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10/18

10#貫くレイピア。

ナルを抱いたラナ達が村に入る。


村に着いたテイトは物陰に身を潜めながらラナ達の様子を窺う。


村の入り口には、村の住人らしき男達が武器を手にして立っていた。


足下に数人倒れているようだ。ラナは慌てたようにジェンに駆け寄る。


「ジェン!無事なの?…やはり、クドゥー・ラクの…」


「ああ、別部隊だな。村の子供たちを人質にでもするつもりだったんだろう……わしは優しくないからな、死んで貰ったよ」


血の滴る剣を背に隠すようにして、ジェンはラナの腕にいるナルに頭を下げる。


「なっちゃんには、すまんが…これは、人としての事だからな、目をつむってくれ。」


ナルはラナの腕の中で俯いた。

そして、ラナの腕から降りて自らの脚で立つ。


そして、隠れていたテイトの方を見る。



テイトは白いロングコート姿に、レイピアを手にして皆の前に現れた。


「テイトさん……」


驚きもしない、ナルの瞳が物語る。


最初から、テイトに全て見られていた事も、全て聞かれていた事も知っていたのだと。



「ナル、お前の前での俺は、さぞ滑稽で無様だったのだろうな。笑えたか?」


ナルは目を逸らさない。

だが、辛そうに赤い瞳を潤ませ、唇を噛み締めている。

言い訳も弁明もしない。


ただ、テイトに言われるがままに、その言葉を逃げずに受け止める。


「目の前に、標的がいるのにも気付かずに、のんきに飯を食って寝て笑って!さぞ、間抜けなヤツだと思っただろうよ!」


「お前っ…!ふざけるな…!ナル様はお前を…!」


声をあげたのはラナだった、ナルは手の平をラナに向け、その声を制止する。


テイトは手にしたレイピアを構える。


「なあ、何とか言ったらどうなんだ?もう、俺と口をきくのも馬鹿馬鹿しいのか?ナル。」


ナルは何も言わない。涙ぐみながら、それでもテイトから目を逸らさない。


「ナーーール!!!!!」


吠えるように、ナルの名を呼ぶ。

レイピアを構えたまま、ナルに向かい走る。


プツ…


テイトのレイピアの先が、ナルの心臓に届く。

テイトは、力を緩めなかった。

レイピアはナルの心臓に抵抗無く深く刺さり、彼女の薄い胸部を突き進み、最後に背中から剣先が出る際にだけ、僅かな抵抗に速度が落ち、その後はナルの背に長い剣の先が一気に生える。


レイピアは完全にナルの胸部を刺し貫いた。


「ナル様ぁあ!!」


半狂乱になったラナの声がこだまする。

ナルは立ったまま動かない。


「ご…めんなさい…」


胸をレイピアに貫かせたまま、ナルが呟いた。






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