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第三話 冒険者試験[後編④]

これが俺の戦い方だよ。気に入ってくれた?――byソウシ



※今回はソウシ視点です。

「ちゃんと見てろよ、俺の戦い方を」


 俺は右手に炎の魔法陣を宿すと、砕けた掌の再生に夢中な霧野郎に[ファイエム]をぶちかまして視界を奪った。その間に寝こけたままの三匹を回収。霧野郎の攻撃範囲外である一キロ先の川縁まで瞬間移動させると、敢えて堂々と正面から出向いてやった。


 (ヤツ)はカモがネギ背負ってきたと言わんばかりに鼻息を吐くと―鼻の穴あったっけ!? By終太郎―、回復したばかりの掌を俺に向かって叩きつけ、その上からさらにもう片方の掌を叩きつけてくる。そのどっちもを、片手で受け止めてやった。


「ヌヌゥ!?」

「ふーん、レベルは440か。んじゃこっちは500くらいでいくか」

「ヌヌヌヌヌッ……!」

「にしても400超えにしては弱っちいっつうか、終太郎のポン骨のほうが威力ある気がするな」

(おい`ポンコツ`と`拳骨`を足すな!)


 心の中でまで元気にツッコんでくれる相棒は置いといて、俺は眼前に意識を戻した。向こうさんがプルプルと手を震わせているのに対し、俺の手はビクともしていない。試しにちょっと力を入れて押してやれば、ヤツの本体はすんなりと後退していく。まぁ本人は本気で抵抗してるし、真っ白だった霧も力んでいるせいで赤くなってた。うわ超ウケるwww。


「ほい」

「ヌギュッ」


 逆に力を抜いてやれば、バランスを崩して倒れ込んできた。


「アブソリュートスフィア」


 無防備に突き出された霧の一部を鷲掴むようにして凍らせ、反対の拳で殴りつける。


「ヌギャッ……」

「お、掌の時より効いてるねー。んじゃもう一発」


 カキンッ、ドゴ!


「ヌギュギュ……!」

「さらにもう一発!」


 バキバキドゴンッ!


「ギュヌゥウ!」

「おまけだぁ!」


 思いっきり拳を固めて腕を引けば、さすがに警戒して両手で顔面をガードしてきたが、


「――と、見せかけて♪」


 [ロードスキップ]で背後に瞬間移動し、渾身の回し蹴りを叩き込んでやった。勿論ちゃんとダメージになるよう、[アブソリュートスフィア]を同時に使って。さらに[カットラビリンス]でヤツの周囲を転々と高速移動して翻弄しつつ、打撃で確実にダメージを与えていく。


「ヌギュウゥウゥウッ」


 カンカンに怒ったらしい霧野郎はボコボコと霧の部分を波立たせると、視界全域に霧を撒き散らした。一応[バリアモンド]で防御したが、コレ自体が俺の身体にダメージを与えることはない。影響を受けるのはたぶん――周辺に生息するあらゆるモンスターたち。


「グォオオォオォオ!」

「言った傍からか」


 飛びかかってきた虎の身体と蛙の足をもつモンスターに腹パンを食らわせ、トゲ鞭のような見た目の蛇は[ファイエム]で燃やす。空から降ってきた蜂の針をもつ雀の大群は、[アブソリュートスフィア]で空気ともども凍らせて受け止め、霧野郎に投げつけてやった。


「思った通り、あの霧で周囲のモンスターの思考を奪って操ってんだな。モンスターにのみ反応するのは、テリトリーに入ったヤツが同種か否か判別するためってところか」


 もうヨロヨロのくせに、霧野郎は懲りもせず睨みつけてくる。この感じじゃ、短時間でここまでコテンパンにされたことがないんだろうな。まぁ大抵の冒険者は実体のない霧の部分より、掌を攻撃してHPを削っていくもんな。あんなの俺らで言うところの盾で、本体には一ミリもダメージいかねぇってのに。


「いい具合に弱ってきたみたいだし、これ以上は終太郎に見せるほどでもねーな」

「ヌゥウ、オォ……」

「お?」

「ヌゥオォオオォオオォオォオォ!」


 直訳するなら「命を燃やせぇえぇ!」とかだろうか。ひときわ大きく吼えた霧野郎は、今度は黒い霧を全身から噴出した。するとさっきまでの白い霧と違ってモンスターだけでなく、意思のない草木や土までもが束になって襲いかかってくる。


「なるほど、黒いのは生物全般を操るのか」


 [ファイエム]でとりあえず薙ぎ払うと、[エアーウィング]を使って一度空中へ避難する。黒い霧は着々と範囲を広げており、この分だと靄となってあの三匹の避難所まで届くのも時間の問題だろう。


「ま、それまでに片付ければいいだけの話だけど」


 懲りもせず飛んできた蜂雀を[ファイエルド]で燃やし、その熱が残る手でライフルの構えを取る。直後、弾を装填する時のようなガチャンという音が連続して響き、加えて赤とオレンジに縁取られた三角系の魔法陣が連なって展開した。


「インビタードショット・ヒートモード」


 数ある魔法攻撃のなかでも俺のお気に入りの、一撃必殺を謳う狙撃魔法。さらに[コールスフィア]の熱気バージョンである[ヒートスフィア]の魔法を重ねてかけ、弱点を浮き上がらせる補助魔法の[ウィークポインター]で標的をロックオン。引き金に当たる魔法陣の核に指をかける。


「Die」


 ひと思いに引き金を引き絞って核を解き放てば、銃口より赤とオレンジに彩られた魔力弾が飛び出した。灼熱の熱気と風を切り裂く鋭さは`太陽の弾丸`と称するに相応しく、弱点のど真ん中を撃ち抜かれた霧のモンスターは、自身に何が起きているのか理解する間もなく消滅してしまった。同時に森を揺蕩っていた黒い霧も消え、我に返った草木は静まり返り、他のモンスターたちも各々の住処に戻っていく。


(す、ご……)

「これが俺の戦い方だよ。気に入ってくれた?」


 言葉も出ない様子の終太郎にちょっと自慢げに言うと、俺は地上に戻った。

分け方ミスって、後編がやたら長くなってしまいました……。

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