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妙手が浮かばない


「ケンのレポートを見てすぐにバードビル周辺にデブリに仕立てた監視衛星を配置した」


 シエラ第3惑星に戻ったアイリス2。ケンとソフィアが情報部に顔を出すとスコット大佐が開口一番に言った。


「ケンはファジャルの船がやって来ると見てるんだな?」


 そう聞いてきたシュバイツ准将。


「そうです。そしてもしそうなら海賊船とファジャルは一心同体であると確認できます」


「その通りだ。海賊にとって美味しい場所の1つと言われているバードビル周辺。普通ならそこに空きができればすぐに埋まるところが埋まらない。誰かがあそこには行くなと他の海賊に指示していると考えられる」


 准将が頷きながら言った。以前からそうだったかは分からないが少なくとも最近の海賊は全てファジャルの息がかかっていると証明できる。


 それでそうなった場合どうするのか? ケンの目を見て言いたい事がわかったのだろう。シュバイツ准将が言った。


「仮に海賊イコールファジャルとなったところでシエラとしては公式には何もしない」


「でしょうね」


 何もしないと言っているが実際には何も出来ないと言った方が良いだろう。シエラとしてはファジャルを刺激して得られるメリットは何もない。


「ただ噂にならない程度でこれからも海賊は間引きするつもりだ」


 船主が集まる溜まり場でバードビルの海賊を蹴散らしたのはどこかの軍の船だということになっていてシエラがやったとは知られていないという報告をあげていたケン。シエラとしてはさりげなく海賊を間引きしていきながらドレーマ星の動きを見ていくのだろうと推測する。


「ファジャルだって馬鹿じゃない。海賊がやられ続けるとなるとその原因を探るだろう。海賊を間引くとは言ってもそのあたりの見極めというかタイミングが大事になるだろうな」


 海賊船を排除することが回り回ってシエラの安定に繋がるという基本的な考え方で動こうとしているが派手にやりすぎるとシエラというのがバレる。難しい舵取りが求められるミッションだ。


「ドレーマ星の造船所については何かアイデアはあるのですか?」


「海賊船よりむしろそっちの方が問題だと認識してるよ」


 そう言った准将と隣に座っている大佐の表情が曇る。


 今まではドレーマ星向けは支払いのリスクが高いということで敬遠されてきたがファジャルがバックについて表面的にドレレーマの金払いが良くなると知れれば運送屋の中には積極的に荷物を運ぼうとする者もでるだろう。その結果造船所の建設は順調に進み、いずれドレーマ星を基地とする攻撃用艦船が出てくる可能性が高くなる。


 造船所はドレーマ星の中にありそれを破壊するとなると当然その攻撃が大勢の目に晒される。シエラとしては海賊船の様に密かに処理するということが難しい。


「確認はしていないとは言えドレーマの新しい造船所がファジャールの息がかかっているのは間違いないだろう」


 情報部としてはその新しい造船所で作られるのが海賊船にしても軍艦にしてもいずれにしても戦闘能力を保有する船を造るのだろうという認識をしている。問題はそれをこのブルックス星系で活動させるのかそれとも他の星系を考えているのかだが。ドレーマという星を選択している時点で新しい船はブルックス星系内での活動を主にしているのだろうと推測しているがその活動の仕方が不透明だ。


「普通に考えればドレーマからファジャルのあの特徴のある色をした軍艦が出ていけばいくら何でも目立ちます。外観はファジャルと分からない様な塗装をし隠れる様に出航していくのでしょうね。ドレーマは辺鄙な場所にある、秘密裏に出入りするには便利な星ですから」


「いずれにしても造船所、そして軍艦を作ると慣ればバイーア惑星群からの輸送が多くなるだろう。そのあたりはケンが紹介した怪しげなサイトをいくつかチェックしておくとある程度は見えると考えている」


 スコット大佐が言ったその言葉に頷くケン。大規模な施設や大型の船を作る際にはバイーア惑星群との取引は必須だ。幸いシエラは太陽系連邦軍の技術を導入し、レアアースも同様に仕入れることができるのでバイーアとの接点は少ないがこれは異例であり普通ならバイーアに頼らざるを得ない。


 ケンのレポートですぐに手を打ってきたシエラ。相変わらずフットワークが良い。


「それはケンの報告が常にTOP PRIORITYがあるからよ。今までの貴方からの報告がどれだけシエラの役に立ったか。情報部はそれを分かってるからこそすぐに動いたのだと思うわ」


 シエラ第3惑星の首都にある自宅のマンションに戻ってきた2人は今はリビングで話をしている。2人は情報部を出た後そのまま外食をして家に戻ってきていた。ドレーマ星で建設される新しい造船所についてケンが言った。


「造船所をどうするかだよな。これは難しいな」


「流石のケンでも妙案が浮かばない?」


「力技ができないからね」


 真正面からぶつかる気が無い以上裏工作でどこまでやれるかだ。ドレーマ、ファジャルだって馬鹿じゃない。新しい造船所は当然屋根か岩山の中に作って宇宙から監視できない様にするだろう。


 新しく作った船の出航についても周りにバレずに星から飛び出していく方法はいくらでもある。そんな中でどんな一撃がもっとも効果的になるのか。ケンは考えているが今のところいいアイデアが浮かばない。大前提としてシエラがやっているとは絶対に悟られてはいけない。そしてその条件の下でドレーマ、ファジャルの意図を完膚なきまでに叩き潰すという虫の良い話だ。すぐに良案が浮かばないのは当然といえば当然の話だ。


「俺たち運送屋が悩んでも仕方がないか。プロに任せた方が妙案が浮かびそうだ」


 しばらく考えていたケンはそう言うとソファに座ったままその場で大きく伸びをした。


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