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まず逃げる。そこが始まり


「少なくともブルック星系内のどこかで作られた海賊船のレーダーの探知範囲は500万Km四方であり、おそらくこれはここシエラの技術で作られたレーダーを使用していると思います」


 レーダーといえばシエラ。そう言われる程シエラ製のレーダーは優秀でありブルック星系においてその使用率はほぼ100%だ。


「私とソフィアが乗っているアイリス2が遭遇した海賊船の1隻はファジャル製である可能性が高いと聞いていますがそれでもレーダーの関知範囲は700万Km以下だと思われます。これはアイリス2が700万Kmまで近づいても相手に気づかれなかったからです。実際の感知範囲はわかりません。500万Kmかもしれないしもう少し広いのかもしれないしそれよりも狭いのかもしれない」


 100%確実な情報はないがそれでも手に持っている情報をしっかりと提供しながらプレゼンをしているケンを見ていたスコット大佐はやっぱりこいつは大したものだとプレゼンを聞きながら感心していた。


 できるだけ客観的に見て話しをしているし自分の予想を話す際にもその根拠をしっかりと説明している。


「ケン」


 彼のプレゼンが中断した時にスコット大佐が声をかけた。その場にいる全員が大佐に注目する。


「ケンがタウルスの船長だとしてだ、もし海賊船、400メートル級、800メートル級の2隻同時に遭遇したらどうする?」


 その質問を聞いた全員が今度はケンに顔を向けた。


「前提条件として海賊船を見つけた場合には退治する。これでいいですか?」


「構わない。捕まえることは考えなくても良い」


 大佐の回答に分りましたと答えるとテーブルの上にあるジュースを一口飲んでからその場にいる全員を見る。


「相手に自分の船の能力を悟られない事。これが大前提になるでしょう。突出した性能や能力を見せればいずれその船の持ち主がどこであるのかバレる。そう思った方が良いでしょう。海賊船は2隻、3隻と固まって活動していますがひょっとしたらその上に大元がいるかもしれない。通信や映像を送っているかもしれない。その前提で動くべきです」


 参加者は物も言わずにじっとケンの話を聞いている。運送会社として様々な経験をし、同業者や港湾局などから得ている情報は軍や情報部では簡単に入手できないものだ。ケンは一呼吸おいてから話を続ける。


「まずは逃げます。これが一番大事です。逃げると追いかけてくる。ここからスタートです。輸送船が最初から、自分から攻撃することはありませんから。追いかけてきたら逃げながら小型宇宙船は片っ端から倒します。これは普通に輸送船が搭載しているレーザー砲でも落とせますから。そして大型の船についてですが海賊の砲台の射程距離は一般的な軍の射程距離よりも短いと言われています。従って軍の射程距離まで近づけさせてから一気に撃ちとるのがいいでしょう。あるいは何発か撃ってダメージを与えてから全力で逃げる。新しい攻撃型輸送船は海賊船の主砲を1、2発喰らった程度では問題ないと聞いていますから最初から遠距離ではなく敵のフィールドというか敵の距離に近づいてから始末すればそれほど怪しまれないと思いますよ」


 軍の戦い方とは違うということをしっかりと説明するケン。海賊船を沈めたは良いが自分たちの事が公になると別の問題が発生する。それをさせないためにはあくまで輸送船としてギリギリまで動くのが良いというのがケンの考えだ。


「なるほど。軍とは違う。難しいオペレーションになるな」


 グレンが言った。隣でセシルもそうねとつぶやいている。


「難しいのなら1隻が囮になりもう1隻で沈めるのもありですよ」


 ケンが言うとそれもありだなと2人の船長が言った。今までのケンの説明と今の一言で全てを理解するあたりは流石に優秀な軍人だ。


「どちらかが範囲外にいてそちらに逃げる。追いかけてくる海賊船の横や上や下から現れて一発打ち込んでしまえばよいか」


「そちらの方が軍人としては楽そうね」


 船長2人で話をしながら詳細を詰めていく。そうなるとケンの仕事は終わりだ。輸送船としての前提条件は話をした。彼らのことだその基本線を守りつつ自分たちのやりやすいやり方を探していくだろう。それでいい。宇宙を飛ぶことについて正解が1つであることはない。ケンはそう思っている。


「ケンの話は非常に参考になった。我々も派手にやるつもりはない。無いが最低限脅威は取り除かなければならない。攻撃型輸送船がシエラのものと疑いを持たれない期間が長ければ長いほどいいからな」


 スコット大佐の言葉にその通りだと頷く。


「アイリス2もかなり性能が上がっていますが我々は基本海賊船との接触は避ける方向で動きます。もちろん見つけた時にはすぐに連絡を入れますので」


「頼む」




「今日のケンの説明を聞いていたけどあの発想は軍には出来なかったわよ」


 自宅に戻ってソフィアが作った夕食を食べながらの話だ。


「軍というか艦艇はその能力を誇示するのよ。あの船がきたらやばいとかね。そう思わせるために遠距離から撃てるのなら先に撃つ。そういう思想が徹底しているの」


「そりゃそうだろう。戦争で敵に先手を譲るなんて考えないからな」


 その通りとソフィア。彼女に言わせるとケンが話をするまでは2人の船長のみならず軍の人たちも先手必勝という前提で海賊船にあたろうとしていたと言う。


「でもケンがそれをしたらシエラの船だってバレるのが早くなるって言ったでしょ?あれで彼らの考え方が変わったのよ」


「戦争だと最初からこっちがシエラ軍だって分かっているからな。身元を隠すなんて発想はないんだろうなとは思ったよ。だからこっちも最初は逃げるフリをしろと言ったんだ。あの輸送船を軍艦と同じ動かし方をしたら一発でバレるからね」


 海賊船退治は戦闘行為と同じだがこちらの身元を明かさないという条件での戦闘になるとかなり難易度が高くなる。しかも最初は逃げるというところからのスタートだ。ただソフィアによるとあの2人の船長はあの年齢であの役職にいるということは相当優秀だという。


「彼らなら難しい任務でも上手くやってくれると思うわ」


 自分たちの軍の地位がフェアな評価の下に決められていてそこには私情が全く入っていないので地位相応の実力があるのだという話を聞いていたケンはこのシエラの星民の質の高さに改めて驚いていた。



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