつもより丁寧に」淹れているという演出も必要だろう。


趣味で使っていたコーヒーを淹れる様々な器具は、店内のディスプレイとして飾っているので、マシーン頼りではないコーヒーも淹れる事はできる。


芽衣奈はディスプレイとして置いていた直火式エスプレッソコーヒーメーカーを手にとって、いつもより時間をかけてコーヒーを用意することにした。


エスプレッソメーカーに水を入れて粉を設置し、火にかける。

弱火にかけてしばらく待つと、ブクブクとエスプレッソが出来上がる音がする。

温めておいたカップにエスプレッソを注ぎ、温めたミルクを注ぎ足す。

そこにホイップしたクリームをたっぷりと絞って、上からセンスよくシナモンを振りかけた。


――完成だ。

究極に丁寧に作られた、ホイップクリームタップリのシナモンホットカフェオレが出来上がった。




「お待たせしました。ホイップクリームタップリのシナモンホットカフェオレです」


芽衣奈はコトリとカップをミュウの前に置いた。

チョコチップ入りシナモンクッキーも、小皿にサービスとして付けておく。



「わ、いい香り。これ、確かに良いかもね。シナモンコーヒー、全然アリだわ」

クンと香りをかいだ後、ひとくちカフェオレを飲んだミュウが感想を言う。

長い尻尾がピンと立っている。喜んでくれているのだろうか。



「そうでしょう?」

少し食い気味に返事を返してしまったようだ。

声が大きくなってしまったせいか、芽衣奈の声にミュウが驚いた顔になった。


『大人の余裕を見せなくちゃ』と芽衣奈が前のめりになった背筋をスッと正すと、ミュウが笑う。


「ねえ、メーナさん。いつもカフェオレ頼むとマシーンで作るのに、どうして今日は手で淹れたわけ?」


「それは……その方が美味しそうに見えるでしょう?ブクブクってコーヒーが沸く音も、マシーンより美味しそうだし」


「え、なにそれ?美味しい演出するために手で淹れてくれたわけ?え、マジウケるんだけど」


あはははとミュウが爆笑するのは、やっぱり箸が転がってもおかしいお年頃だからだろう。

ひとしきり笑った後、ミュウは笑い過ぎて滲んだ涙を拭きながら芽衣奈に話した。


「お店の名前、『シナモンカフェ』で正解。マジ正解。メーナさん印象深すぎてハマっちゃいそう。ずっと好きになっちゃうかも」


「それは……ありがとうございます……?」


よく分からないが、シナモンコーヒーは「ホットカフェオレにホイップクリームにシナモン」という形からなら、初めてのお客さんにも受け入れてもらえそうだ。

シナモンコーヒーが定番メニューになる日も近いだろう。


『アイスカフェオレにアイスクリームを乗せて、ホイップクリームを絞った上にチョコソースとシナモンパウダーっていうのも良いわね』と、芽衣奈はまた新しいメニューを考え出した。




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