レッドサークル
黒い衣装に身を包んだ謎の人物は、小さな少女の目の前でほくそ笑んだ。
さて、やっとだ。あの呪われた島から脱出してようやく国に帰れる。
早く国に帰りたい。
そのためには、この厄介なバリアを解くコードが、必要だ。
コード。
コードのために用意した生け贄がいる。
可哀想だが命までは取らない。
新鮮な血が必要だ。それも一滴でいい。
それにしても。
忌まわしい、こんな低級な文明では、移動用のマシンは作れないから。
救助信号を出して迎えに来てもらう事にした。
男なのか女なのかよく分からないその人物は、この世のものではなかった。
それが少女を怯えさせた。
どうなるんだろう。手足が引きちぎれるのか?
怖いと少女は、思っていた。
それに、よく分からない赤い輪の中に引き摺り込まれて、余計に怯えていたのだ。
変な踊りも踊っている。
誘拐の犯人は、ノリノリのエキサイティング!
エコ エコ〜 アザ◯クゥ〜
エコ エコ〜 ザメ◯ク〜
変な踊りも絶好調だ。
通信パスワードがエコ エコ〜アザ◯ク エコエコーザメ◯クってこれを100回繰り返すんだっけ。たまたま。この世界の文明で見つけた漫画なるものにハマって。つい、パスワードをそれにしてしまった。
赤い魔法陣は、単なる飾りだ。
夕方から陽も沈んでもないのに不自然だろうよ。
変なところは常識人であった。
通信装置は5センチのキューブなるものだった。
魔法陣の中心に装置を置いた。
別段、特殊な魔法は出ない。
マゼラン星雲の彼方の惑星。
我が国へ。
いざ、行かん!
もはや、地球上の生物ですらなかった。
そこへ、来たのが変な化け物と、地球人の小さな男の子だ。
化け物には見覚えのある。
黄金の姿。テラ人種の天空人、地底人、海底人のミックスめ。
「キリンめ。キリンめ。まだ、邪魔をするつもりか?」
だが、相手は途端にキョロキョロと辺りを見回した。誘拐した女の子までキョロキョロしている。
ところがだ。
あの忌まわしい化け物が攻撃してきたのだ。
人間兵器として作られたヒューマノイドめ。
「止めろ。女の子を返せ」
そう化け物はいうと
通信装置を踏みつけてめちゃくちゃにして。
変な丸いビームで攻撃してくる。
お陰で国へは当分帰れなくなった。
「覚えてろよ。麒麟」
そういうと、怪しい男は、どこかに消えてしまった。
真田彰人は、思った。
あの人、やはりなんかの薬やってたのかなぁ。
俺を見るなり「キリン」だなんて。
あの衣装からしてヤバいよなぁ。
魔界に使える手下Aに完全になり切って変な踊りも踊っていたからなぁ。
それにしても、この俺を首の長い、あの優しい動物を自分と間違えるなんて。
逃げていって良かったよ。