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エッセイ

〈幸福〉や〈成功〉という価値観を捨ててみたらどうなったか、という話。

作者: 徒花ミノリ

 みなさんは幸福になりたいでしょうか?

 あるいは、成功したいでしょうか?

 

 〈幸福〉とか〈成功〉という言葉には魅力的で甘美な響きがあります。

 本屋に行くと、『幸福論』とか『成功の法則』みたいなタイトルの本がたくさん売られてますよね。

 世の多くの人が、〈幸福〉や〈成功〉を追い求めて日々生きているように思います。


 わたしも以前はそうでした。

 「幸福になりたい」「成功したい」と思って、わりかしガツガツと頑張って生きてきました。

 しかし、結局、幸福にもなれず、成功する気配もなく、そういう生き方にすっかり疲れてしまいました。

 〈幸福〉や〈成功〉をゲットするための努力は一応してきたつもりでした。ですが、世の中の競争相手たちも同じように、あるいはわたし以上に努力していたわけです。だから、競争相手に抜きん出るためには、もっともっと血が(にじ)み血を吐くような努力する必要があったわけですが、残念ながらわたしにはそのための体力も気力も備わっていませんでした。

 それに、努力だけではどうにもならないこともいっぱいあります。才能や運です。生まれた家庭や、育った環境もおおいに競争の結果を左右するでしょう。

 また、努力できるのも才能だ、なんて言われたりしますが、その通りだと思いますよ。すべての人が等しく同じように努力できるわけではありません。


 わたしは社会のなかで競争に負けたという、はっきりとした自覚があります。

 はっきりとそう自覚したのが数年前です。

 わたしは落ち込みました。かなりゲンナリしました。生きていく気力がほぼほぼ無くなりました。

 かといって、死んでやる!という強い意志も湧いてきませんでした。

 ただただ、無気力になったのです。

 道ばたに何の特徴もない石とか落ちてるじゃないですか。その石になったような感覚です。

 何をやっても面白くない。毎日が楽しくない。というかそもそも何かをしたいという意欲が湧いてこない。何に対してもモチベーションがゼロ。

 砂を噛むような日々でした。


 無気力な日々のなかで、わたしはふと思いました。

 もしかすると、〈幸福〉とか〈成功〉とか、そういう()()にがんじがらめにされていたから生きるのが苦しかったし、消耗してしまっていたのではないか?

 〈幸福〉とか〈成功〉という価値観を、いっそ捨ててしまえばどうだろうか?

 

 〈幸福〉という観念を捨ててしまえば、その反対の〈不幸〉という観念も生まれてこない。

 〈成功〉という観念を捨ててしまえば、その反対の〈失敗〉という観念も生まれてこない。

 

 〈幸福〉も〈成功〉もただの言葉(ワード)に過ぎません。

 人間が社会的な営みで生みだしてきた、道具としての言葉に過ぎません。

 この世界に、はじめっから存在した絶対的な価値観などではないし、未来永劫にわたって不変不壊のものなどでもないのです。


 動物はたぶん〈幸福〉とか〈成功〉という観念を持っていません。

 人間に近い霊長類の一部には、もしかするとそういう観念が薄っすらあるかもしれませんが、文字を持たない彼ら彼女らは、おそらくはわたしたち人間よりは観念的な生き物ではないでしょう。


 そんな動物たちは、人間にくらべれば知恵や知識という面ではいくらか劣っているのかもしれませんが、それでも何故(なぜ)か〈満ち足りている〉ように見えます。

 もちろん、飢えや苦痛や恐怖といったものから解放されているわけではないでしょう。動物たちは動物たちなりに、人間には知ることができない必死さで日々をサバイバルしているんだと思います。

 しかしなんでしょうね、動物たちの〈死に(ざま)〉というのは、人間にくらべてずいぶん潔い感じがします。一生懸命生きて、死ぬときにはすべてを諦めて自分の全存在を自然に投げだす。人間の死に際のような見苦しさがありません。

 たいへんに潔く、清々(すがすが)しい生き方/死に方のように思えます。

 

 人間=ホモ・サピエンスという種族は、へんに頭でっかちに進化してしまったために、余計な苦しみを抱え込んでしまったように思えてなりません。

 もっと〈頭悪い感じ〉に生きたほうが、潔く、清々しく、生きられるのかもしれないですよね。


 わたし自身は、いざ思い切って〈幸福〉や〈成功〉という観念を頭から追い出してみたら、けっこう〈頭悪い感じ〉になって、ある意味で生きるのが楽になりました。

 両肩に乗っていた重い荷物が無くなって、身軽になった感じというんでしょうか。

 あるいは両手にぶら下げていた重い荷物が無くなり、両手が自由に使えるようになった、という感じでしょうかね。

 人生のなかで叶えるべき夢も、目標も、理想も、もはやな~んにも無くなってしまったので、とっても楽です。

 野良猫のように、自由気ままです。

 子供にも似ているかもしれないですね。


 人はなぜ苦悩するんでしょうね?

 自分の頭の中にある、理想のイメージと現実が食い違っているからじゃないですかね?

 自分が創り出したイメージによって自分自身が苦しめられてしまっているわけですよ。

 だから、苦悩の根源となるイメージを創るという悪癖をやめればいい。

 やめれば苦悩は生まれてこなくなります。

 あとに残るのは現実の自分自身だけ、です。

 その現実の自分と仲良くしさえすればいいんです。

 

 さて、このお話は、あくまでもわたし個人の場合(ケース)です。

 なので、これをみなさんにオススメするつもりは、全然ありません。

 まあ、もしみなさんがこの文章をお読みになって万一ご興味が出てきたのなら、軽~い気持ちでちょっぴり真似してみてもいいですよ。というぐらいの気持ちで、この文章を書いてみました。


 では、おやすみなさい。 

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