第三話 一歩目
太陽が地平線から出てきて夜明けを告げる。山の麓にある家もその光を受け取っていた。
「スカイ、朝食ができたぞ」
「ありがとうございます」
まだ目が覚めたばかりのスカイは声がぼやけているが、スフィアの声はもうしっかりと出ている。
「それでこれからのことなんだが…スカイの体調が整ったら、まず騎士団本部に行く予定だ」
「なるほど…分かりました」
スカイが出した朝食を食べていく。俺も朝食を食べた。スカイの顔色も初めて出会ったときよりずっと良くなっている。
「スカイ、朝食が食べ終わったら見せたいものがある」
スカイが俺の声にうなずく。
その後スカイは少々残しながらも出された朝食を食べ終えた。
「スフィアさん!見せたいものとは何でしょうか?」
スカイもすっかり目が覚めたようだ。俺はスカイについてくるように手で合図を出す。
「スカイ、この世界で強くなるには武器を決め、それにあったスキルを覚えなければいけない」
「だからまず、この中から気に入った武器を選んでくれ」
俺が廊下の奥の物置の明かりをつける。ここにはほとんどの種類の基本武器がある。
「親から騎士学校に入る前色々と武器をもらってな…まぁこの杖しか合わなかったんだけど」
スカイが多種多様な武器に驚きながらも、少し時間が経つと気に入った武器が見つかったようだ。
「スカイ、それにするか?」
「はい」
スカイが取ったのはニ刀の短剣だ。右手側のほうが少し長く、左手側は少し短い。
「よし、じゃあ外にて出てみるか」
二人で廊下を歩く。そして扉を開けると光が差し込んでくる。
「最初は何も考えなくていい。俺がスカイの通るべき道を脳内に送るからそのとおり動いて。目標は少し背の高い木だ」
「はい!」
スカイは何とも言えない高揚感に包まれた。それはスキルを放とうとしている俺にも伝わってきた。そんな中俺は体の中の魔力を杖の中心に集め、スカイに放つ。俺の羽織っているコートが揺れながらスカイへバフを放つ。だが…
(何だ?スカイの魔力が異常に多い…)
そう。スカイの魔力が異常に多すぎたのだ。まるで体全体が魔力だけで出来てるようだった。その影響で俺が魔力を使ってスカイにバフを放っても効果が出にくい。
(なら…スカイの魔力を剣に移動させればいい!)
スカイの体に負荷がかからない程度の魔力を剣に流し込み、スキルを放つ。俺の放ったスキルは〈皇帝道〉。〈テンペスト〉の奴らにはバカにされたバフである。
「なるほど…これを通ればいいんですね?」
「そうだ、そのとおりに動いて」
スカイの目には景色以外にも道が見えている。そしてその通りスカイが動く。スカイの持つ短剣に魔力がたまり光を放つ。
「いまだ!剣を振って!」
スカイの短剣の魔力が一気に放出される。その瞬間、力の弱いであろうスカイが目の前の木を一刀両断した。
「これがスキルですか?」
「あぁ。そうだ。感覚さえつかめば自分一人で出すことができるようになると思う」
「分かりました!」
スカイは一回ではあるがスキルを放てた。それで今日の成果は十分だろう。
「そうだな、スカイの調子もいいし午後から聖都に行こう。少しやりたいことがあるから」
「その前にもう一回スキルをやっていいですか?」
「ああいいぞ。俺の魔力がなくならない限りは何回でも」
スフィアが思ったよりスカイはやる気のようだ。そして、これが彼らの第一歩となる。
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