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新ジャスミン

 

 ベースメテオにAIが設置された。AIの愛称はジャスミンになった。つまりジャスミンは新しいベースメテオと博士の秘密基地の両方を見ることになる。と言っても秘密基地は今ではシエラの研究者達がたまにやってくるだけで毎日忙しいわけでもない。しかもベースメテオのメインコンピューターは秘密基地のそれよりもずっと大きくて高性能だ。シエラ参謀本部がジャスミンにベースメテオのAIとリンクさせてデーターを共有させると水を得た魚の様にジャスミンがその能力を開花させる。



「ジャスミン、レーダーテストはどうだ?」


『第2レーダーの解析率が他よりも5%悪いです。今チェックしました。モニターに図面を出して修復箇所を赤い線で示します』


 ジャスミンが動き始めてベース内での工事のスピードが上がった。

 アイリス2は今はベースメテオで使用される備品や食料、水などの生活必需品を他の輸送船と共にピストンで運び込んでいる。


 2,000人の駐留を考えて作られたベースメテオには持ち込むべき生活必需品が非常に多い。彼らは多い時は日に2往復して荷物を基地に持ち込んでいた。


 この日も2度目の輸送でベースメテオの輸送船のデッキに着岸したアイリス2。すぐにエアリフトがやってきて後部ハッチから次々と荷物を取り出しては基地内の指定の場所に向かって動きだしていく。以前は人間が指示をしてやっていたがジャスミンが稼働してからはタグを読み取ったAIのジャスミンがエアリフトに指示を出す様になったことで作業効率が大幅にアップしている。


「作業効率が上がるのは良いがこっちは次々と運ばされるよな」


『ケンとソフィアの仕事は運送業ですから当然ですね。そうジャスミンが言っています』


 アイリスが代弁してきた。確かになと苦笑する2人。



 急ピッチで製造が始まったベースメテオ。今はそこで勤務することになった軍関係者が次々と乗り込んでいる所だった。幸いというか民間船であるアイリス2は人員の輸送には駆り出されることは無かったが細々とした備品などを何度も運んでいた。


「もうほとんど完成してるみたいだな」


「人が移ってくると活気が出るわね」


 彼らは荷物用ハッチしか知らないがそれでも今まではロボットだけだったのがそこに迷彩服を着た男女が動き回っている姿が目に入ると活気を感じる。2人とも新しいベースメテオの中を見ようと言う気は全くなかった。軍事機密が多数あるだろうし何よりジャスミンじゃないが、自分たちは運送屋だ。2人は分をわきまえていた。


「これで配属される艦船が来れば基地の完成ね」


「つまり、俺達のこの仕事も終わりが見えてきたってことだ」


 シエラとこのベースメテオとの間ももう何十回と往復しているアイリス2。言われた場所から荷物を積んではベースメテオで降ろしてはまた戻るというのを繰り返していた。運送屋に徹しきっているケンとソフィア。


 これが最後だという荷物をベースメテオに送り込んで夜になってシエラ第3惑星に戻ってきた彼らは翌日情報部のオフィスに顔を出した。


「お疲れ様。おかげで物資は全て無事に運び込まれた。あとは実働部隊と駐留艦隊を派遣したらベースメテオが活動を開始する手はずになってるの」


 フランソワ少佐が2人に説明をする。少佐の隣にはスコット大佐が座っていた。


「それで情報部からは私がベースメテオに詰めることになって明後日赴任することになったのよ」


 フランソワ少佐によると参謀本部情報部からは5名がベースメテオに詰めるらしく、少佐は現地での情報部のトップになるらしい。5名という人数が少ないのか適正なのかケンには分からないが5名が行くと決まったのだからその人数で仕事を回せるという判断をしたのだろうと理解する。


「今彼女が言った様に情報部代表として彼女がベースメテオで勤務をする。君たちの窓口はそのまま私が担当する。従来と変わらないと理解してくれ」


「分かりました。ベースメテオへの物資の輸送は終わったと理解しています。従来の仕事に戻っても良いということになりますか」


「その通り、仕事を再開するタイミングは任せる。暫くはいつも通りの仕事に戻ってくれ」




「ケンはベースメテオの中を見てみたいとは言わなかったか?」


 2人が帰った後、スコット大佐、フランソワ中佐はシュバイツ准将の部屋で打ち合わせをしている。その中で准将が2人に聞いてた。


「一度も言いませんでしたし、その素振りすら見せませんでしたよ」


「あの2人、特にケンは自分の仕事の領分をしっかりと理解し、それ以上の深入りをしてこない。普通なら好奇心に負けて言い出してもおかしくないが彼は最初から全く変わっていないな」


 そう言っているシュバイツ准将の表情は穏やかだ。


 全てはケン・ヤナギから始まっている。これはここにいる准将や大佐、そしてブランドン大統領もそう思っておられるのを准将は知っている。


 ケンがあの博士の秘密基地を見つけていなかったらシエラという星が成長する速度はもっと遅かっただろう。


 一時情報部で彼をがっちりと取り込んではという話が出た時にシュバイツ准将は彼は縛らない方が能力を発揮すると彼の好きにさせたが、それでよかったと思っている。


 逆にもし取り込んでいたら我々がケンに取り込まれていたかもしれないな。自分がそう思うくらいに彼は優秀な男だ。



 数か月に渡ったアイリス2のベースメテオへの輸送業務が終わった。



 新しくできあベースメテオのあるエリアは従来より侵入禁止地域になっていたが工事が始まってからは範囲を広げて辺り一帯を軍事演習空域とし、許可なく近づく船舶については警告無しで発砲するとシエラ政府より港湾局経由で来星する商船及び旅客船に警告が出されている。

 

 元々第1惑星はシエラ第3惑星に向かう船のルートではなかったので警告はそれ程話題にならなかった。そこの空域を飛ぶのは軍関係の船に限られることとなる。


 NWPのワープイン、アウトからも近いこのベースメテオは緊急NWPをする場合に第3惑星からワープポイントまでの移動時間が無くなるということでエターナルが母港をこのベースメテオに変更しいつでもNWPで移動できる様にした。

 

 常時空母2隻、駆逐艦7隻と輸送船エターナルが駐留するこの基地には艦隊乗組員も含めて2,000名近い兵士が常時駐留することになった。ケンとソフィアが最後に輸送を行ってから10日後、ベースメテオが本格的に動き出した。



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