第一話 追放
王都の鐘が鳴る。時間帯は日が沈む頃、宮殿では新国王の戴冠式が行われていた。俺、シルヴィア・スフィアはその式には参列していない。いや、参列できない。
兄のシルヴィア・アルヴィンはその式で聖騎士団の中では最も王に近い位置で参列している。同時期に騎士学校を卒業した奴らも参列している。俺はなぜ並べないのだろうか?どこで間違えたのだろうか?そんな思いを抱きながら王都のはずれの酒場に入る。そこにはいつものギルドメンバーがいた。
「スフィア、来たか」
声をかけたのはこのギルドのギルドマスター、バース・ヒューズであった。俺よりは15は下だろうという見た目を持つ、高身長の将来有望な冒険家だ。この世界では基本、冒険家より聖騎士の方が立場が上になるが、1ギルドマスターのバースと俺を比べたら当然バースの方が上だ。
「それで…話はなんですか?」
「あぁ。突然ではあるが、我々〈ブラック・ホライズン〉は〈テンペスト〉と協力関係を結ぶことになった。」
ギルド〈テンペスト〉。最近現れたギルドでありながら現在俺たちと同じSランクギルドに位置する。その理由は…
「〈テンペスト〉ということは100年に一度の勇者がいるという…」
「そうだ。〈テンペスト〉は彼も含め若者が中心になっているギルド。我々もだ。両方それで結果も残せている」
一瞬、バースの鋭い目が俺に突き刺さった。いつもは頼りのあるその目が、今日だけは敵対していた。
「スフィア。君は明日から来なくていい。もう君をアルヴィンの弟というだけで置いておくのはもう無理だ」
一瞬戸惑ったが、徐々に納得していった。確かに、このギルドの中では一人年齢は飛び抜けていた。それを覆す努力と才能が足りなかったのだろう。いつものことである。
「はい。わかりました」
「そうそう!とっとと出ていってよね!」
バースとの会話に割り込み、便乗してきたのはサブギルドマスターのコール・ブレード。このまま外に出たら何も起きないことはないほど際どい衣装を着ており、その姿に慣れていないものは一度は釘付けになるほどである。金髪を揺らしながら俺に話しかけてくる。
「あんたみたいなやつがギルドにいても迷惑だし!戦闘でも後ろからチョビチョビっとバフ送るだけじゃない!そんなの前線の私でもできるわ!」
聖騎士とはいえ全員が全員騎士かといえばそんなことはない。俺のようにバフを送るやつもいれば、龍に乗って上から攻撃するやつもいる。聖騎士とは国を守る者の総称だ、別に間違ったことでもない。
「まあそういうことだ。脱退申請はもう出してあるから後は自由にしろ」
バースからそう言われ、スフィアは酒場をあとにする。その後、〈テンペスト〉がこの判断を後悔することになるとはまだ誰も知らなかった…
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