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エシクVS太陽系 その2


『エシク艦隊、ワープアウトまで60秒』


 AIのジャンヌの声が流れてきた。ポイント2にて待機している地球連邦軍艦隊はすでに全砲塔をワープアウトポイントに向けている。ポイント2にいる駆逐艦”デンバー”に乗っているシエラのヨーク大尉は指令室に用意された椅子に座って連邦軍の兵士の動きを見ていた。


 全員がキビキビとした動きをしている。男性も女性も無駄口を叩かずに自分の仕事を全うしている様に見えた。普段からかなり鍛えられているのだろうと想像できる。


「1船たりともエシクに返すな。全て叩き落とせ」


 ベースフォーから准将の声が飛んできた。


「聞いたな。遠慮はいらないぞ」


 デンバーの艦長が言った。指令室には砲塔の発射を担当する兵士達がモニターの前で待機している。


『重力波感知!ターゲット指示します』


 ワープアウトしてくるエシクの艦隊を発見するや否やベースフォーにいるAIのジャンヌがすぐに艦隊のターゲットを指示しそれに合わせて各艦のAIが砲塔をターゲットに向けた。レーザー砲が重ならない様に瞬時に全てのエシクの艦隊に砲塔を振り分けた。


 発射担当兵士のモニターに自分のターゲットが映りそれが緑のサークルで囲まれると発射ボタンを押す、ポイント2で待ち構えていた地球連邦軍の艦隊の砲塔がほとんど同時に火を吹いてレーザー砲がワープアウト地点に現れたエシク艦隊に向かっていった。


 レーザー砲の射程距離の差でこちらからの攻撃は届くが彼らからの攻撃は届かない。その地の利を利用した第一撃が全て命中しエシク艦隊の空母や旗艦、巡洋艦などが火を吹く。AIは1発打ったあとにすぐに次の指示を出してくる。再びモニターに映るターゲット。それがグリーンライトになると発射ボタンを押す兵士。


 2発目、3発目と全てエシクの艦隊に命中していく。2隻の空母は特に集中的に攻撃を浴びてすぐに爆破され続いて戦艦2隻、駆逐艦5隻も破壊された。最後に中破している巡洋艦2隻が引きかえそうとしたところに集中的にレーザー砲を浴びて爆破する。


 結局彼らは自分たちの小型戦闘機を飛ばすこともできずに全て爆破され、ただの一人、一隻も戻ることができなかった。戦闘はわずか10分程で終わった。ワープアウトの宇宙空間には爆破されたエシクの艦船の残骸が浮遊している。


「こうして目の当たりにすると地球連邦軍のレーザー砲が桁違いに強力だと言うのがよくわかります」


 思わず声にだしたヨーク大尉。


「いや、AIがここまで処理能力が高いとは聞いていたものの、こうやって戦闘をするとよくわかります。瞬時に最適なターゲットを指示してくる。各船とベースフォーのAIとの連携も見事だ。全く無駄のない攻撃ができたのはシエラが提供したこのAI技術ですよ」



 ポイント2における戦闘はAIがリアルタイムで映像としてベースフォーに送っており、AIのジャンヌがそれをベースアステロイドや地球にNWP通信で再送していた。戦闘はわずか10分程で連邦軍の完全勝利で終わる。結局ポイント2にいた地球連邦軍は一隻も被弾することがなかった。


「見事ですな」


 ディーン准将が感心した声を出した。ここまでAIの処理能力が高ければ戦争のやり方が変わると感じる。多くの情報を瞬時に処理し、リンクしているAIにこれまた瞬時に指示を飛ばすAI。今回兵士はボタンを押すだけだった。それでこの完全勝利。もしシエラのAI技術が導入されていなかったとしたらどうなっていたか。


 まずエシクのいるロデス星系に偵察衛星を送れない。NWPがなければデータの送信にかなりの時間がかかり意味がなくなる。ただNWPがあればほぼリアルタイムで情報の入手が可能だ。これで事前に準備して待ち受けることができる。そして戦闘だ。従来の連邦軍のAIは処理能力が遅く他の艦隊とのリンクもそう簡単ではなかっただろう。その間にエシクが態勢を整えて攻撃してきたかもしれない。またこちらの攻撃も効果的に分散出来ずに同じ船に何発も打ち込み、無傷の敵艦がいた可能性もある。


 シエラと組んで良かった。准将は心底そう思っていた。


 一方でアンドリューは地球連邦軍のレーザー砲の威力を目の当たりにして驚愕していた。データー上では射程距離が4万Kmと通常のレーザー砲の2倍以上の距離があるが、それがここまで有利になるとは。しかも4万Km飛んでいくレーザー砲の威力が従来の1.5万Kmの射程距離のレーザー砲の威力よりもずっと大きい。砲身を太く、長くしてエネルギーの分散を防ぎ、続けて撃ってもびくともしない砲身を作り上げた地球連邦軍の実力を見直していた。


 これならどことやっても負けないだろう。




『エシク艦隊、ワープアウトポイント3まで120秒』


 AIのジャンヌの声が艦内に響いた。


「ポイント2では我が軍が完勝だった。こっちも同じ様に敵をぶちのめすぞ」


 シエラ参謀本部、プレストン大佐が乗っている旗艦”ワシントン”の艦長が言った。兵士はすでにいつでもレーザー砲を撃てる準備をしている。


『重力波感知!ターゲット指示します』


 ポイント2の時と同じく今回の作戦のAI側の司令官であるジャンヌがすぐに艦隊にターゲットの指示を出すと各艦隊のAIが自動で砲塔を指示されたターゲットに向けた。ターゲットをロックオンしてグリーンランプがつくと同時に発射ボタンを押す兵士。


 ポイント3のワープアウトで待機していた地球連邦軍の空母3、駆逐艦11隻の複数の砲台から一斉にレーザー砲が飛び出してロックオンしたエシク艦隊に向かっていった。初弾で全ての敵艦隊が中破。続けて撃たれた2発目で駆逐艦、巡洋艦が爆破。残った戦艦、空母に連合軍の全てのレーザー砲が集中してあっという間に空母と戦艦が爆破された。


 こちらも戦闘時間は10分以下だった。

 地球連邦軍とエシクとの戦争はほぼ一方的な形でしかも短時間で終結した。



「AIが優秀だとここまで差がでるものなのか」


 ポイント2、ポイント3での戦闘を一部始終見ていたディーン准将が呟く様に言った。連邦軍の大勝利で沸いているベースフォーの司令室。准将も喜びを爆発させたがすぐに冷静になって今の戦闘を振り返ってみる。


 戦闘にならない程一方的な蹂躙だった。AIが瞬時にターゲットを決めそれを各艦隊のAIに伝達。全てがリアルタイムで行われしかもエラーがない。無駄弾を一切撃つことなく最も効率的な砲撃で敵を全て撃破した。シエラがパートナーで良かったと思う准将。


 一方アンドリュー中佐は太陽系連邦軍のレーザー砲の威力にびっくりしていた。こちらはワシントンに乗り込んでいたシエラ参謀本部のプレストン大佐と全く同じ印象を持っていた。


 連邦軍の攻撃力とシエラのAIがあればファジャルに勝てる。

 今回の戦闘を見ていたアンドリュー中佐はそう確信する。



 太陽系連邦軍とエシクと戦闘がありエシクの空母5、戦艦6、巡洋艦7、駆逐艦11を全て爆破、一方で地球連邦軍の損害はゼロであったと発表すると太陽系全体が歓喜に包まれ、お祭り騒ぎになった。


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