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臨戦体制


 地球にいるアンドリュー中佐から会議の内容を聞いたシエラ情報部および参謀本部はすぐに駐シエラ太陽系大使であるアーノルド大使を訪ね、今回の連邦軍の手配に対して謝意を示す。会談は先方がアーノルド大使と太陽系連邦軍参謀本部出身のアダム大佐。シエラからはシュバイツ准将および参謀本部の大佐、そして情報部のスコット大佐の3名が列席した。


「地球から来ている報告ではここシエラの技術が優れているので助かっている様です」


「お役に立てそうでなによりです。今回の戦闘のデータもAI間で転送して共有していただけるとのことで何から何までお世話になりっぱなしですね」


 シュバイツ准将が代表してお礼を言う。

 

「ベースアステロイドに設置しているAIのイヴによるとエシクとの戦闘での敵の破損率は99%、一方こちらの被害予想は3%以下ということです。それも最大で中破との予測です」


「ワープアウトして体制を整えようとしているところを遠距離から一網打尽にする作戦ならそういう結果になるでしょう。地球連邦軍のレーザー砲の射程距離を凌ぐ距離を持っているレーザー砲はおそらく存在しないでしょうからね」


 太陽系連邦軍のレーザー砲の射程距離に関しては間違いのない事実だ。太陽系と同盟を結んだ後で彼らが開示してきた船の設計やレーザー砲の図面を見たシエラの軍関係者は皆驚いた。船を作る際のコンセプトからしてここブルック星系のそれとは全く違っていた。


 機動性を重視しつつ遠距離砲を全ての艦艇に配置し相手のレーザー砲の射程距離以上に長い射程距離の有利性を活かすというコンセプトで艦船が作られている。したがってブルック星系で主流である大型の旗艦はおらずその役割を空母が担っており、巡洋艦よりはやや小ぶりながらスピードや機動性に優れた駆逐艦を多数製造するという発想はシエラにとっては驚きであると同時に理にかなったものであると認めざるを得なかった。実際シエラの軍もすでにある大型の旗艦戦はそのままだが新造については空母と駆逐艦という2種類に絞って製造をしている。種類を絞ることによって造船所での生産効率があがり以前よりも短期間で艦船を作り上げることができる様になっていた。もちろんそれらは地球から輸入したレアアースを使い船体自体も従来よりもずっと頑丈になっている。


 通常の大型の旗艦のレーザー砲の射程距離は1.5万Km、巡洋艦、駆逐艦クラスでは1万Km。それに対して地球連邦軍が搭載しているレーザー砲の射程距離は船種に限らず4万Kmだ。この差は実戦では大きなアドバンテージになる。今までの銀河の常識を覆す射程距離を地球連邦軍は開発、装備している。


 太陽系内にふんだんにあるレア・アースを使って耐熱性を上げた砲身は従来よりも長く、大きくなっておりその結果高熱のレーザーを大出力で放出しても何ら問題がない。シエラにとっては今回の太陽系連邦とエシクとの戦争のデーターを入手して解析することによって今後の自分たちの攻撃の方法が変わるかもしれないと感じていた。大艦船よりも機動力を駆使しする。敵の射程距離よりも長い遠距離から威力のある攻撃をする。今まではバイーア惑星に頼っていたためにどこの星の艦船もほぼ同じ仕様であったがそれが今後は変わるだろう。少なくともシエラにとってはこの変化はウエルカムであると同時に新しい戦法をしっかりと自分たちのものにする必要がある。他星より先んじることが自分たちが生き残る道の1つであると彼らは理解していた。


「ファジャルは最近どうですか?」


 エシクとの話がひと段落したタイミングでアーノルド大使が話かけてきた。これにはシュバイツ情報部准将が答える。


 海賊船がここブルックス星系ではなくファジャルの艦船と極めて似通った作りをしていること、海賊船の乗組員もファジャルの兵士である可能性があることなどを話した後で、


「海賊船なら撃破されても文句は言えません。ということで我々は完全武装の輸送船を製造しそれで海賊退治をしています。地球から導入した遠距離砲の威力が凄くてこちらは無傷で海賊船を沈めている。以前の我々なら難しかったミッションの難易度が下がっていますね」


 地球側を持ち上げた発言は相手にも好感を与えた様だ。それはよかったと大使が言った後でアダム大佐が准将を見て言った。


「それにしても海賊船になりすましているのですか。あの手この手でやってきますね」


「このブルック星系の治安悪化を狙っているのでしょう。まともな攻撃ではなくて絡めてで来ている様です。幸いにしてシエラはこの動きを事前に察知することができた。今のところはシエラの輸送船とはばれずにファジャル製の海賊船を沈めています。これが続くとまた手を変えてくるかもしれませんね」


 シュバイツ准将の話を聞いていたアーノルド大使とアダム大佐が頷いた。


「お互いになかなか気が休まりませんな」


「全くその通りです」



 地球ではAIが予想した最短の戦闘開始日の10日前、LAベースから2隻の輸送船が宇宙に向かって飛び出していった。その中の1隻はベースアステロイドに接岸し、もう1隻はベースフォーに接岸する。


 シエラ人のAI技師であるアランとボイドはそれぞれのベースに設置されているAIのチェックをしチップを交換して処理能力を上げた。これにより両ベースのAIは従来よりも5%処理能力が高くなる。ちなみにLAベースのAIもシエラの技師のサポートによりアップデートされている。


 プレストン大佐、ヨーク大尉、そしてアンドリュー中佐もそれぞれ”ワシントン”、”デンバー”、ベースフォーに移動して配置につく。


 AIのチェックとアップデートが終わり地球連邦軍はまるで仕掛けた罠に入ってくる獲物を待つ様にその目をロデス星系に向け臨戦体制に入った。



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