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シエラ産の荷物


 ベースケプラが稼働を始めたタイミングでシエラは太陽系連邦軍と合同演習をすることになった。場所はシエラ第一惑星、ベースケプラの先にある宇宙空間だ。トレオン星系と隣接しているとはいえその間には広大な漆黒の宇宙空間が広がっている。商業用の船の航路でもなく言わばブルックス星系の外れにあたる場所だ。


 太陽系連邦軍よりは 太陽系連邦軍LAベース最高指揮官であるブルー少将とトップとして、2個師団という大掛かりな軍をNWPで送り込んできた。それと同時に外交部のミッションも同じタイミングで地球からシエラ第3惑星にやってきた。今まではシエラが地球に出向いていたが初めて正式に地球側を招待したことになる。もちろん非公式で非公開だ。


「NWPを利用すれば1時間程で同盟星に来ることができるとは。分かっていても実際に体験すると驚きしかありませんよ」


 シエラ第3惑星のMIBに着陸した太陽系連邦軍。出迎えたスタークビル大将を前にしてブルー少将が挨拶をした後で言った。


「我が星の科学者のアンヘル博士が開発したNWPシステム。それを地球人のケンが持ち込んだ時点で地球とシエラは見えない糸で繋がっていたのかもしれませんね」


 スタークビル大将の言葉を聞いていた地球連邦軍の幹部連中は今の彼の言葉でシエラ軍のトップもケン・ヤナギを高く評価しているのだと理解する。当時に一介の運送業者の彼がここまでシエラの内部に食い込んでいる理由がわかった。経緯は分からないが、ケン・ヤナギが博士の発明を手に入れてここに持ち込んだのだ。


 ヤニス外務大臣をトップとする外交部の船はMIBではなくシエラの首都ポートに着陸し、そのまま市内にある外交部のオフィスに出向いた。そこではマッキンレー外交部長が彼らを出迎える。シエラにある地球大使館に勤務しているアーノルド大使と一緒にエアカーから降りてきたヤニス外務大臣。出迎えたマッキンレー外交部長と握手をしてオフィスの中に向かいながら言った。


「三連星というのは太陽系ではありません。初めて見て感動しましたよ」


「それはよかったです。第一惑星は資源惑星、第二惑星は農業惑星、そしてここ第三惑星がシエラの中心惑星となっており、星民のほとんどがここに住んでいるんですよ」


 地球連邦軍はその活動のほとんどが太陽系内だ。星系外にでることが先ずない。もちろんさまざまなデータや画像から他星系の様子は知っているがこうして直接目にするのは初めてだった。今回は移動もNWPを使っているのでブルックス星系内に点在している星々を見ることもなかった。


 準備もあるので演習は3日後から行うことになった。演習のためにベースメテオ、ベースケプラがその前線基地となり、シエラ軍、および太陽系連邦軍は翌日に宇宙空間のベースに向かって飛び出して行った。



 ケンとソフィアはようやく次の仕事を見つけてシエラ第3惑星を飛び出したところだった。


依頼主 : マレム精密機器

商品 : 精密機械

サイズ: 10m3 (コンテナ小型x1基)

引き取り地 : ブルックス系 シエラ星

目的地 : ブルックス系 コスラエ星

期間: 50日以内

報酬 : 300万ユニオンクレジット(UC)



 そう、荷物の引き取り地がここシエラ第3惑星だったのだ。ここからコスラエに運ぶ品物は精密機械となっているがおそらくレーダーだろう。


 通常シエラ発の荷物についてはシエラ星籍の船が起用されることが多いがたまたまケンがサイトにアップされたのを見つけて輸送のオーダーを取った。もちろんシエラ星以外の船が輸送を担当しても何も問題がない。ただシエラに引き取りに来た船や乗組員には当事者の知らないところで厳しい調査と監視が入っているだけだ。


 今回の輸送の情報は当然ながらシエラ情報部も掴んでおり、ケンとソフィアが情報部に顔を出した際にこちらから言う前に向こうからこの話題が出た。


「コスラエにシエラのレーダーを運ぶ仕事を取ったみたいだな」


 スコット大佐の言葉にそうなんですよと言ってから、


「所属している輸送組合のサイトを見ていた時にアップされたんでね。思わずクリックしましたよ」


「アイリス2なら何も問題はないな。もっと言うと届け先のコスラエについても問題はない。あの客はうちのレーダーを定期的に購入してくれている言わばお得意様なんだよ」


 大佐によるとコスラエはブルックス星系に多くある星国家の中では比較的シエラとは良好な関係にあるという。レーダーやメンテ部品の購入で定期的に注文が入るのはもちろんだが両星間には旅客航路が敷かれていて観光客やビジネス関係者の往来があるのだという。ただケンはこのコスラエ星には一度も行ったことがない。


 シエラはブルックス星系に属しているが過去から星域内にある他惑星とは付かず離れずという関係を外交の基本方針としてきた経緯がある。そのため他星に大使館は設置できないが、逆にシエラにも設置させないで済んできていた。


 そのシエラはブルックス星系ではなく、隣の太陽系連邦政府と初の同盟を結んで相互に大使館を設置しているが太陽系以外の政府とは依然として大使館を設置しあう、つまり同盟を結ぶ関係になっていない。


 ただそんな中でもコスラエ星はシエラの技術を正当に評価して積極的に先進技術を導入してきた過去がありレーダー以外の精密機器についても多くをシエラから購入しているらしい。


「星と星との付き合いは政府や情報部、外交部の仕事だ。アイリス2は通常運送業務としてあの星に荷物を運んで貰って構わない」


「アイリス2はリンツ星所属でもありますしね。特に問題はないでしょう」


 そうだなと言ってからスコット大佐が真面目な表情になった。


「情報部からの依頼になるが、デリバリーが終わったらドレーマの周囲にデブリを放ってくれるか」


 コスラエ星とドレーマ星はそう遠くない。ワープをすれば1日かからないくらいだろう。ケンは今の大佐の一言で全てを理解する。


「分かりました。周辺を探ってきましょう」


「頼む」



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