REALSide9「情報を整理しよう」
そろそろ情報が複雑になってきたから、一回情報を整理していこうと思う。正直、ここ数日で事態が動きすぎてて、自分でもよくわかんなくなってきているから……。
まず、亮太と一緒にやっていたゲーム。「サムライ武士道オンライン」が、いわゆる「デスゲーム」になった。
私は、偶然「ログアウト不可」になる前にゲームから「ログアウト」をすることが出来た。だけど、亮太は間に合わなかったからゲームの中に囚われている。
そのゲームは過激派組織である「明日の輝き」っていう団体が、普通のRPGゲームである「帝都騒乱」っていうゲームを参考――買ってきてプレイしてみたけど、丸パクリ――にしてVRMMO化しただけだけのゲーム。
だから、「侍」や「武士道」って言っているのに、敵が「子爵」や「男爵」と言った爵位を持っているみたいだ。要するに、ストーリーと設定は完全に「帝都騒乱」のままで、自分たちに都合の良いように適当に名前を変えただけ。ってことになるみたい。
そして、ゲームに囚われている人間の体は、1日だけ設けられた「移動日」を使って「電脳世界解離型精神障害科」という、専門家の有る病院に入院している。
その専門科が出来るきっかけになった「電脳世界解離型精神障害」というものを、マスコミにリークして大事にして国を動かさせるきっかけを作ったのが、出川さん。
出川さんはもともと新聞社の人間だったけど、自分の主張が会社勤めだと生かせないから会社を辞めた。そして、フリージャーナリストとして活動をしていた。だけど、私が亮太のことを相談しに行った日に、私を守るために「強請り」に行くという形で「明日の輝き」に捕まった。そして、出川さんの情報を信じるのであれば死んだと思う……。
その出川さんから頼れと言われたのが、ラブホテルを経営している加藤さんっていう人。
電脳世界解離型精神障害になったことにより、「映像内の様子をつくりものとしてしか認識できない」という後遺症を負っている。
出川さんから託された動画に、サブリミナル技術を用いて「明日の輝き」が「かつてアジトにしていた場所」に「明日の輝きのスパイ」が隠した情報が隠されている。そして、その情報から「サムライ武士道オンライン」が「帝都騒乱」をもとにしてつくられた「殺人ゲーム」であることが分かった。
奴ら「明日の輝き」は人を殺すことを、「浄化活動」と呼んでいるらしい。出川さんの残した映像だと「人が硫酸で焼かれる」というものが残されていた。思い出しただけでも、吐きそう。
奴らの言う「浄化活動」というのは殺人。その対象になるのは奴ら基準で「汚れている人間」とされた人々。その基準は普通の人間にとってはよくわからない。
一応、スパイの人が残したデータには「エーヴェ様の判断による」と書かれていた。要するに、たった一人の。それも、何の権力もないただのおばさん一人の判断によって決められるっていう。かなり「偏った」判断基準になっているといえる。
そして奴らの言うところの「浄化活動」は、基本的に自分たちに対して「不利益」になる人間たちを拉致してきて殺している。その方法だと1~2人。どんなに良くても10人前後くらいまでしか殺せない。だから、より「効率的に浄化行動をする」ためにVRMMOゲームを用いるという手段を取った。
奴ら基準で「ゲームをやっている人間は精神が汚れている」っていう判断をしているらしい。そのためβテストと称して全国から集める。そして、一定期間経過後にゲームからログアウトを不可にする。それによって数百人規模で「浄化活動」を行うっていう計画をした。
……そして、実行した。実行しやがった。
私の目的をはっきりとしよう。
まず、当然のようにやらなくてはならないことは「亮太をゲームから取り戻す」こと。
極論を言うと、ほかの人が死のうが生きようが関係ない。亮太さえ助けることが出来れば、あとは正直どうでもいい。
亮太は私にとって一番大切な人。両親が電脳世界解離型精神障害による後遺症で自殺した後で、私を支えてくれた人。もともとはただの友人だったけど、いつの間にか心の中で一番大切な人になっていた。
……そんな亮太を奪った奴ら。奴らは許せない。許せないから潰す。滅ぼす。ぶっ壊す。それが次の目的。スパイの人が残してくれていたUSBメモリーに偽装されたPCを破壊するための装置。亮太をゲームからログアウトさせた後でゲームを動かしているサーバー機を破壊する。
目的が決まったので、あとは手段を考えなければなんだけど……。
一番簡単なのは、警察に行くこと。でも、「明日の輝き」による「テロ」と言ってもいい今回の事件で、多分警察は当てにならないと思う。あくまでも今の私の手札は「こういうことをやっていた」という「過去の情報」に過ぎないから……。
だから、「これからこういうことをする」という情報を入手し、警察が動かざるを得ない状況をつくること。
行動目標がざっくりだけど決まったので、いったん休むことにする。
さすがに、ここ数日で事態が動きすぎていて疲れた。
部屋の電気を消して、ベッドにもぐりこむ。
……このベット、寝心地いいな。