おかず商人【1000文字未満】
「いらっしゃい……」
誰かが汚したくて汚したような路地裏。その一角の、不潔ではないが猥褻な店。フードで顔を隠した女が、来客の男を見る。
男は尾行を警戒し、何度も背後を見る。フードの女はクツクツと愉快そうに喉を鳴らした。
「いつもの、かい?」
「あ、あぁ」男の顔は赤い。「いや、ちょっと今日は趣向を変えたい」
「あぁいいねぇ。たまには別のものを試すのもいい」
「何か、オススメは?」
棚から何かを取り出す。薄い本だった。厚さは1センチを超える程度。表紙を隠す紙をどかし、男の性欲を沸き立たせるイラストが現れた。
「こういうのが好きなんだろう。巨乳であればどんな男も食いつく」
「……いや」
男のオトコが反応しているがこれは嫌らしい。女はとっておきを出すことにした。棚から出すは、美少年と美少年のまぐわいを描いた漫画だった。
顔をしかめられた。だがページを開いてやると、男の喉に生唾が通る。
「ククク……美少年同士が小さなもので互いを光らせるものは、とても素晴らしいぞ?」
息が荒い。女も荒い。
「いくらだ」
「このぐらいだ」
紙切れに書かれた価格は破格であった。欲のまま購入し、ページをパラパラめくる。閉じて、頭を下げて店を出て行った。
エッチな本が禁止されてから、世の性欲を満たすおかずは非合法に取引されていた。女はおかず商人であり、今も政府に狙われている。
だが、最近来た女刑事はTLもので買収した。ゴリラのような男もふた×男で買収。禁止されれば溜まるのだ。当たり前のことである。