乙女のような僕と
いきなり、デートになっちゃいました。
映画に行くことになりました。
映画のチケットは、薫ちゃんが知り合いから貰ったそうです。
制服じゃまずいので私服に、俺は大した格好はしてませんがトレーナーにジーンズと彼女は白地にピンク色の水玉模様のワンピースでコンタクトをつけているそうです。髪の毛を結ばないでストレートにしても可愛いのが余計に可愛く見えます。
映画の席に着くと。
僕は乙女のように震えてました。
なんか、映画が眩しく感じる。
たとえ、ホラーであっても。
黒魔術少女 ユダ
タイトルからしてヤバい話だ。
エコ エコ〜となんか、、どっかで聞いたことある響きだなぁ。
暗黒王子と対決する少女ユダ。
黒魔術を駆使して学校の平和を守るため戦うのである。
主演のユダ役はうねうねとした肩までの髪で黒い瞳の美しい黒のセーラー服の似合う女の子だった。それよりも暗黒王子と言っても中年のおじさんで、銀色の衣装に紫の薔薇を持っていて、演技が上手くなければ駄作になりかねない。
ただ、この王子、声がすごく綺麗だ。
それに身動きが優雅だ。顔はそこそこだが、アップになると眼が吸い込まれる感覚になる。
おや、ワイヤーアクションなんか使ってないように見える。
映画は、残酷なシーンが満載で、血がドバーッと出るたびに薫ちゃんにしがみついた。
薫ちゃんは、なんか俺の王子さま。
ポワンとしていた。
凛々しく感じる。
王子さま〜じゃね〜よなぁ。
男の俺がなんで乙女チックなんだよー。
映画が終わった。
薫ちゃんは、すぐさま。にっこりと。
「トイレ行ってきてよ」
「うん」なんか、またもやトイレだ。
トイレに行くと、なんか、嫌な予感がした。
奥側のトイレだ。
トイレの室内は周りは真っ黒に焦げていて便器だけ白く輝いていた。
チリン?と何かが音がした。
足元を見ると鈴があった。
鈴は、キーホルダーの飾りのように見えた。
思わず拾いあげた。
また、変な光景が見える。
コレは。
トイレから出ると薫ちゃんがいかにも知りたい顔をしていた。
「トイレどうだった?」
「周りが炭だらけで便器が白かったよ」と応えた。
「この後、ゆっくりお話しない」
と、連れてこられたのは、ゲイバーだった。
この店のママとは仲良しらしい。
店に入るとママらしき人は、急に苦笑いをしていた。やはりいくらなんでもお客さんじゃないのに迷惑だよなぁと思った。
ママは、薫ちゃんとコソコソ話し始めた。
「アレって、アレなの?」
俺はアレなのか??
「酷いわね。アレなんて。私の大事なお友達なんだから」と。
奥の控え用の部屋を使わせてもらうことになった。
簡単な応接セットがそこにはあった。
パイプ椅子に腰掛けた。
茶色いテーブルに2つグラスにレモンの炭酸ジュースが置かれていた。
「なんか?見えた?」
と覗き込むように見る。
「あの〜、コレ」
おもむろに鈴をを置いた。
「フーン、で見えたよねー」
とじーっと見つめる。
見つめられるとドキドキした。
「うん。映画の暗黒王子が。でも、映画みたから。そんな感じがしただけ」
彼女は、突然、俺の手を握りしめた。
僕の手を取る王子さま?
えっ。ドキドキする。
「ありがとう」というと部屋を飛び出して行ってしまった。
本当に不思議な女の子だ。