彼女が水着にきがえたら
幸市の温泉プールの名称は、サイワイ温泉プールだった。
天井が開閉できるので、晴れている日はオープンになっていた。
室内は広くて、プールは三つで大きなウォータースライダーが二つ。
楕円形の流れるプールと小さい子供が入れる丸いプールと普通の長方形のプールに別れていた。かなり豪華だ。
浮き輪も無料で貸してもらえるので、持ってこなくとも良いのもあって、大きなクジラやカメ、イルカなどなど。色とりどり。
チケットがあるので、一応、映画のお礼に誘ってみたら喜んでくれた。
周りの男子には、「お前なんかドラゴンに食われろ」「宇宙人に拐われろ」とか散々な言われようだったが、もう、男子の友達は諦めたから。何言われてもいいや。
女子たちは、なんだか、急にヒソヒソし始めてるし、とにかく、諦めました。
俺は、まぁ、普通に無難に太ももまで隠れるタイプで黒地にサイドに青いラインの入ったデザインです。
薫ちゃんといえば、可愛い、この上もなく。
オレンジの髪留めで髪の毛をポニーテールにしていた。
眼鏡を黄色いサングラスに変えていた。
白地にオレンジの花柄のワンピースの水着。
ところが、周りには、可愛い女の子たちが溢れていた。
それも、みんな見覚えのある女の子たちだ。
クラスメイトだ。
「偶然だわ。真田くんも、このプールに遊びに来たの?」
と、リーダー格の女の子のピンクの水着の鈴木レイコだった。白々しい嘘だ。
しかし、青嵐高校の女の子たちは、芸能人レベルの可愛い女の子ばかりだ。
なんで?なんで?とか思うのだが、あんまり深くは考えないことにした。
目のやり場がない女子に囲まれていた。
だけど、薫ちゃんは、颯爽として俺の手を掴むとスタスタと、段々と早足でその場から連れ出して行ってくれた。
やはり、この女の子は、「運命の王子さま」なんて思いつつ。
着いた場所は、男子トイレの前だった。
「早く入ってぇ〜」と薫ちゃんに促されてつい、なんで。
男子トイレ?
中に入ると、別段、怪しくない。
新しくできたばっかりで綺麗だった。
「何もないよ」と薫ちゃんに伝えた。
「なるほど。では、あっちで休憩しない」
とまたもや俺の手を握ってスタスタと歩き出した。休憩スペースには、防水加工の白いテーブル付きの青いベンチがいくつか置かれていた。
そこへ腰掛けると、飲み物でも買ってこようと思ったら薫ちゃんが飲み物を用意していたのでそれを飲むことにした。
瓶のコーラーだった。
薫ちゃんは瓶の蓋を器用に手で開けた。
「はい、どうぞ」
と差し出してくれた。