表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/18

7#作り笑い。

日が落ちる前に小屋に戻って来た。



小屋に入る前に、テイトはもう暫くこの村に滞在して始祖の手掛かりを探したいとナルに話す。


手持ちの金子も僅かなテイトは、野宿をしながらと考えていたが、ナルはこのまま小屋に居てくれて良いと言う。


「お気持ちは嬉しいのですが…ナルさんのような一人暮らしの女性が、余所者の男を自宅に招き入れているというのは…本当は良い事では無いのですよ?」


幼い少女ゆえに、世間知らずなのかも知れない。


しかし、誰かが教えなければ、いつか悲惨な事態が起こりかねない。


村に住む住人たちは、ナルのその身に起こり得る危険な可能性についてナルに教えたりしないのだろうか?


「私は………テイトさんが思っているような…」


「思っているような…?」


ナルは黙りこくってしまった。

少し俯き、小さな赤い唇を少し噛んでいる。



「なっちゃん、ちょっと」


小屋の前でナルと話していると、ほっかむりの女、ラナが現れた。


「ごめんなさい、テイトさん…」


ナルは頭を下げると、ラナと二人でテイトから距離を取る。

余所者には聞かせたくない話しなのかも知れない。


だが、僅かな物音や気配を探る訓練を受けてきたテイトには、二人の会話が部分的に耳に届いてしまった。



「……ジェフが見たと……間違い無く……今夜ではないかと……」


「…そう……だったらテイトさん……村から出せないわ…」


「ジェンはもう若くないから……………殺しますよ…」



途切れ途切れに聞こえた会話に、戦慄が走る。


何の会話だ?俺を村から出せない?

ジェン、あの年配の男性…ラナは、自分の夫を殺すつもりなのか?

そこにナルが、どう関わっている?



ラナと会話を済ませたナルは、テイトのもとに戻って来た。


「とにかく、今日はもう暗くなるので…泊まって下さい…。」


ナルはテイトと目を合わせようとしない。

古城に行くまでは楽しそうにしていた、笑顔の可愛いナルは居なかった。


何かを思い詰めたような、悲しげな表情をしている。


「……では、御言葉に甘えて……」


テイトは作り笑いを浮かべる。


ナルとラナの、先ほどの会話の真意を確かめる必要がある。

テイトはクルースニク。バンパイアハンターだが、それ以前に一人の戦士でもある。


自分に害を及ぼす可能性のある物は、バンパイアで無くとも排除する。


この、不自然な村の、不自然な住人たち。


吸血鬼の始祖が関わっていようが、いまいが、この村の真実とやらを確かめる必要がある。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ