表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/23

23.禁断のドリンク 〜超濃厚ホットチョコドリンク


『本日のオススメドリンク


濃厚さ選べるホットチョコドリンク 

  1.食べるチョコドリンク

  2.飲むチョコドリンク

      ※お好きな方をお選びください

〜スティックチーズパイ付き〜』




今日はドリンクをお勧めする事にした。

濃さを選べるホットチョコドリンクだ。

こんな寒い日には飲みたくなるものだろう。


「本日のランチメニュー」の後に、「本日のオススメドリンク」に書き直したメニュー看板を見て、芽衣奈は「これでよし」と頷いた。







おやつを食べたくなるような時間に入った頃、お店の扉のドアベルがチリンと鳴って、二人の常連さんが入ってきた。


「ユフィさん、フィーネさん、いらっしゃいませ。一緒にお店に来られるのは初めてですね」


「こんにちは、メーナさん。ユフィ兄さんに、可愛い帽子を買ってもらったから、代わりにお茶をご馳走しようと思って」

「はは。高いお茶代になりましたよ」



どうやら兄妹で仲良くお買い物をしていたらしい。

フィーネさんが被っているフワフワの可愛い帽子は、とても彼女に似合っていた。


「その帽子すごく可愛いですね!フィーネさんにとても似合ってますよ」

「ありがとう。これすごく温かいんだ」


お礼を言いながらフィーネさんがフワフワの帽子を脱ぐと、長い髪がサラリと動いて尖った耳が見えた。

やっぱりフィーネさんも耳の尖った異世界人のお客さんだったようだ。




「ねえメーナさん。食べれるホットチョコドリンクって、どんなくらい濃いの?溶かしたチョコレートって感じ?」


フィーネさんの質問に、芽衣奈はフフフと低く笑って見せる。

濃いチョコドリンクを作る時は、魔女のような気持ちになるのだ。


「そうですね。濃いものはお汁粉くらいのトロミがあって、お汁粉を食べるように飲めるんです。

ビスケットにトロリとつけて食べれるくらいに濃くする事もできますよ。上にホイップも絞るので、もう背徳感しかないドリンクになります。お勧めですよ」


芽衣奈はフフフともう一度低く笑って見せる。


「え。背徳感あるけどお勧めするんだ。……ねえ。なんでそんな悪そうな感じに笑うの?」


「濃いチョコドリンクを作る時は、慎重にお鍋を混ぜ続けますからね。魔女の気持ちになるんですよ」

「魔女ですか……」

「はい。いかがですか?ユフィさん」





芽衣奈の低い笑いが気になったのか、二人とも濃いチョコドリンクを注文してくれた。

「お汁粉くらいの濃さ」がご指名だ。




チョコは高温で溶かすと分離してしまうので、直接火にかけないで、ボウルに刻んだチョコを入れて、湯煎で溶かしていく。


チョコが溶けたら、鍋で温めていた牛乳の半量をチョコのボウルに少しずつ加えて混ぜ合わせていき、シナモンも振りかける。


綺麗に溶けたら、今度はボウルのチョコと混ぜた牛乳を鍋に戻して、残りの牛乳と混ぜ合わせながらクツクツと沸騰させる。

濃厚で熱々のチョコミルクがクツ……クツ……と小さな泡を立てているのを見ると、もう気持ちは魔女だ。


カップにトロトロと熱々のホットチョコを入れて、香り付けに上からオレンジの皮をゼスターで削って振りかける。


ゼスターは、香りが一番強い果物の皮の部分を、薄く細かく削ってくれる。

ナッツやチーズや生姜なども、力要らずで削ってくれる頼もしい調理器具で、見た目もスタイリッシュでカッコいい。

きっとカッコいいゼスターを使う今の芽衣奈も、魔女らしくカッコよく見えている事だろう。


温かいホットチョコの上に乗ったオレンジの皮が、フワリと香り、最後の仕上げにホイップクリームを絞って濃厚なホットチョコドリンクが完成した。



「お待たせしました。食べるように飲む、濃厚なホットチョコドリンクです。スティックチーズパイもどうぞ」



スティックチーズパイは、アップルパイを作った時に出た切れ端パイで作ったものだ。


切れ端パイを麺棒で伸ばして、刷毛で薄く水を塗って、粉チーズをかけた上に粗挽き胡椒を振りかけてから、オーブンに入れるだけの簡単チーズパイだ。

つまみやすいように細長くカットしてから焼いている。


粗挽き胡椒が効いたチーズスティックパイは、食べ出すと止まらない。

「もう一本だけ」と思いながら手を伸ばしてしまうパイは、魔女のドリンクと最高のペアリングを見せてくれるはず。






「メーナさん。チョコドリンク、マジで美味しい!定番メニューにするべきじゃない?」


テーブル席からフィーネさんが声をかけてくれた。


「お口に合って嬉しいです。でも……これを定番メニューにするのは良くないと思うの。だって危険な飲み物だもの。飲み過ぎたら太っちゃうでしょう?

ビターチョコを使ってるところが、私のせめてもの良心なんですよ」


「え、魔女が良心見せちゃダメじゃん」


フィーネさんの言葉に、芽衣奈の良心がグラグラと動く。


「そう……かも?そうですね、魔女の飲み物だもの。いっそホワイトチョコドリンクにして更なる背徳感ドリンクを……!」


「確かにホワイトチョコの方が背徳感強そうだね。ビターチョコ止まりにしときなよ。

このチーズスティックパイ、ブラックペッパー効いてて美味しいね。チョコドリンクにすごく合うよ。ドリンクのカロリーに、パイのカロリー重ねてきてるよね」


「甘い系としょっぱい系は、ループになりますからね。こんな危険な組み合わせを考えるなんて、私悪魔なのかも」


フフフと低く笑ってみせると、アハハとおかしそうにフィーネさんが笑った。


「もう魔女じゃないじゃん。いいね、怖いメーナさん。ますます大好きになりそう」




「私もフィーネさんが大好きですよ。でも、怖い人はいいけど、悪い人は好きになっちゃダメですよ」


楽しそうに笑うフィーネさんが心配になって、芽衣奈は念のために注意をしておく。


『可愛い妹さんを持つと心配ですね』とメッセージを込めてユフィさんを見つめたが、微笑みを返してくれる彼に、芽衣奈のメッセージは届いているかは分からない。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ