第四話 決意
光が真上から注ぐ頃、俺たちは旅立とうとしていた。まぁ旅と言ってもせいぜい30分くらい馬を走らせるだけだが。
「スカイ、準備できたか?」
「はい!大丈夫です」
スカイが俺の後ろに乗る。
「捕まっているんだぞ」
その一言を発して出発する。風が真正面に吹いてくる。聖都までの道のりは険しくはない。ただ横目に野原を見ながら平坦な道のりを走るだけだ。しかしここに来て間もないスカイはそれさえも新しく感じた。
「広い…ですね」
「ああ。そしてそろそろ見えてくるのがこの国の中では一番発展してる街、聖都だ」
城壁がだんだんと見えてくる。その真ん中には宮殿があり、遠くから見ても一際目立っている。
「あそこが目的地だからな」
「はい!」
・・・・・・・・
聖都の目の前まで来た。先日が戴冠式だったのもありいつもより賑わっている。馬は管理してくれる場所に置いていき、宮殿の方へ向かっていく。
「あの宮殿に行くんですか?」
スカイが問う。
「少し違う。宮殿のすぐ隣に騎士団本部があるんだ。そこに行くよ」
そう。俺の目的は騎士団本部だ。そこにはおそらく兄が居るだろう。城壁を通り、馬を降りる。そして馬を指定の場所に預ける。
「ここからは徒歩だから離れないように」
「はい」
聖都はかなり賑わっている。外から見てだいたい分かっていたことではあるがやはり驚くほどだ。スカイにとってはこの世界で初めての街だ。少し不安はあったが無事目的地までつくことができた。
「この建物が騎士団本部だ。俺も入ったのは数回しかないけど…」
青を主に使っているこの建物は聖都の中でもかなりでかい建物になっている。スカイと共に中に入り、受付をする。
「すいません、あに…騎士団総帥とお話がしたいのですが」
「わかりました。少々お待ち下さい」
黒髪の受付嬢が淡々と連絡を取る。どうやら兄貴はここにいるらしい。普通俺のような下っ端が話せる相手ではないが兄弟関係であるためなんとかなる。
「総帥と連絡が取れました。今は仕事も休憩だから指令部屋へと来い…だそうです」
「分かりました。ありがとうございます」
スカイを連れて階段を上っていく。指令部屋は兄貴の仕事部屋であり、最新鋭の設備が置いてある。
「指令部屋は何階なんですか?」
「そうだね、最上階だから六階かな」
本部は階段もしっかりいる。一つ一つ丁寧に色がついており、壁にも装飾があるため飽きないようになっている。
「さて…ここが指令部屋だ」
ノックをし、返事を待つ。
「いいぞ」
威厳のある声が響く。本当に兄弟なのか疑いたくなるほどだ。そして扉を開ける。すると椅子に座り軍服を来た漆黒の髪を持つものがいる。
「久しぶりだな。兄貴」
「あぁ。そうだな。ところで…その赤髪の少女は誰だ?」
「それが今日の本題の一つだ」
俺がスカイに目をやり自己紹介を促す。
「スカイです…よろしくおねがいします」
「うん、いい子だ。ところでその本題は?」
俺が今わかっているスカイの情報をすべて話す。
「なるほど…それでスカイくんを戸籍登録してほしいと…」
「あぁ。この世界で戸籍無しで生きていく位だったら作ったほうがいいだろうと思ってな」
「それは賢明だろう。そのことについては私が後で裏から話を通しておこう。ちなみにだがその後はどうする?」
「それは…」
俺が話そうと思ったときにスカイが話を切る。
「私は…スフィアさんと一緒にいたいです!」
一瞬指令部屋に空白が訪れ、その後また話が始まる。俺としては意外であったが同時に嬉しくもあった。
「いいだろう。私はそれを認めよう。そして…」
「このことを一つ目といったからには二つ目もあるんだろう?」
やはり見抜かれていたが、話すことが減ったと思えばいい。
「そうだ。俺は今日を持って騎士団を辞める」
兄貴の目が一段と鋭くなる。だが俺も怯むだけではない。このとき、指令部屋には空白と決意があった。
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