ベース建設 その2
会議が終わり、大統領府会議室を出た情報部と軍司令部はそのまま司令部内の会議室へと場所を変えて政府がOKした後のスケジュールについて打ち合わせを行う。結論が出る前でもやるべきことをやる。これがシエラ軍司令部、情報部のスタンダードだ。
「博士の基地もせいぜい40名程しか入れない。基本は第3惑星と現地とのピストンになるな」
「今MIBの稼働状況はどうなっています?」
MIBとはMilitary Island Base 軍が海上の島全体を基地にしたそこの名称だ。軍艦の製造をメインに行っている。
「落ち着いてきたよ。全ての軍のエンジンはNWPに置き換わっているし、最近新しい空母の建造が終わったところだ。今MIBでは駆逐艦2隻を建造しているが稼働的には余裕が出てきている」
「であればパーツをMIBで製造し、エターナルでピストン輸送できますね」
「タウルスとリブラも使おう。彼らも輸送船だ」
製造の現場は問題なさそうだ。あとは外交部経由で太陽系連邦軍の協力を仰ぐだけだと情報部は判断する。
2回目の会議から1週間後、大統領の承認が取れたとの連絡を受けた参謀本部と外交部。外交部は早速駐シエラ地球大使館を訪問し、アーノルド大使と面談を設定した。外交部からはマッキンレー外交部長自らが太陽系連邦軍に対する支援を要請する。
「分かりました。すぐに地球に連絡しましょう。どこまでご協力できるか今の時点では確約はできませんが、最大限の協力を引き出しますよ」
シエラからの申し入れを快諾したアーノルド大使。シエラ外交部が帰るとすぐに太陽系外交部に緊急通信を送る。シエラよりの緊急通信を受け取った太陽系連邦政府外交部は軍司令部参謀本部と打ち合わせを行った。軍からは太陽系連邦軍LAベース最高指揮官であるブルー少将、太陽系連邦軍情報参謀本部長であるディーン准将も参加し、さらに太陽系連邦軍副総司令官の地位にいるケネディ大将がWEBにて打ち合わせに参加する。参加者の前で外交部がシエラからの要請の内容を説明した。
「シエラの希望は宇宙基地のハード部分だけなのか?」
説明が終わると参謀本部長のディーン准将が言った。
「その通りです。AI、レーダーに関しては自前でやるという事です。ハード及び人の運用面で助言をお願いしたいということです」
外交部の担当者、担当者と言っても部長クラスだが。彼は准将とモニターを見ながら答える。
「正直、AI、レーダーについてはあちらの方が上でしょう」
参謀本部の参加者の大佐が言った。
「それは間違いないな」
ディーン准将が即答する。
「ブルー少将としてはどういう対応を考えているんだ?」
ケネディ大将が聞いてきた。
「LAベースでは日々シエラと情報のやりとりがありますが正直我々の方が得ているものの方が多いと感じます。ブルックス星系という広い星系で長きに渡って他の星の干渉を跳ね返しつつ生き抜いてきたシエラには蓄積されたノウハウ。特に情報収集に関する優れたノウハウがありこれは現在我が軍も吸収し始めているところであります。受けた恩を返すには丁度よいかと」
少将の言葉を聞いた大将は准将にも聞いたが答えはブルー少将と同じだった。2人の幹部の言葉を聞いて大きく頷いてからケネディ大将がモニター越しに参加者全員を見ながら言った。
「今回エシクとの戦争が我が太陽系連邦の圧倒的勝利に終わった最大の理由がシエラ製のAIに有る事は皆もご存じの通りだ。そのシエラから我々に協力の要請が来た。応えない訳にはいかないだろう。そして応えるのであれば出し惜しみせずに開示してやろうではないか」
そう言ってから大将が付け加えた。
「地球連邦軍は水臭い奴等だと言われたくないからな」
そう言ってニヤッと笑う。彼の一言で結論が出た。
太陽系連邦軍がシエラの宇宙基地建設に全面的に協力するという回答は外交部経由、つまりシエラにある太陽系大使館からシエラ外交部経由で参謀本部に伝えられた。
外交辞令としてブラントン大統領がマッケイン地球連邦政府大統領に謝意のメッセージを送り地球より返事が来たところでプロジェクトがスタートする。
直ちに地球から専門家を乗せた太陽系で製造された宇宙船がNWPでシエラにやってきた。総勢50名にもなるミッションだ。太陽系内で実際に宇宙基地を設計、製造してきた連邦軍施設部、設計部、そして駐留する人を管理するために労務管理部の担当者も送り込んできた。彼らの本気度を見たシエラの軍参謀本部および大統領府は感激すると同時に気合を入れる。
シエラはMIBを製造ベースとしてここにスタッフを集めて連日会議をしながらシエラ初となる宇宙基地のデザインを詰めていく。打ち合わせをしている中で同じ作るのならある程度の規模があった方が良いと、2,000名の人員が働く大きさの宇宙基地を作ることになった。2,000人と言えばかなり大掛かりな基地になるが太陽系連邦軍によるとこれくらいないと基地としての体をなさないと言う。
「基地を大きくすれば大型のレーダー、そして大型のAIを搭載することができます。それが安全につながるのです。ケチケチしては結局中途半端なものになってしまいますよ」
お互いに胸襟を開いた関係ができているので常に議論は白熱するがどちらも向かっているベクトルは同じだったのでトラブルは起きなかった。
設計図が決まるといよいよ製造を開始する。
基本はMIBにてパーツを製造し、それを宇宙空間に持ち込んでロボットに作業させることになるがこのロボットに指示をするAIについては太陽系連邦軍のAIよりもシエラの方が数段上のレベルであった。
「ここまで瞬間的に判断して指示を出してくれるのなら工期はかなり短縮できますよ」
「このロボットに指示を出すAIの基本プログラムを地球連邦軍に提供しましょう」
そんなやり取りをしながらシエラ第一惑星の外側にある小惑星群、そのさらに外側の勢力圏ギリギリのところで工事が始まった。
幸いにして太陽系連邦軍が送り込んできた人員が多かった為、アンヘル博士の秘密基地を使用せずにすんでいる。シエラの輸送船3隻と地球の輸送船1隻をフル回転させてシエラ第3惑星と現場を往復することで現場から不満が出なかった。




